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コンプレックスは光輝く

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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:山﨑 堅斗(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
「どんなコンプレックスでも輝くから、落ち込まないでください」
 
高校時代の恩師、N先生がくれた名言である。
何気ない一言だが、今でも強烈なインパクトとして脳裏に刻まれている。
自己嫌悪で潰れそうになった時に、僕の背中をそっと優しく押してくれる。
 
人は誰しも、大なり小なり様々なコンプレックスを抱えているものだ。
背が小さい、一重まぶた、肥満、オイリー肌、運動音痴、下戸、口下手、赤面症。
本人にとって自覚が大きい程、自己嫌悪に陥りやすい。
 
授業中、思いっきりビンタを喰らった様な衝撃を味わった。
自分の常識がひっくり返るパラダイムシフト。
コンプレックス自体、大きな蓋で覆い隠したくなるような、他人に見せてはいけない「恥部」だと思い続けていた。
しかし、それを堂々と晒しても、スポットライトを浴びることが出来るというのである。むしろチャーミングポイントとして輝きを増していくのだという。
一体どういうことなのだろう。
 
ちなみに、僕自身、コンプレックスまみれの人間である。
日々、自分を他人と比較して、負い目ばかり感じている。敗北を喫している。
僕の切実なコンプレックスは、持ち前の不器用さである。
生活を営んでいく上で、殊更深刻な問題だ。生きるのが嫌になるくらい、どうしようもない。
ハッキリ言って、工作や裁縫のようなハンドメイド的手作業から、職場の人間関係構築術のような社交術全般まで、何もかも壊滅的。とにかく駄目なのだ。
 
今から恥を承知で、僕の不器用っぷりを挙げていこう。次の通りである。
 
・小学校の図画工作の成績が通年「2」。
・技術家庭系の技能も不得意。
・針穴に糸を通せない。
・包丁が握れない。
・玉結びが出来ない。
・運動音痴。
・スタミナが無いため持久走はビリ。
・徒競走もスタートダッシュで遅れる。
・球技が壊滅的に下手(特にサッカーと野球)。
・竹馬と一輪車に乗れない。
・恋愛奥手。
・ペーパードライバー。
・口下手。
・世渡り下手。
 
書き連ねていくうちに、嫌気が差してくる。
これ程までに「不器用である自分」というコンプレックスを強く意識してしまう要因は、人一倍プライドが高いことにあるのだと思う。
どうしても他人と比較してしまう癖をやめることは出来ない。
受験勉強、大学での演劇サークル活動、職場での立ち振る舞いなど、全てのシーンにおいて悩みの種となり、人生の課題となっている。
いや、他人と比べたってしょうがないのは100も承知であるのだが、とにかく何もかも人生が上手く行っている他人に目が向いてしまう。
難関私大に合格して歓声をあげるクラスメイト。路上で堂々と手を繋ぎ、白昼堂々キスをお披露目してくるカップル。演劇サークルの公演後、観客から握手をせがまれ、演技を絶賛され満悦している友達。上司からの信頼が厚く、大口ユーザーを担当している同期。テレビで活躍中の同年代の有名人。
俳優、アスリート、ミュージシャンまで、同い年の英雄たちの活躍がワイドショーで報道されると、羨望の眼差しになる。「すごいなぁ〜」「もっと頑張ってほしいな」と応援しつつ、「それに比べて俺は」と自分自身に対して無力感や虚無感を覚えてしまう。
不器用な僕は、彼らのように「芸」が無いのだから。
 
打ちひしがれている中、N先生の言葉を思い出す。
「コンプレックスは輝く」
負い目を感じるものが輝きを増すとは、どういうことなのか。
 
そうか、そういうことか。
「ここは逆転の発想をしてみよう」ということを、先生は教えてくれたのではないか。
つまりコンプレックスは決して負の側面だけでは無く、むしろポジティブな考え方次第では、長所として生かせるということだ。
事実として自分自身のコンプレックスは、他人から見れば思った程、ネガティブに捉えられない場合もある。
よくある話、当人にとって深刻で切実な死活問題だとしても、取り巻く友人たちにとっては「そんなこと全然気にならないよ」と捉えてくれる場合だってある。
むしろ魅力を持つチャーミングポイントとして捉えられる。
 
そして僕は思いついてしまった。我ながら一芸に恵まれすぎた人材では無いのかと。
考えても見ると、不器用さこそ、神が与えし贈り物とも言える。
単純に、運動神経が悪かったり、器用に折り紙が折れなかったりするのを素直に認めて、自分のダメさ加減を晒していけば、チャーミングな愛されキャラになったのではないかと。
持ち前の不器用さを曝け出し、正面衝突していく姿ほど、魅力でありチャームポイントとなる。不器用でもめげずにチャレンジを諦めない姿は一途だし、そこに人間としての真価や美しさを感じる。
僕はプライドが高すぎる。この高すぎるプライドのせいで成功から遠ざかってしまった。まざまざと失敗や敗北を味わってきた。常に「優越感に浸っていたい」感が先行していた。
生き方として、負い目をとことん面白がれるか。コンプレックスを真に受けることなく、如何にネタに出来るかという姿勢は重要である。
確かに器用な人はカッコいい。しかし不器用さを認め、ありのままの自分を受け止めて肯定する勇気も必要である。
運動が出来ない、女の子からモテない、音痴すぎてバラードが歌えない。
無駄なプライドよりも、不完全な自分の姿を曝け出していく。
そして堂々とネタにして、自分だけのチャーミングポイントとして取り込んでいくことが、自己肯定感が下がった時の、豊かな心の持ち様ではないだろうか。
それが、僕にとってのコンプレックスとの共存方法である。
 
 
 
 
***

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2021-06-12 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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