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メディアグランプリ

僕が初めて仕事として作家にダメ出しをした話。


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:黒田純平(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
どんなことにも人からのダメ出しを皆さんも受けたことはあるだろう。
「これが出来ていない」「詰めが甘い」などお世辞にも褒められることを言われることではないので、気分は良くない。
だけど、決してネガティブなことになるだけの存在ではない。例えば、仕事をこなして、ダメ出しをもらう。最初は落ち込むものの、誠実に対応していけば挽回できるものでその人に対して期待が込められたダメ出しもあるのだ。
 
ここ、ライティングスクールでも何十回と課題を出している僕だが未だにダメ出しをもらい続けている。時には悔しく、納得することもある。改善し、また課題を提出し、指摘された箇所は良くなっているものの次はこの部分がもう少し良くなれば! と次第に前向きになる指摘に変わっていくのだ。
 
普段の僕は、個人で場所を持たずアートギャラリーをやって早五年目。いまだに自分は各所でダメ出しをもらい続けながらも日々精進している。いや、思いたい。
毎回、企画した展覧会の最中でも終わった後でも反省する点はあって、次はこうはならないように先回りして動こうとミスを次に活かしながらも自分のプロフェッショナルを磨き上げていく。
 
今回は、日々ダメ出しをもらい続けている僕が初めて作家に指摘をした話をしようと思う。
 
二年前のことだ。僕は当時京都でフランス人アーティストが立ち上げたアートセンターでキュレーターとして従事していた。ここでの業務内容は、カフェとバーの運営に加え、若手作家を中心とした展覧会を企画し京都のアーティストコミュニティを作り上げることが僕に与えられたミッションだ。
 
それはもう怒涛の日々で、英語もままらない自分からしたら覚えることはたくさんで展覧会えお一本作り上げるプロセスも簡単には行かない。そんな中でも、日々のタスクをこなしながら着々と展覧会も決まり企画運営をしていた。
その日は仕事も終わり家で携帯を見ていたときのことだ。大学の後輩から「僕の同期がそこのスペースで展示をしてみたいそうで一度作品を見てもらってくれませんか?」と一通のメッセージが飛んできた。
正直僕のスタンスは自分から声をかけて条件を整えながら企画をするタイプなので中々紹介制での企画はやったことがない。そんなこだわりが若輩ながらもある自分は偉そうにもそれでもいいのであれば、是非つなげてくださいと承諾。
 
程なくして、作家さんから連絡が来て、いろいろ話をした。
作家は、まだ学生で、グラフィックデザインを学びながらイラストを制作しているそうだ。
学校の外での展示、ましてや個展もしたことがないがこのまま溜まっていく自分の作品を多くの人に見てもらいたい。と以前僕が企画をした展示を見に来てもらっていたようだ。
 
経緯は理解し、なんだか嬉しい部分もあったのは今でも覚えている。
さて、本題の作品を拝見させてもらうため、HPのリンクを送って頂いた。
僕は、基本作家のことはリスペクトしている。僕も作家を志していたが、中々大胆な発送やアーティストとしての思考がつかず周りとの差を感じて作家を辞めた人間だからだ。
 
辞めてからは企画などディレクター職として裏方についたが、基本作家のことは第一優先で考えてきた。まず作家が満足できるものを企画する。それが当時の自分の鉄則だった。
しかし、その時はその考え方に疑問を持っていたのも事実。見てもらうの鑑賞してもらうお客さんのはずでは?作家とディレクターは二人三脚で企画をより良いものにするのが正しいのではないか?
 
そんな考え方を変えてくれたのも、きっとこの時連絡してくれた作家のおかげだと思う。
 
結論から言うと展示企画は断った。
理由として、作家の作品にはまだ未熟な部分があり、いまはまだ露出する段階ではないと判断したのだ。作品はすべてデジタルで描かれたアンニュイなキャラクターが主で、色味もすこし強い印象があった。
これでは、趣味のイラストとしてでしか見られない。僕が企画するには実力もそうだが、なぁなぁで企画すると痛い目を見ると直感が働いたのだ。
 
僕は、作家さんのためにも正直な意見を言って、納得してもらいもっと作品のグレードを上げてほしい旨みを伝えた。
デジタルではなく、せっかくの有機的な線を活かすためにアナログに戻ってみてはどうだろうか。色味もすこし落ち着かせてよりリアルに画材を魅せて行くほうが作品がよくなると思う。そんなことを懇切丁寧にメッセージを送った。
 
既読はすぐについたが、返事が来たのは次の日の夕方頃だった。
 
「わかりました。貴重な意見ありがとうございます」
 
たったその一文だけだった。ショックを受けてムカついてるに違いないとすこし後悔ばかりが続く。
 
しかし、自分の中では成長を感じた瞬間でもあった。
後悔はしながらも切り替えて僕は次々やってくる仕事をこなし続ける日々に戻った。
 
それから、一年後。僕は美大の卒業制作展に新しい作家さんとの出会いに胸を膨らませながら視察に行ったときのことだ。
あるイラストの展示が目に留まり、アナログでアンニュイな雰囲気で描かれた作品群を眺めいい感じだなと誰が描いたのか名前を見てみると、一年前あのダメ出しをした作家だったのだ。
 
僕が指摘したあとからアナログで描き始めて今のスタイルに持っていったと見て取れる。僕はなんだか嬉しくなって紹介してもらった後輩に「あの時の作家さん、とても作品がよくなっていました。今後なにかあればお誘いしたい」と。
 
それから作家本人からも連絡が来て当時の言われた内容に救われたと、こんな僕の発言で人が動いたことに自分も感動してしまったことを覚えている。
 
いつか、その作家となにかプロジェクトをできたらと、当時のことを思い出しながら今日も課題を執筆する。
 
ダメ出しは決して悪いことではない。
 
可能性が感じられる一言なんだ。
 
 
 
 
***
 
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2020-09-12 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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