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原宿のファミマはわたしのレストラン


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原宿のファミマはわたしのレストラン
記事:川西彩(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
原宿から渋谷へ向かう明治通り沿いにあるコンビニのファミマ。
そのお店の前を通る時、いつも思い出すことがある。
今から20年以上前、わたしが地元北海道から東京の大学へ進学し、上京した頃のことだ。
 
小さい頃からずっと東京に憧れていた。
特に、小6のときに見たドラマ『東京ラブストーリー』に衝撃を受けた。
当時住んでいた北海道では見たことのないような高層ビル、オシャレな服、お店、標準語で繰り広げられるスマートなオトナの会話。
 
「わたし、オトナになったら東京に行く!」と一緒にドラマを見ていた母親に宣言したくらいだった。
 
数年後、高校卒業後の進路として東京の大学を選んだわたしは、見事に東京行きの切符を手に入れた! 小さい頃の夢を叶えた……ように見えた。
 
しかし、現実はオシャレな東京生活とは程遠かった。
 
わたしが進学した大学は東京の大学ではあったものの、限りなく埼玉寄りであり、さらに1、2年生は埼玉の奥地にあるキャンパスに通わねばならず、必然的にわたしの住まいも学校近くの埼玉の奥地、正直、地元北海道よりも田舎だった。高層ビルはもちろん、オシャレな店なんぞ1軒も無かった。
 
こんなはずじゃなかった、わたしの東京生活! と泣き出しそうになる気持ちを、毎週末、休みの度に東京へ出ることで何とか紛らわせようとした。
 
足繁く通ったのは、原宿、渋谷。
今考えてみると、オシャレな東京のエリアなんてもっと他にもあるのに、当時のわたしにとっては東京と言えば原宿、渋谷だった。それ以外の街は眼中になかった。
 
埼玉の奥地から電車に揺られて1時間半。
原宿駅を降りて、ラフォーレ原宿の一番上の階から下の階までオシャレなお店を一巡して、当時流行っていた裏原宿をブラブラした後、明治通りを抜けて渋谷駅へ向かうのがわたしのお決まりのコースだった。
 
その間に喉も乾くし、お腹も空く。
せっかく原宿にいるのだから、ここぞとばかりに東京っぽいオシャレなカフェとかレストランに入ればいいものの、わたしは入らなかった、というか入れなかった。
 
なぜならば、完全にビビっていたのだ。
当時のわたしは、原宿に負けていた。完敗だった。
 
原宿や渋谷を歩く人は、みんなイケてるように見えた。
都会人は当たり前のように、オシャレなカフェで涼しい顔をしてランチをしているように見えた。
 
一方、こちらは東京に恋い焦がれてハヤる気持ちを抑えつつ、1時間半かけて原宿に来ている田舎者のわたし。
 
例えるなら、憧れの大好きな芸能人が目の前に現れたのに、いざという時に一言も発せないようなもの。
 
しかもひとり。
当時、そう言えばあんまり友達もいなかった。
 
ちなみに当時のわたしは、髪が金髪だったりオレンジ色だったり、左右色の違うタイツや靴を履いていた。
当時の写真は燃やしてしまいたいくらいの黒歴史なのだけど、今考えてみると十分原宿ぽかったかも?
田舎者にしては頑張っていたし、案外原宿に溶け込んでいたはず。
 
だけど、当時はオシャレなカフェにひとりで入るのが恥ずかしかったし、怖かった。
オシャレな空間に足を踏み入れたら絶対に浮いてしまう、ダサいって思われそうだし、そもそもわたしなんぞ、 東京の、しかも原宿のカフェに入るレベルじゃない。敷居が高すぎるっ!
 
結局、毎回オシャレなカフェやレストランに入ることなく撃沈していたわたしだったが、いつも腹ぺこでたどり着くのが、明治通り沿いにあるコンビニ、ファミマだった。
 
ファミマでおにぎりとかサンドイッチと飲み物を買って、お店の前のガードレールに座ってひとりでごはんを食べた。
 
わたしは密かに、そのファミマを『レストラン』と呼んでいた。
たぶん、その後1-2年くらいは『レストラン』に通った。
 
あれから20年以上が経ち、もう関東にいる時間のほうが地元北海道で過ごした時間を超えた。
かつて東京に憧れた田舎者のわたしはどこにもいない。
今では原宿も渋谷はもちろん、青山も銀座も東京のどこへだって行けるし、どんなにオシャレな店にだって、たいてい臆することなく入ることが出来る。
 
憧れが憧れではなく、現実になるとき。
嬉しい気持ちと共にちょっとだけ切なさもある。
 
わたしたちは、年齢や経験を重ねることで、怖かったものが怖くなくなり、ちょっとやそっとのことで動じなくなるし、出来ることや手に入ることも増える。
でも一方で、物事に対して新鮮さを感じられなくなったり、予測できないようなことや驚きはだんだん減ってくるものではないだろうか。
 
今でも、明治通り沿いのファミマの前を通るとき、当時、原宿のオシャレなカフェに入れなかった頃の自分を思い出す。そして二つのことを思うのだ。
 
ひとつは、当時の自分へ。
大丈夫だよ。もう少しであなたはその『レストラン』を卒業するよ。
色々な経験をして、そのうち憧れていたオシャレな店にも堂々と入れるようになるからね。
 
そしてもう一つは、今の自分へ。
今、怖いなとかビビっていることがあっても大丈夫だよ。20年後には、きっと出来るようになっているから。きっと今の自分を懐かしむ時がくるからね。
 
原宿のファミマはわたしのレストラン、大切なことを思い出させてくれる原点回帰できる場所だ。
 
 
 
 
***
 
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2020-09-12 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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