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若気の至りゆえに興味津々だった受験生のワタシ

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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:田盛稚佳子(ライティング・ゼミ特講)
 
 
受験シーズン真っただ中。通勤途中やカフェでは、あちらこちらで参考書を片手に受験生が追い込みをしている真剣な姿を目にする。
その姿を見て、今でもチクリと胸が痛む。
 
私は地元の私立大学の卒業生である。当初は公立大学を狙う受験生だった。
通っていた高校が進学校だったので、学校としては合格実績を上げるために、生徒の偏差値に見合った受験先を進めてくれる。
私は理数系科目が中学2年から驚くほど成績が急降下し、父の転勤で高校2年生になる時に編入試験を経て入学した進学校の校長先生からも
「田盛さんは、理数系をどうにかしないといけませんねぇ……」
と直々に言われるほど、私は超が付くほどの理数系アレルギーだった。
なぜなら、公開模試で2時間ある試験時間のうち、もう最初の15分で数学の問題がさっぱりわからない。残りの時間は「さーて、試験官の似顔絵でも書いちゃおうかな」というくらいの酷さである。
文系の成績だけはそこそこ良かったので、ちょっと頑張って国立文系クラスに行ってはどうかと説得する担任を振り切って、私立文系クラスへと進んだ。
ただし、文系3教科(国語・英語・世界史)で受験ができる県内の大学を選ぶとなると、選択肢はおのずと限られてくる。
父親は先々単身赴任の予定もあったし、県外ましてや私立大学なんて行ったら、父・母・私の三重生活。単純に倍以上のお金がかかってしまう。
ウンウンと悩んだあげく、経済的にも負担の軽く、祖父母の家からも通えそうな公立大学を第一希望にした。
 
ところが思うようにいかないのが、人生というもの。
1月のセンター試験(文系3教科)で、一番の得意科目「国語」で予想の7割も取れないというアクシデントが発生した。致命的である。
まずい。これでは次の試験で満点に近い点数を叩きださなければ、まず合格なんて無理だ。
いっそのこと受けないでおこうか。いや、でも万が一ということもあるかもといろんな思いが逡巡した。
センター試験で派手に大コケしてしまったので、半分は記念受験と思って新幹線に乗り、私は受験会場に向かったのだった。
 
実はその前に、自宅から1時間程度で通える私立大学にはすでに2月中旬に合格していた。
地元では有名な私立大学だったので、少し気が緩んでしまっていたのは否めない。
一番得意な科目は国語。これで挽回すればなんとかなるかもと当日の試験に臨んだ。
現代文の初めに漢字の熟語があった。
設問:□□に入る漢字を埋めよ。
1. 興味□□(きょうみしんしん)
2. □□の至り(わかげのいたり)
こともあろうに、私はこんな解答をしてしまった。
1. 興味深々
2. 若毛の至り
 
何の迷いもなくさっさと書いた私は、この解答を見返さずに次々と問題を解いていき、時間内にすべて空欄を埋めた。そして終了時間の合図。
あー、やっと試験が終わったー! これで受験勉強から解放だー! 遊べるー!
でもなんだろう、このなんか消化不良な気持ち。モヤモヤする。
今更だけど、あの漢字の穴埋め問題、違うような気がしてきたのである(もう遅いのだが)
当時、スマホはおろか、携帯電話もまだない時代。その場で検索するツールが何もなかった。
これは家に帰ってから辞書で確認するしかないな。
さっきまでの解放感から一転。私はモノレールの駅へと足取り重く歩いていった。
 
販売機で切符を買い、さてエスカレーターに乗ろうとした瞬間……。
上りのエスカレーターから若者二人が、ドドドッとものすごい勢いで駆け下りてきた。
何か用事があったのか、非常に急いでいた。
そして、その勢いでおそらく一番上のお客さん(周りはほぼ受験生)にぶつかったのだろう。
上から人がドミノ倒しのようにバタバタと倒れてきたのだ。
不思議なもので、その倒れてくる様子がスローモーションのように見えた。
以前に誰かが、「死ぬ前には今までのことが走馬灯のように見える」と言っているのを聞いたことがあるが、まさにそんな感じだった。
「あー、なんか倒れてきた。私、死ぬかも?」
と思ったとき、私の後ろに並んでいた男性が右手をぐっと引っ張って、エスカレーターの一番下にいる私をドミノ倒し真っ最中の列から、引きずり出してくれた。
間一髪、ドミノ倒しの犠牲にはならなったものの、その瞬間に
「あ、この大学落ちたな」と察してしまった。
案の定、後日書面で届いた通知は「不合格」
ですよね、そうですよね。
だって、現代文の読み取りで作者の意図しない所を読み取って、
「あー、そういう解釈じゃないんだよな」とかいう問題のレベルではなかったのだ。
若毛の至りって、どんな至りだよ。成長期の男子かよ?
辞書で確認した漢字を見て自分の無知さ加減にほとほと落胆し、自身へのツッコミを入れながら私の受験生生活は幕を閉じた。
 
結果的には先に合格していた地元の私立大学で私は4年間を楽しく過ごした。
どちらかと言えば、勉強よりオーケストラサークルに没頭したものの、卒業して20年以上経った今でも、仲間と長い付き合いができているのは本当にありがたいことである。
受験生の皆さん、どうか私のような漢字の間違いをしないでほしい。
そして、もし間違ったとしても若気の至り。
また違う進路で、当時の自分自身が想像しなかった楽しい人生が待っているということも、頭の片隅に置いていただけると、私の恥ずかしい思い出も成仏できそうである。
 
 
 
 
***

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2021-02-16 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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