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宝探しは、終わらない


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:今村真緒(ライティング・ゼミ超通信コース)
 
 
できないことではなく、できることに目を向けよう。
特にコロナ禍になって、そんなふうに人々の意識が変わり始めたように思う。
 
未知のウィルスの拡散防止のために、確かにできないことは増えた。
親しい人々との交わりも機会が減り、今まで当たり前と思っていたことに細心の注意を払わなければならなくなった。ソーシャルディスタンシングという名のもとに、人との距離を置くことがデフォルトになってしまった。
コロナウィルスの陽性者が減らなければ、集団生活の象徴のような学校も休校になったり、オンライン授業となったりしてしまう。
 
我が家の娘は、今春大学生になった。せっかく入学したものの、ほぼオンライン授業である。普通ならば、新たな出会いに胸をときめかせるところだろうが、対面式の授業は、週にわずか1コマらしく、多くの出会いのチャンスを得ているとは言い難い。対面式の授業も必須ではなく、オンラインとの選択制だ。
 
けれども、あまり寂しさは感じていないらしい。
「どうして?」と尋ねると、オンラインでも顔を見て会話ができるからと言うのだ。
私はアナログ世代なので、どうしても現実に会って話すほうが、しっかりとコミュニケーションが取れる気がしてしまう。
画面越しのコミュニケーションは、何だか仮の姿のようでリアルに感じないのだ。隣で体温を感じられる距離でこそ、意思の疎通ができるような気がしてならなかったからだ。いくら文明の利器を活用しようとも、生の感情は身近に接してこそ生まれると思い込んでいた。
だから、オンラインで授業と聞いたときは可哀相に思えたのだった。
 
そんな私の意識を、最近変えたものがあった。それは、ラインのビデオ通話だった。いわゆる、テレビ電話のようなものだ。
娘が東京に行ってしまってからは、事あるごとにラインでやり取りをしていた。ビデオ通話の機能を知らないわけではなかったが、何しろリアリティーが命の私には、あまりピンときていなかったのだ。
 
ある日、いつものように娘とラインで連絡しあっていたときのことだ。
私が送ったものに、すぐ既読が付き、すかさず娘からの返信が返ってくる。お互い何往復もそんなことを繰り返しているうちに、娘がこう提案してきた。
「これだったら、実際に話す方が早くない? 顔も見られるから、ビデオ通話使ってみようよ」
ふーん。それなら使ってみてもいいかもしれない。
けれど、顔を見ると余計に会いたくなりそうで、私はちょっと及び腰だった。
 
「どのボタンを押せばいいの?」娘にやり方をリモートで教えてもらいながら操作すると、すぐに画面いっぱいに娘の顔が現れた。
 
「おおーっ! すごいね」
久しぶりに見る娘の顔に、何だか言いようのない感情が湧いた。
何だ。リモートでも、こんなに感動するものなんだ。今まで、「そんなもの」と斜に構えていたことが悔やまれる。食わず嫌いもいいところだ。
 
ビデオ通話は、まさに望むものを映し出す魔法の鏡だった。
実際に顔が見えるのは、こんなにもホッとするものなんだ。しかも、今のスマホは性能がいい。くっきりと、ハッキリと相手の表情を映し出す。たまに電波の調子が悪く会話に時差があっても、そこはご愛嬌。だからといって、遠く離れていることをさほど感じさせないのだ。福岡から東京まで、直線距離で約900キロメートルあるとは思えないほど、ほぼリアルタイムで意思疎通ができるではないか。
 
いい。いいぞ、ビデオ通話!
触れ合える距離でなければ、あまり意味がないと思っていた。
なまじ顔を見れば、会えない寂しさを余計に感じるのではないかと怖かった。
 
ありがとう、テクノロジー。
そして、ビデオ通話を発明してくれた人に、感謝を伝えたくなった。
顔の見えない電話であれば、相手が本当はどう思っているかまで、汲み取ることが難しいこともある。声の調子で大まかなことは察することができるかもしれないが、視覚から入るものとは決定的に説得力が違う。
 
嬉しくなった私は、度々ビデオ通話を使って娘と話すようになった。
会えないからと嘆くより、可能なことを使って、充分に心を満たすことができる。
この目で見る表情で、相手のことを慮ることができるのだ。ついつい長時間の通話になってしまうことも、しばしばだ。
 
思うようにならない制限された中で、どうやってできることを探していくのか?
それは、まるで宝探しのようだ。
宝の地図があるのなら、どこかに宝が眠っているのだろう。
コロナ禍の中であっても、何でも諦めてしまうことはない。今までの方法が通用しなくなったのなら、新たに適した方法が出てくるものだ。
 
宝物は、すぐには見つからないかも知れない。
やはり、辛抱強くならなければならないのかもしれない。
いつまでも我慢ばかりでは辛いが、試行錯誤を繰り返し、進むことを諦めなければ、宝箱は、案外近くにあるのかもしれないと思う。
 
 
 
 
***
 
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2021-05-01 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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