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デスノートのすすめ

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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

 
 
記事:いそだのりこ(ライティングゼミ日曜コース)
 
クローゼットの奥。見つからないように隠してある、黒のモレスキン。私はそれを「デスノート」と呼んでいる。漫画のデスノートから名前を拝借しているが、人を殺めるためのノートではない。むしろ、人を傷つけないために、私はデスノートを使っている。
 
学生時代、感情の起伏が激しく、特に怒りの沸点が低かった私は、自分が傷付いた!となれば、大騒ぎだった。友達を呼び出し、愚痴を何日も繰り返す。
気持ちを吐き出すのは、大事なことだ。ただ、物事には限度があることを私は分かっていなかった。「いいかげん、愚痴やめたら」と言われ、うんざりした友人を見た時に、猛烈に恥ずかしくなったのを覚えている。自分を律する人は愚痴を言わないというが、私はその真逆。感情をコントロールできない学生。子供そのものだった。
 
とは言え、傷付いたら落ち込むし、裏切られたら頭にも来る。愚痴らないように!と思っても、それでモヤモヤが溜まって、怒りや悲しみがさらに大きくなる。イライラする!!!
 
そんなとき、私は怒りをノートに書き殴ることを思いついた。口で言えないのなら、書いてしまえ!書き出したら悪態は止まらなかった。何ページも文句がびっしりになった頃には、手首と肘が痛くなって、一息ついた。そこで目に飛び込んできた文字。
 
「一回、死んで来い!」
 
一度ではない。何度も死ねと吐き出した自分に、さすがにちょっと引いた。怒りの頂点で気持ちを一心に書き殴るまではよかった。手が痛くなって、はたと気づいたら、最低な言葉の洪水。それで、怒りが急にしぼんでしまった。冷静になると、人は客観的になるものらしい。つらつらと並んだ愚痴や文句を眺めて、「よく、こんなこと思いつくなあ」なんて分析まで始めてしまう。
 
そこで、私は気がついた。さっきまで「かわいそうな私!ひどいアイツ!」だったのに、「死ねと書かれて気の毒なあの人、落ち着け私」に気持ちが切り替わっている。これはひょっとして、怒りを鎮めるいい方法なのではないだろうか。
 
いったんは落ち着いた怒りだったが、一晩寝るとまたぶり返す。その後、何度も湧き上がる気持ちをノートに書き続けた。そのうち、書き過ぎたせいか、全部どうでもよくなってきた。傷付くことにも、怒ることにも、疲れてしまったのだ。
 
頭に来ている時は、怒りの沸騰状態だ。そんな時、愚痴を吐けば、それこそ「傷付いた私」を全力でアピールしてしまう。話しているうちに、さらに勢いが加速する。平常心に戻さないと、愚痴劇場は幕を下ろさない。相手に求めているのは、聞いてもらうことと、慰めてもらうことだけ。アドバイスも耳に入らないから、うんざりさせるのも無理はない。しかし、沸騰状態は、愚痴を書き続けていたら、何故か収まって来た。単に疲れただけかもしれないが、手に痛みを感じるまで書き続けた結果、冷静な自分が戻って来たのだ。
 
それから私は、何か嫌なことがあると、ノートに書き殴るようにした。愚痴はなるべく口にしないように心掛けながら。気が短いだけに、とにかくよく書いた。1年で大学ノート3、4冊くらい。私はそれを当時「グチ帳」と呼んでいた。
 
グチ帳を量産し続けて何年か経った頃、映画デスノートがヒットする。「デスノートって名前、かっこいい!」とそのまま拝借し、グチ帳はデスノートに改名した。ノート自体も大学ノートから、雰囲気を真似て黒のモレスキンにランクアップした。そして私は、デスノートの使い手になったのだ。
 
中身は相変わらず、文句、愚痴、罵倒の嵐。とても人様にはお見せできるものではない。だからこそ、酷い言葉も思う存分書き殴れる。不思議なことに、最悪で最低な言葉が並ぶほど、気持ちが収まるのが早いのも、体感で分かってきた。何年もデスノートを書き続けていたら、予想外のことが起こった。デスノートを書く頻度が、減ってきたのだ。今はよっぽどのことがない限り、デスノートは登場しなくなった。
 
理由は、怒りの沸点が下がり、感情的になることが少なくなったから。愚痴を言ったり、ノートに書き殴る前に、頭の中で整理できるようになったのかも知れない。何か起こっても「傷付いた私」になることが、圧倒的に減ったのだ。
そんなことが起こると思ってはいなかった。私がやったのは「愚痴を言わない」ようにするために、ノートに書き殴っただけ。書き続けただけで、マイナス感情が減ったのなら、すごい効果だと思っている。
 
実践のコツは、疲れるまで書くこと。書いた後、読み返さず、ビリビリに破って捨てること。愚痴を保管して後から見返すのも気持ちの整理のためにはいいかもしれない。世の中には、そういうノート術も存在するらしい。しかし自分が突然いなくなったり、ノートの存在を忘れてしまった時、誰かを傷つけないようにするために、書き終わったら捨てるのが私の流儀だ。なぜならこれは、人を、自分を守るためのノートだから。
 
「デスノート」今はぴったりの名前だと思っている。殺しているのは、人ではなく、マイナスの感情。ノートと一緒に破って捨てることが、本当の意味での「デス」だと思っている。
読み返すこともなければ、どんどんページが捨てられていくノートだが、お守りのようなものだ。嫌なことがあったら、書けばいい。今もクローゼットの奥で、真っ黒なデスノートは、たまの出番を待っている。
 
<終わり>
 
 
 
 
***
 
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2021-02-07 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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