チーム天狼院

ネガティブの本気


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記事:鈴木萌里(チーム天狼院)
 
 
私、どうしようもないほどネガティブなんです。
 
初対面からちょっとだけ関係が進んで「もうそろそろ仲良くなったかな?」と思う人に対して、私はいつもこう言っていた。同級生とか先輩、後輩関係なく、少しだけ深い話をする間柄になったら絶対に言う。
「高校の時は先生たちから『泣き虫』だの『負のオーラ』だの散々言われてて」
これは本当に本当の話で、私のネガティブが遺憾なく発揮されていた高校時代、仲の良い先生たちからは「鈴木さんは自己評価が低すぎっ!」と何度注意されたことか。
 
「いや、だって……」
 
だってどんなに勉強しても、あの子には敵わない。
どんなに好きになったって振られちゃうし。
 
もともと自分に自信のない私がネガティブ思考に陥る原因なんて、そこら中に転がっていた。とりわけ多感な中高生時代は、失恋した、テストで失敗した、部活で顧問の先生に怒られた……と、それはもう些細なことで、へこむへこむ。
 
自分が生まれつき後ろ向きなのはとっくの昔に理解していたので、大体いつも、いろんなことに期待しないことにしていた。
例えば、これはよく聞く話かもしれないけれど、テストが終わってから返却されるまでの間、とてもともても緊張する。とくに手応えがなかったテストなんてなおさらで、出席番号順でテストが返却されてゆく中、私の心臓は爆発寸前の時限爆弾みたいに脈打っている。
 
だからそんな時は、「この間受けたテスト、70点くらいかな」と予想しておく。目標は90点以上という前提で、あえて目標よりも低く見積もっておく。
 
そうすると、いざ返却されて85点くらいだったとしても、ほっとすることができる。
目標には届かなかったけれど予想より点数が取れた! という安心。
期待しなければ傷つかないなんていうけれど、まさに物心ついた時から自分のネガティブを知っていた私は、「何事も期待しない作戦」で、できるだけ傷つかないようにと、なんとか乗り切っていたのだ。
 
 
けれど大人になるにつれ、心が傷ついたりへこんだりする要因は、もっともっと多くなった。
失恋はさることながら、就職活動で失敗したり、自分が得意だと思っていた分野で他の誰かに実力が及ばなかったり。
その度にやっぱりへこんでしまう。
どんなに期待しないと思っていても、「期待したい、期待してみたい」というちょっとの好奇心が、後に傷つく原因になってしまう。
 
「これじゃダメだ」
 
きっかけは大学二年生で経験した失恋だっただろうか。
その恋が他の恋よりもとりわけ重要だったとか思い入れが深かったとか、そんなんじゃない。普通に恋をして普通に交際して普通に失恋しただけの話。
でも、そんなことで長い間いちいちへこんでしまう自分が情けなくてカッコ悪いと思ったのだ。
 
私は、どうしたら立ち直れるだろうかと考えた。
 
できれば他人に頼ったり依存したりすることなく、一人でさっと立ち直りたい。
そう考えた私は、思いつく限りの方法を紙に書き出して実行することにした。
 
 
まず、一人で映画を見に行った。今まではなんとなく恥ずかしくてできなかったことだ。映画は小説以上に、その美しい映像と音楽をもって私の心を感動させてくれた。見終わったあと、なんだやるじゃん私、できるじゃんとガッツポーズ。
 
一人ヨーロッパ旅行にも行った。なんとそれが私の初海外旅行だった。せっかく海外旅行い行くのだから、と新しいカメラも買って。ちなみに英語は全く喋れない。でもなんとか10日間いろんな場所へ行って写真を撮り、日本に帰ってきた。
 
それから、こんなこともした。
いっそのこと、ショックだった出来事について、とことん考えてみるという方法だ。
なんでショックだったのか、どうしたら次はうまくいくのかを必死に考えた。ぐるぐる、ぐるぐる、感情と理性が代わりばんこで姿を現して。
次はもっと上手くこなして、びっくりさせてやろう! と逆にやる気を奮起させたところで、いつのまにかぐちゃぐちゃだった負の感情が、次回の挑戦への糧になっている。
 
こんなふうに、なんとかして“落ち込み期間”を乗り切ろうと試行錯誤しているうちに、やがてその瞬間はやって来る。
 
そういえば、最近なんだかすっきりしている。
一人でいても寂しくなくなった。
むしろ一人でできる楽しみが増えた。
 
なーんだ。もう私、「落ち込んで」なんかいない。
それどころか、辛い気持ちを味わった分、なんでもない新しい毎日を楽しんですらいる。
 
性格が根っからネガティブな分、地の底から這い上がる方法を私は見つけたのだ。
ネガティブな自分が些細なことでへこんでいる期間。その期間はとても大切だった。
 
なんだか、跳び箱みたいだと思った。
「もっと高く飛びたい」と思って遠くから助走し、ジャンプ台に思いっきり踏み込めば、どんなに高い跳び箱だっていずれは飛ぶことができるようになる。もちろん練習は必要だ。練習だけじゃなくて、思う存分助走をつけること、踏み込むこと。
私が普段から落ち込んで悩んでいる期間というのは、この助走+ジャンプの時間なのだ。
だから絶対に必要だし、ネガティブだからとポジティブな人間に引け目を感じる必要はない。
 
胸を張って言おうじゃないか。
私は、どうしようもなくネガティブなんです、と。
***

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