マインドフルネスは脳内のお掃除係
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記事:晏藤滉子(ライティング・ゼミ超通信コース)
マインドフルネス……聞いた事がある人は多いだろう。
簡単に言えば瞑想のことを表す。
1970年代からアメリカを中心に科学や医学の分野で研究がされ、その効果が実証されている瞑想だ。
瞑想というと、宗教やスピリチュアル系を連想して、近寄りがたい印象を持つかもしれない。ただ近年のように「マインドフルネス」として認知度が上がった理由は、意外な層の人達がその有効性に飛びついたからだ。
マインドフルネスに関心を持ったのは、米国トップクラスのビジネスマン達だったのだ。
結果至上主義のアメリカで成果を上げるには、生産性がキーワードとなる。
集中力、発想力、マルチタスクをこなすなど生産性を上げる為の脳内のコンディションは重要だろう。勿論ストレス対策は必須。そんな需要に対してマインドフルネス瞑想は効果ありと承認されたのだ。
そうなると日本人も当然のように影響を受けるものだ。ちょっと怪しげな瞑想もマインドフルネス瞑想と言葉を変えれば、「出来るビジネスマンの嗜み」になってしまう。何といっても、トップクラスのビジネスマンのお墨付きなのだから。
日本においてはもう一つの伏線があった。
それは「ヨガ」が心と身体のメンテナンスとして、ブームになった経緯があるから。ヨガはある意味身体を動かす瞑想ともいえる。瞑想というものに抵抗がある人は昔よりは確実に少なくなっているのだろう。
実は私も飛びついたひとりだ。
ストレスを軽減する、よく眠れるようになる、心が休まる……という効果に興味津々。自己流の瞑想に飽き足らず、瞑想教室に通ったくらいだった。
瞑想を深堀して気づいたことは、瞑想に正解はなく流派や指導者によって微妙にやり方が違うということ。呼吸を深くすることに注視する方法もあれば、ただ静かに頭の中を無にしようとする方法もある。共通するのは、頭の中の雑多なおしゃべり、過去の記憶、未来の不安をかわし、「今ここ」に意識を集中させること。これが最大の目的なのだ。そして大切なことは毎日の日課にすること。気が向いた時だけでは効果は期待できないらしい。
心と身体を瞑想に慣らすこと。そこから、私の夜のルーティンに10分間の瞑想が加わり、100日間瞑想と付き合うこととなった。
始めはぎこちなかった瞑想も続ければ次第に馴染んでくる。
私なりの気づきや発見も見つかった。
私の毎日のマインドフルネス瞑想は……。
深い呼吸をする事によって、「今ここ」に集中していく。
鼻から静かに息を吸って、口からゆっくり吐くを繰り返す。
呼吸に集中する方法にたどり着いたのは、湧き上がる思考を回避する為だった。
瞑想で躓く原因として、脳内に浮かぶ思考や感情に翻弄されてしまうということが上げられる。ある意味これは生理現象のようなものだ。頭の中を無にしようとすればするほど、色んな思いや記憶が湧いてくる。
仕方がないといっても……それでは「今ここ」からズレてしまう。
湧き上がる思考や感情への対処は、それを膨らませないことだ。
「お腹が空いた」という想いが湧き上がった時、「パスタを食べよう」とか「あの店に行こう」とか、その言葉を膨らませないことが一番の得策だ。
「お腹が空いた」という言葉を察知したら、それが脳内を通り過ぎるのを放っておく。相手にしない、構わない。瞑想中には、それは沢山の思考が湧き上がってくる。それらをシャボン玉のようにイメージし、漂うがまま消えるがままを、ただ眺めていく……追いかけないことだ。
100日間瞑想を続けてみて……。
仕事の生産性が急に上がったという事は残念ながら起こらなかった。
そうは言っても、瞑想をした後は寝つきがよくなったし、熟睡しやすい。
焦りや不安などの得体の分からない感情に翻弄されることも少なくなった。
そして瞑想が終わり目を開けた時、視界は何故だか鮮明でいつもの空間なのに
美しく見える。ただ瞑想後にアイデアとか閃きがタイミング良く降りてくるのは何とも不思議だった。
また、継続したからこそ気づいたこともある。
私も含め現代人は皆多忙であり情報過多、その処理作業に脳内はフル稼働している。当然疲労困憊し動きも鈍くなる。スマホやPCで例えてみよう。一時的なデータや履歴はキャッシュと表現されている。定期的にキャッシュを削除しなければ、キャッシュは増え続け動作は重たくなってしまうものだ。
現代人の脳内もキャッシュがパンパンに詰まっているようなものだ。
過去の記憶、将来の不安……瞑想時に浮かんでは消える頭の中のお喋りは、
脳内キャッシュなのだろう。そこから離れ、削除することで、サクサクと動きは軽やかになる。マインドフルネス瞑想で生産性向上が注目されたのは脳内キャッシュ削除の効果なのだろう。
私はマインドフルネス瞑想を100日続けてみたが、現在は遠ざかっている。
瞑想は私にとっても有効であることは実証済み。ただ、マインドフルネスは瞑想に限らなくても良いのでは……と思うようになった。「今ここ」に集中するのであれば、入浴、筋トレ、料理の同時進行など「今ここ」を体感できるような日常生活の一コマは結構多いものだ。
そう考えると、マインドフルネスは仕事をする大人だけのものではない。
子育て中のママ、受験生、高齢の方だって……「今ここ」を意識的に集中することは誰にでも必要なことだろう。
現在私は瞑想とは離れている。でも脳内キャッシュが増え続け、どうにも動きが重く感じた時には、再びマインドフルネス瞑想を始めてみよう。
何と言っても、マインドフルネスは脳内のお掃除係として優秀なのだから。
***
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