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自分のコンプレックスで子どもを愛することができるか不安だった話


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記事:長嶺一紀  (ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
昔から、自分の子どものことは好きになることができないのではないかと考えていた。
 
 
子どもが嫌いなわけじゃない。むしろ小さい子どもと遊ぶのはとても得意な方で、どこに行っても気づけば子供に囲まれている。親戚の飲み会や職場の飲み会なんかでも大人と話している時間よりも連れてきた子どもの面倒を見ているのが楽しいぐらいだ。
 
 
そんな僕だが、昔から自分の子供ができたら育てることができるのだろうかとひどく疑問を感じていた。今の嫁と結婚して、子どもができた時、最初に感じたのは「嬉しい」ではなく、正直に言うと「俺が立派な親になれるのだろうか」「自分に似てほしくない、自分似てしまったら子どもを愛することができるだろうか」という漠然とした不安に駆られていたのは覚えている。
 
 
この不安の原因として、自分の顔がコンプレックスだったというのがある。本当に自分の顔が嫌いでしょうがないし、今でもまともに鏡をみることができない。
 
 
特に小さい頃はその様なコンプレックスはなかったのだが、思春期になり、多感な時期に色々な人と接していく中で自分の顔にコンプレックスを持つ様になってしまった。
 
 
対面で顔に関して「気持ち悪い」と言われる。陰口で言われる。挙げ句の果てには友達づてに「あの人がキモいって言っていたよ」と人づてに伝えられる。いつも思うのだけれども、人が言った陰口を律儀に本人に伝達して来る人って何のためにその様な行動に出ているのだろうか。誰にもメリットなんかないのに、伝えないといけない使命にでも囚われているのだろうか。今でもそういう人は僕は関わりたくないと思っている。
 
 
話は少し脱線したが、この様に中学生ぐらいの多感な時期に本当に色々な人に色々と言われた結果自分の顔が嫌いになった。もちろん言われ続けるのも嫌だったので、洋服の勉強をしてみたり、身体を鍛えたり、髪型を整えたりして、少しでもましに見られる様に取り組んで行った。そのお陰か高校に入ったぐらいから容姿に対しての悪口は大分少なくなってきた。それでもコンプレックスは消えたわけではなく、鏡はまともに見れないし、たまに容姿を弄られたりすると精神的にとてもしんどくなってしまう。自分にとって容姿はそれほどにコンプレックスなのである。
 
 
そんな僕が子どもが生まれることになった時に感じたのは、僕に容姿が似てしまうと僕と同じ経験をしてしまうのではないのかということだった。もちろん自分に子どもができることはとても嬉しいこととは感じていた。それでも自分の様に辛い経験をすることになってしまわないか、また自分の容姿が嫌いな僕に似てしまうとその子を愛せないのではないのかと、今では絶対思わない様なことまで考えてしまっていた。とにかく親になることに自信がなかったのだ。
 
そんな他人にとっては小さくても僕にとって重大な悩みを持ったまま、お腹の子はどんどん大きく育っていく。そしてやがて出産の時期を迎える。
出産は陣痛が長引き約2日間かかる難産だった。陣痛にずっと苦しんでいた嫁は最後の方は疲労困憊で、本当に無事子どもが生まれるのかと不安になった記憶がある。
 
 
丸2日にかかる長期戦の末、深夜帯にようやく長男が生まれた。おそらくお腹を痛めて出産した嫁の方は産まれたという強い実感があると思う。しかし僕の方はというと、まる2日間嫁に付き添っており、嫁ほどではないものの疲労困憊でとにかく自分に子どもができたという実感が湧かなかった。
とにかくその日は嫁と一緒にすぐに眠りについたのを覚えている。
 
 
 
ようやく親になった実感を持てたのは次の日の朝、自分の子どもを抱っこさせてもらった時だった。初めて抱っこする小さい僕の息子は、産まれたばかりというのもあり、しわくちゃでまだ誰に似ているかはよくわからない。その抱っこしている子が僕の人差し指を小さな指でギュッと握ってくれた。その瞬間、僕はこの子の親になったんだ、父親になったんだという実感が強く湧いてきた。そしてこの子が僕の容姿に似ていても全然問題ないしどうでもいい問題だと思うことができる様になった。もしこの子が僕の様に容姿で周りに傷つけられる様なことがあれば、他人に傷つけられた経験がある僕がこの子を守ってあげないといけない。
 
 
今まで自分のコンプレックスが子どもに遺伝しないかという悩みも、どんな事があっても僕が守ると思える様になった。そこからは僕のもとに産まれた子どもは不幸になるんじゃないかとまで思っていた僕が、この子のために何ができるのかを色々考える様になった。
初めて子どもを抱っこしたその時から、自分は子どもに「親」にしてもらったのだと思う。
今でも本当に子どもに色々と教えてもらったり、考えるきっかけをもらっている毎日だ。
 
 
 
あれから5年、僕を親にしてくれた子は少し僕に似ているものの、とても可愛らしく、スクスクと育ってくれている。僕も子どもを溺愛しており、自他ともに認めるほどの親バカとなってしまっている。もちろん彼に何かあれば僕ができることは何でもする覚悟は持っている。
 
 
本当に子どもが生まれる前までは、自分のコンプレックスもありしっかりと子育てができるかが不安であった。しかしそんな不安は彼が産まれ抱っこした時に吹き飛んでしまい、彼を育てる責任感が湧き上がってきた。
僕の悩みは小さいかもしれないが、様々な悩みで自分の子をしっかりと愛せるかなんでいる人も多いと思う。そんな人でも僕は子どもが産まれた時にしっかりと愛することができる様になると考えている。大人が頭であれこれ考えるよりも、無事産まれた彼らが色々と感じさせてくれると思うのだ。
 
 
 
 
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2021-04-29 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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