メディアグランプリ

ぬい撮り文化とは


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:松崎めぐみ(ライティング・ゼミ 秋の集中コース)
 
 
最近Twitterなどで行楽地に行った写真の中心にぬいぐるみが写っている画像を見かけることがある。また、食事の写真の中に手のひらサイズのぬいぐるみやフィギュアが写りこんでいる写真を目にするかもしれない。
これは「ぬい撮り」という一種のオタク文化なのだ。
有名なのはダッフィーの写真だろう。ディズニーシーの公式キャラクターであるクマのぬいぐるみダッフィーを連れてディズニーリゾートに訪れ、様々な写真を撮っている人が多い。これはディズニー側でも推奨している楽しみ方で、「ダッフィーフォトスポット」という場所を用意し、ぬいぐるみを置いて写真撮影を楽しめる場所がある。
これに限らず、観光地に行けば、また普通の食事の風景であっても、ぬいぐるみと写真を撮っている人は多い。ツイッターで検索するだけで、いろいろなぬいぐるみたちの写真を見ることができる。
 
 
けれども、この行動にたいして、不思議なものに感じる人もいるだろう。
それこそ昔は、家族のアルバムを代表するように、写真とは何か人生の節目やイベントの際に撮るもので、家庭のアルバムには子供の成長記録や旅行の思い出。小学校や中学校の運動会などのイベントで子供のためにシャッターを切る親と聞くだけで、みなさんのは簡単にイメージできるだろう。
ある観光地で、ぬいぐるみ片手に散策し花の前で写真を撮る友達旅行らしき人達がいたという。熱心にぬいぐるみと花をとっている人に親切心で「2人一緒の写真を撮ってあげようか?」と声をかけたところ、女の子たちに「自分たちの写真は必要ないので大丈夫です、ありがとうございます」と丁寧に返され、実に不思議に思ったとテレビのインタビューに答える人の姿があった。
そうなのだ。ぬいぐるみの写真を撮ることが目的で、自分たちの写真は一切残さないという行為は、知らない人から見れば実にわからない行動である。
しかし、ぬい撮りをしている人間からすると、自分の写真を撮ることとぬいぐるみの写真を撮ることは全く違う行動なのだ。
 
 
ぬい撮りという文化は実はTwitterでの交流のために発展したものという側面がある。
おいしいご飯を食べる前に、ぬいぐるみをお皿の近くに並べ、写真を撮る。ただ食事の写真を撮るよりも、写真が華やかになり、一つのツールとして完成する。
また、Twitterというのは匿名で発信できる気軽さがある反面、発信者が一体どのような人物か、ただ見ているだけではわからないという部分もある。例えばTwitterに流れてきたぬいぐるみが自分の良く知っているアニメキャラクターのぬいぐるみだったとしよう。すると、その写真にとたん興味がわくだ。これがただ食事の風景であれば素通りしてしまうものであったとしても、ぬいぐるみ一つ置くだけで、写真に一つの情報が付け加えられ、この人はいったいどのような人なのだろうと知る一つのきっかけになる。
ぬいぐるみを連れだして写真を撮っている人にとってそれは一種の自分というアイコンの意味を持っている。
そのうえで、Twitterツールとしての一面が強いというのは、Twitterの弱点をカバーしている一面があるからかもしれない。
Twitterは匿名性で発信できる気軽さがあり、だからこそ人気のあるSNSではあるが、気を付けなければならないこともある。マナーはもちろんのこと、自分の正体を隠す努力をしなければならないのだ。気軽に自分の写真など載せることはできない。だから、代わりにぬいぐるみを写真の中に収める。ぬいぐるみは自分の分身なのだ。
 
 
もう一つ付け加えるならば、ぬいぐるみとの生活を楽しんでいる証拠ではないかと私は思う。
外へ出かけて特別なことをしなくても、ぬい撮りしている人たちはぬいぐるみと日常生活の一風景を撮ることを楽しんでいるのだ。観葉植物を見上げるようにぬいぐるみを置き、きれいに撮れるよう光の位置を調整する。そしてこれという一枚を撮ってTwitterにあげる。
その際、「植物と撮りました」などというコメントはしない。例えばぬいぐるみのセリフ、シチュエーションすら持ち主は考え創作する。たとえば「ぬいぐるみちゃん、今日も水やりご苦労様」「うん頑張ったよ」などとぬいぐるみとの生活のワンショットという形でつぶやく。
もちろん冷静に考えればそんなことありえないのだが、漫画家や小説家がお話を考えて表現するように、彼らは日常を共に暮らすぬいぐるみたちと見ている人を楽しませるストーリーを考えて、表現するクリエイターであり、ぬいぐるみたちの演出家である・
 
 
ぬいぐるみと写真を撮って何が楽しいのか? と思う人もいるかもしれない。けれども、ともに暮らすぬいぐるみという存在は「自分の子供」にも等しいの。わかりやすく言えば「うちの子かわいい」である。最初に出てきたダッフィーのぬいぐるみもディズニーから着せ替え用のお洋服も出ているが、自らぬいぐるみの洋服を作り、それを着せて、スポットで写真を撮り皆に見せる行為は、子供をかわいがる行動とそれほど変わらないと私は感じるのだ。
私たちはぬいぐるみと暮らしている。ぬいぐるみと観光地に足を運びその記念を残す。おいしいものを食べたら、それを共有する。Twitterにあげることで「うちの子かわいいから見て見てー」とわが子自慢をするのだ。
あなたもぬいぐるみと暮らしてみませんか?そして、お気に入りのぬいぐるみを外に連れて、写真を撮ってみませんか?

 
 
 
 
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2019-10-17 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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