「好きなことだけして生きていける」と思って、天狼院に入ったのに。〜東京エリア/アルバイト・社員候補スタッフ大募集開始!10月20日〆切《川代ノート》
いつの日からだったか、「働きたい」と明確に口に出すことが、なんだか、とてつもなく恥ずかしく思えるようになった。
はっきりとしたきっかけのようなものは覚えていないけれど、おそらく、就活を無事に終えて就職し、新卒として働き始めた頃だったと思う。
まだまだ自分の方向性が見えなくて、入社した会社で自分はどんな立ち位置になるのかもわからなくて、手探り状態だった。
幸か不幸か、私が新卒で入社した会社は、自由な社風だった。思いっきり仕事に全力の人もいれば、やるべきことを淡々とこなし、定時で必ず帰宅する人もいた。
当時の私はといえば、これから自分がどんな「大人」になり、どんな風に人の役に立てるようになるのかも、何もかもよくわかっていなかったから、だからただ、周りに置いて行かれないように必死になっていた。
入社してから半年ほど経過した頃、同期との飲み会でふと、ある言葉を聞いた。
「昨日も終電かよ? お前、マジで社畜じゃん」
「だよなあ」
「バカだなー、そんなんしてないである程度稼いだらさっさと辞めて好きなことやってた方がいいじゃん」
「本当それなー。ってか、それができれば苦労しねーよ! 俺だって好きで社畜やってるわけじゃねーわ!」
自虐気味の笑い声とともに入ってきたその言葉に、妙な違和感を覚えた。
ビールジョッキで顔を隠しながら、「社畜だ」と言われた彼の方をちらりと見た。たしかに、彼は同期の中ではおそらく一番、働いていた。人手が足りないときは積極的に穴を埋めようとし、社内の飲み会には必ずと言っていいほど顔を出し、休日には取引先のイベントに顔を出して人脈を広げていた。
一方で、「ある程度稼いでさっさと辞めた方が良い」と言った方の同期は、絶対に残業をせずに必ず定時で帰宅していた。人手が足りない、誰か出れないか、と言われたときでも彼が積極的に手を挙げることはまずなかった。はじめのうち、彼のそんな働き方は浮いていたが、それでも次第に「この人は、こういう人だから」という空気が広がっていって、咎められることも少なくなっていった。
同じ会社でも、これほどまでに働き方に差が出るんだなあ、と私は思った。そしてその当時の私も、「仕事に全力投球!」というタイプではなかった。だから、彼が必死に働いているのを端から見ていて、純粋にすごいなあ、と思った。どうしてあんなに必死に働けるんだろう。仕事に夢中になれるんだろう。上司に怒られたりして、嫌な思いをしてもいいんだろうか。
自分の好きなことだけ、やっていればいいのに。
たしかに、彼をバカにした同期の言う通り、そう思うこともないではなかった。彼の働き方はどう考えても合理的ではなかったからだ。彼が一生懸命働き、残業していることは、彼にとって幸せなことに思えなかったし、まして、それほど意義があることのようにも思えなかった。
正直、古い、とすら思った。
彼のがむしゃらな働き方は、古いし、今の時代に合ってない。ワークライフバランス的に、プライベートを充実させる方が、いいんじゃないの。だいたい、会社に貢献してばっかりで、怒られて、毎日疲れて帰宅って、そんなん繰り返して、過労死なんてしたらどうすんの。
どちらかといえば私は、彼を「社畜」と呼んだ同期の方に同調していた。同調していたはずだった。
「プライベートを充実」させて、「自分のやりたいこと」だけやる人生の方が、いいに決まってる。
そう思っていたはずだった。
なのに、何か、妙な違和感をぬぐうことができなかった。
必死に働く彼。
彼を「社畜」とネタにして笑う同期。
「俺って本当バカだよな」と自虐する彼の言葉。
同期同士での飲み会の中で次第に蔓延していく、「働きすぎるやつはバカ」「働かない方が幸せ」という空気。
頭では、理性では、「プライベートを充実に、仕事はほどほどに」がいいに決まっていると主張しているのに、どうしてか、自分の心は、それにうまく反応してくれなかった。
結局私は、その違和感をどうしても拭うことができなくて、その会社を辞め、天狼院書店に社員として入社することに決めた。
あの違和感の理由は、結局わからなかった。ただ、最後まで「なんか違う」という思いが、ずっと残っていた。
もしかしたら、自分が自分でいられないような気がしたのかもしれない。
心の奥底で、もっと自分らしくいられる場所を求めていた。
大学生の頃からインターン生として働いていて、勝手知ったる天狼院であれば、私は私らしく働けるような気がした。
とにかく、楽しかったという思い出が、脳裏に貼りついて消えなかったからだ。自分の好きなイベントを企画し、好きな本について語り、記事を書く。大好きな文章の仕事もできる。天狼院では、とにかく、「自分の好きなことができる」と思った。自分らしくいられると思った。疑いもなく。
その先の苦労なんて何も考えずに、ただ、大学生の頃の延長戦だと思って、私は、天狼院に入社した。
それが、あまりに楽観的すぎる考えだったのだと気がついたのは、入社初日だった。
天狼院は、戦場だった。
まあ、私が入社した当時、天狼院書店はオープンしてからまだ3年も経過していない超ベンチャー企業だったので、当然といえば当然である。とにかく、毎日必死だった。三浦さんには、何度怒られたか知れない。怒られた日よりも、怒られなかった日を数えた方がずっと早いくらいだった。
悔しかったのは、その指摘がすべて、真っ当だったことだった。
普通の会社の、嫌いな上司に言われたことであれば、「あのクソ上司」とでも言って飲んで忘れられたかもしれないけれど、あいにく、三浦さんは、私がこの世で最も尊敬する人物の一人だった。
だから、悔しかった。本当に悔しくてたまらなかった。
三浦さんが怒るのはいつも、人間としての筋を通さなかったときで、相手に対して失礼に接したときで、学生気分で気を緩ませていたときで、きちんと「仕事」をしていなかったときだった。
何を言われてもまったくその通りだったから、私は何も反論することができなくて、毎日のように、自分の無力さに嫌気がさして泣いた。けれども、かと言って、自分がもっと上に行く方法もよくわからなかった。どうすれば道が開けるのかもわからなかった。だから、前が見えないながらも、ただ毎日がむしゃらに頑張って、もがくしかなかった。
「好きなことだけして生きていける」と思って、天狼院に入ったのに。
もやもやとした思いが、漠然と私の心の中に広がっていった。
それは、私が想像していた、夢見ていた、「自分らしくいられる」生活とは、正反対だった。思い描いていたものとはまるで逆の、先が見えない、苦しい日々。
大学の友人たちとの飲み会の機会で愚痴をこぼしたとき、こう言われた。
「何それ、マジで社畜じゃん」
「かわいそう」
「ブラック企業じゃないの」
「そんな仕事、辞めればいいのに」
たしかにな、と私は思った。それもありだな、と真剣に考えた。あれほど大好きな店であり、天狼院をよくしたいと強く思っていたにも関わらず。
そのとき、私は疲れていた。心の底から疲れていた。今急速に成長しているベンチャー企業だ。穴もあるし、人手も足りない。責任は重く、休みの日も常に仕事のことばかり考えている。
理性で考えれば、冷静に見れば。今の状況をスペックだけで判断するならば、明らかに、私はここから離れた方が良かった。転職した方が良かった。それが普通の人間が、普通に考えてたどり着くであろう、「正論」だった。
「やめようかな」
そう、口に出してみた。やめちゃえやめちゃえ、仕事紹介しようか? と友人たちは言った。
そう言われた瞬間、ものすごい違和感が私を襲った。ピコンピコンと頭の中で、危険を知らせるように、アラーム音がなっていた。
違う、と私は思った。
違う、こんなんじゃない。こんなんじゃ、だめだ。
何か、本能的な何かが、「ここを離れてはいけない」と私に知らせているようだった。「絶対に、天狼院を辞めるな」と、自分の預かり知らない何かが強く言った。まるで未来の自分がタイムスリップしてきて、そう強く忠告しているかのようだった。
結局、私は正論よりもそのアラームを信じて、ギリギリのところで踏みとどまった。本当にこれを信じていいのかと疑いながらも、それでも、どうしても、辞めるという選択肢を取ることができなかった。
そうして暗闇の中必死に働いているときにふと、いつか、三浦さんがこう言っていたことを思い出した。
「一流になりたければ、自分に負荷をかけて、追い込んで追い込んで、頑張り続けるしかないんだよ」
いつだったろう。よく覚えていない。大学生だったかもしれないし、入社当時だったかもしれない。つい最近だったような気もする。
「絶対に、アクセルを緩めちゃだめだ。本当の『自由』を手に入れたいのなら、本当に『好きな事だけやっていきていける人間』になりたいのなら、その領域に到達するまで、必死に、誰よりも努力しなきゃだめだ。『やりたくないこと』も瞬殺でこなせるくらいにならないと、本当の『自由』は得られないよ」
目は、確信に満ちていた。おそらく三浦さん本人が、数え切れないくらいの苦労を重ねてきたのであろうことは、想像に難くなかった。
「天狼院に来る、一流の小説家や編集者の人たちを見てみなよ。あの人たちが、これまで一切、何の努力もせずに、『好きな事だけやって』生きて行くことができてるって、本当に思うの?」
あの頃はピンとこなかった言葉が、今になってようやく少しだけ、わかるような気がする。
単純に、私は、甘かったのだ。
ただ楽をしたかった。苦労をせずに、自分の望む未来が手に入ればいいのにと思っていた。
仕事はほどほどに。好きな事だけやる。やりたくない事はやらない。自分の利益にならないことはやらない。
時間管理をして、効率良く。コスパ良く。生産性を意識して。
日々流れてくる情報に、あるいは、振り回されていたのかもしれない。
「働かない方が幸せ」だと。
必死に働かせる会社は「ブラック企業」であり、ホワイト企業を見つけてそこでのんびりと働くことこそが人間の進むべき正しい道であり、がむしゃらに、会社に全てを捧げるような働き方は、「バカ」で、「アホ」で、そんなことをさせる会社は「やりがい搾取」をしている、この世の悪である、と。
日々流れてくるそんな「正論」に、あるいは私は、影響されすぎていたのかもしれなかった。
他の人がどうかは、知らない。
けれども、私は、働かなければならないんだ、と思った。働きたいと思った。今がどんなにダメでも、人の役に立てる人間になりたいと思った。
なぜなら、私は「本当の自由」を手に入れたいと、本気で願っているからだ。
がむしゃらに、必死で、自分の目指す未来を諦めないために、実力をつけなければならない。努力しなければならない。
だって、そうしないことには、私が望む「かっこいい大人」には、到底なることができないからだ。
あるいは、こんな働き方は、「異常」であり、そこまで仕事に没頭することは「バカ」のすることであり、はたから見れば、天狼院は、「ブラック企業」なのかもしれない。今私がしていることは、「正しい」ことではないのかもしれない。
けれども、「正論」では、人は動かない。
世間的に見て、理性的に見て「正しいこと」が、自分にとっての正解だとは、限らないのだ。
社会がこうだから。みんなはこうだから。そんなのはおかしい、こういのはだめ。なんだか、もう、街を歩いているだけで、息苦しくなってくる。
私がするべきだったのは、世間に「それで正しい」と言ってもらえるような道ではなく、自分が「こうしたい」と強く望む道を選択することだったのだ。
ああ、だからあのとき、私は強い違和感を覚えたんだ。
「社畜」とネタにする言葉。
たくさん働いているくせに、「本当は働きたくない」と主張する彼の顔。
すべてがなんだか、ちぐはぐに思えた。
「働かない方が幸せだ」という大きな流れに、連れて行かれてしまう様な気がした。
別に、それならそれでいいと思う。
働かない方が幸せならば、そうすればいい。
ただ、私はきっと、「働かなければならない」タイプの人間だったという、それだけの話だ。
***
今回、天狼院書店スタッフの募集をするにあたって、天狼院の現状を正直に書いたのは、がっかりしてほしくないと思ったからだ。
嘘をつきたくないし、期待をされたくないと思った。だから、入社後のギャップが生まれない様に、あらかじめ、言っておきたい。
天狼院書店は、「好きな事だけをやっていける」場所では、ない。決してない。
むしろ、1%の好きなことをやるために、残りの99%、やりたくないことも含めて、全力で生きている様な感じだ。本当に。
だからおそらく、「正しいこと」を求めるような人にとっては、居心地が悪いかもしれない。
見方によっては、天狼院は昭和的であり、体育会系であり、理不尽な会社かもしれない。
それでも、私がここで働き続けているのは、これ以上自分らしく働ける場所はないと、確信しているからだ。
ここまで、まるで一つの大きな山を乗り切った後であるかのような書き方をしているけれど、私はまだまだ暗闇の中だし、もがきまくっているし、苦しいことも毎日ある。とても一人前とは言えず、日々誰かに迷惑をかけていやしないかとびくびくしながら過ごしている。
楽しいことよりも辛いことの方がずっと多いし、常に恐怖で震えている。このままずっと朝が来なければいいのにと思いながら、毎晩、眠りについている。
今だって、前よりもちょっとだけ泣かない日が増えてきたくらいで、まだまだ泣かない日より、泣く日の方が、ずっと多い。
けれども、いつの日か「本当にやりたいこと」だけをやって生きていける人生を手にしたいから、手に入れられると信じているから、私はここで働いている。そうすることが私にとっての幸せなのだと確信している。
だから、悪いことは言わない。
「楽しいことだけやっていられそう」
「クリエイティブな仕事ができそう」
「めんどくさいことやらなくても大丈夫そう」
そんな下心があるのなら、天狼院書店で働くことは、おすすめしない。
きっと、想像とのギャップにがっかりしてしまうだろう。
けれどももし、楽しいことだけじゃなくてもいいから、それでもやっぱりここで働いてみたいという気持ちがあるのなら、ぜひチャレンジしてみてほしい。
本日10月14日より、天狼院書店(東京エリア)スタッフの募集を開始いたします。
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天狼院書店(東京エリア)では、新しいスタッフを募集しております。
アルバイト・スタッフと同時に、社員候補のスタッフも募集いたします。
いずれの場合も、まずはアルバイトとして採用します。
3ヶ月間の試用期間を経て、希望者の中から、相応しいと店主が判断するスタッフを契約社員に昇格させます。
契約社員としての契約期間6ヶ月間で、もし適性があると判断した場合は正社員への登用を決定いたします。
応募は、エントリー方式です。
まずは、天狼院の公式ホームページの「問い合わせ」
TEL:03-6914-3618
より、件名に「天狼院書店アルバイト・スタッフへの応募」と記しお名前、お電話番号、メールアドレスをお送りください。
ご連絡先を確認できた方にスタッフよりご連絡いたしますので、「履歴書(*写真付き)のPDFファイル」をメールでお送り下さい。
それを「1次選考」とさせていただきます。その中で、面接に進んだ方にのみ、担当者から連絡を差し上げます。
なお、募集は複数回開催させていただく予定ではございますが、募集人員に達した場合、予告なく募集を打ち切らせていただきますので、お早めのエントリーをお願いいたします。
皆様のご応募、お待ちしております。
■応募締め切り:10月20日金曜日23:59
■面接日:火曜日、または水曜日(予定)
【条件】アルバイト・スタッフ
業務内容:店舗運営業務/イベント運営業務/編集補助など
応募資格:業務に支障がないレベルでパソコン・インターネットを扱える方/学生の方だけでなく、主婦の方も歓迎/土日に入れる方歓迎/書店未経験者歓迎
給与:当社規定による
出勤日数:週3日以上*完全シフト制(応相談)
勤務時間:9:30〜22:00の間の3時間以上*シフト制(応相談)
交通費:当社規定による
勤務地:天狼院書店 池袋地区「池袋駅前店/東京天狼院/スタジオ天狼院」のいずれか(その日によって、店舗を移動していただく場合もございます)
【条件】契約社員
業務内容:店舗運営業務/イベント運営業務/スタッフ教育/編集補助など天狼院の全ての業務
応募資格:大卒以上*応相談/業務に支障がないレベルでパソコン・インターネットを扱える方
給与:月給制*当社規定による/インセンティブ給与有/社会保険等完備
出勤日数:週休2日制
勤務時間:9:30〜18:30(実働8時間)/13:15〜22:00(実働8時間)シフト制*変更になる場合有
交通費:当社規定による
勤務地:天狼院書店「池袋駅前店/東京天狼院/スタジオ天狼院」のいずれか
契約期間:6ヶ月(延長・社員登用の可能性有)
【条件】正社員
業務内容:店舗運営業務/イベント運営業務/スタッフ教育/編集補助など天狼院の全ての業務
応募資格:大卒以上*応相談/業務に支障がないレベルでパソコン・インターネットを扱える方
給与:月給制賞与有*当社規定による/インセンティブ給与有/社会保険等完備
出勤日数:週休2日制
勤務時間:9:30〜18:30(実働8時間)/13:15〜22:00(実働8時間)シフト制*変更になる場合有
交通費:当社規定による
勤務地:全国の天狼院書店(*転勤有)
【天狼院書店へのお問い合わせ】
TEL:03-6914-3618
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