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チーム天狼院

ひとりぼっちのインド旅


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:土居りさ子(チーム天狼院)
 
「私には、友だちがいません。」
 
今年の夏休みに一人でインドへ行ったときのことである。
真夜中の空港で、気がつくと私は切ない一言を言い放っていた。
 
「なぜ一人でインドへ来たのか。」
インドの入国審査で引っかかった私は、かれこれ10回くらいこの質問をされている。
 
そもそも私がインドへ行った目的は、かつてマザーテレサがいた修道院でボランティアに参加するためだった。昨年、このボランティアに参加した人から話を聞く機会があり、自分も参加してみたいと思ったのだ。
 
日本で「マザーテレサ・ボランティア」のプログラムに申し込み、現地でのホームステイや日本語が話せるコーディネーターさんを手配してもらっていた。
入国審査では、ホストファミリーやコーディネーターさんの滞在先や連絡先を伝えるように、と言われていた。もちろんその通りにした。さらに日本の学生証も見せ、「怪しいものではありません」とアピールしまくった。
 
それでもなかなか入国させてもらえない。
30分近くやりとりした後、職員のおじさんが突然黙り込んだ。
 
よし、そろそろ入れてもらえるか……! そう思ったが、
「はぁ(ため息)……。もう一回聞くけど、どうして一人で来たの?」
 
コントのようにずっこけそうになる。またその質問か! 
結局その理由を言わないと入れてもらえないのだ。
目的と言うより、なぜ一人で来たのかということがおじさん的にはずっと引っかかっているらしい。
 
なんでって言われたって……日本語でも思いつかない。
ボランティアがしたくて来た、ただそれだけなのに。
そんな状況で絞り出した言い訳(?)が
「インドまで一緒に来てくれる友だちがいなかった」である。
 
それは嘘ではなかった。
もちろんインドへ一人で行くことに対して不安はあった。しかし「友だちを誘う」という考えは自分の中にはなかったのだ。
さすがに誰も来てくれないだろうな、と最初から無意識的にあきらめていたのだと思う。
 
私をよっぽど可哀想な子だと思ったのか、その発言の後、おじさんはようやくゲートを通してくれた。
「気をつけて」か「楽しんで」と声をかけられた気がするがあまり覚えていない。
 
空港を出ると、コーディネーターさんが車で迎えに来てくれていて、とてもほっとしたことは覚えている。その後、無事にホームステイ先まで送ってもらえた。
 
翌々日から、ボランティアが始まった。
修道院では、朝6時から朝食の時間がある。ボランティアに参加する人々は、その時間から集まって、朝食をとりながら他の参加者と話をしたり、シスターから話を聞いたりする。
 
私も一人で参加してみた。最初は一人でちょこんと椅子に座ってもくもくとパンを食べ、チャイを飲んでいた。英語が苦手なので自分から話しかけにいく勇気がなかなか出ない。
せめて挨拶だけでもと思い、世界中から集まったボランティアの人たちに「ハロー」と声をかけてみる。すると予想以上にフレンドリーに、笑顔で「ハロー」と返してくれて、とても嬉しくなった。しかし会話は続かず、居心地の悪い思いをしていたときだった。
 
日本人らしき人が部屋に入ってきた!
目が合って会釈し、おそるおそる「おはようございます」と声をかけてみると、「おはようございます」と返してくれた。
「日本人だ……!」と叫びたいくらいテンションが上がり、そして安心した。
すると「あ、おはようございます」と一人の女性がまた入ってきた。
その後も何人かの日本人が立て続けに部屋に入ってくる。
 
おもしろいのは、他の国の人々は複数人で来ているのに、日本人は全員一人で来ていたことだ。
 
一人者同士だからか、どの人とも会話が弾んだ。
「どうしてインドに来たのか。」まずはその質問から始まった。
 
話を聞いていると、一人だということに、皆とくに理由はないらしい。
 
このボランティアに参加するためにインドへきた人、世界一周の途中で立ち寄った人、家が教会で勉強するためにきた人、仕事の休みが取れて急遽遊びに来た人など、いろいろな人がいろいろな目的を持ってインドへ来ていた。
 
すべての人に共通していたのは、「現地での出会い」をとても楽しんでいるところである。「一人ってちょっとさみしいときあるよね」と言いながらも、「こんな面白い人がいて……」「こんな人にすごいお世話になって……」とインドで出会った人たちのことを皆嬉しそうに話していた。
 
私は、この日本人同士の出会いだって、本当に不思議なものだよなぁと思った。
インドに来なければ出会えなかった、おそらくこの先会うこともない人たちとの出会い。
そして自分が一人で来ていなければ、こんなにゆっくり他の誰かと話そうとも思わなかっただろう。
 
今、あの入国審査で「どうして一人で来たのか」と聞かれたときに戻ることができたら、
「インドでたくさん出会いがあると思ったので、友だちは連れてきませんでした。」
そう答えようと思う。
 
***

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