メディアグランプリ

一生に一回の人生。やりたい事をやる人生にしようと思った20代


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:前原正子(ライティング・ライブ福岡会場)
 
 
『あなたの目標は何ですか?』
 
幸せな結婚! 子供のいる幸せな家庭を築く事。一軒家マイホームに住む事。
 
20代女子、誰もが抱きそうな私の目標。
 
看護師として大学病院で働き出した頃。あるセミナーでの質問だった。
 
プライベートな目標は、漠然としていたが少しはあった。仕事の上での目標は、看護師1年目の私にとっては、仕事に慣れる事以外なかった。
 
看護師2年目。仕事にも慣れ、少しずつ余裕が出てきた。
 
看護師3年目。仕事内容は完全に任せてもらえ、新人教育という新たな仕事が増えた。
 
人生の目標は、家の設計図と同じ。設計図なしでも、家は建つが、「あら? ドアが開かない!」という事も起こるかもしれない。人生においては、「こんなはずじゃなかった!」という事態になりかねない。なので、人生の目標はあったほうがよい。という話を聞いて、妙に納得した。
 
直近で目標を持ったのは、高校時代であった。看護師になる目標を持った。体の知識を持ち、看護も知識を持てば、自分だけでなく、大切な家族や周りの方のケアまで出来るのではないかと思ったからである。
 
その目標を持った瞬間、勉強の仕方、大学調査など、行動が変わった。
 
看護師の道へ進み出し6年後、無事に看護師の資格を頂き、看護師として働くことができた。
 
「その後の目標を考える事なく就職したな〜。看護師になる事が目標になってたなぁ〜」と、セミナー聞きながら、ふと思った。看護師になって、何がしたい? という、就職してからの目標がなかったのだ。
 
だからといって、すぐに目標ができるわけでもなく、日常に追われ、考える事すら忘れてしまっていた。そして、またセミナー参加する度に、私の目標って何だろう……の繰り返し。ずっとぼんやり、流れる様に生活していたように思う。
 
そんな時に、出逢った患者さん。私にとって、凄く印象に残っている方である。私の人生観をかえるきっかけをくださった方。
 
私が看護師3年目の時に初めてお会いし、受け持ちをさせて頂いた。
 
Sさん、30代半ば。ご主人と幼稚園児の娘さんと未満児の息子さんの4人家族。仲良く笑顔で、まるでピクニックに来たかの様に楽しそうに入院しに来られた。おそらく、家族にとって初めての場所であり、明るい未来に向かっていく為の通過点だからだろう。乳がんを患い、手術をされ、術後に放射線治療をする目的の入院であった。大きな副作用もなく、無事に治療は終了し、今後外来フォローアップをしていくということで、退院となった。
 
それから、たまに外来受診の際に、病棟まで足を運んでくださり、元気な姿を見せてくださった。
 
翌年、最近来られないなぁと思っていた時に、外来での担当医とばったり出くわした。
 
「Sさん、お元気ですか?」
 
「それが、脳に転移して、入院して治療することになったの」と。
 
看護師的に、聞きたくない話であった。でも、向き合うしかない。Sさんが1番ショックに違いない。
 
今回ばかりは、前回の入院の様に明るい表情、雰囲気はなかった。家族も同様に。今回の入院は、とにかくSさんにとっても、家族にとっても、私たち医療者にとっても辛いもにとなった。観察を要する状態である為に、ナースステーションの側の観察室に入室された。脳の症状や、遂には骨にまで転移し、痛みが強くなり、麻薬での痛みのコントロールも始まった。なかなか自分で動けない状態になっていった。だが、精一杯がんばられていた。
 
面会に来られるご家族。見てられない。なんて声をかけていいのかもわからない。
 
今、一生懸命に家族で生きている。そんなSさんとご家族に、今、看護師である私が出来ることは何か? 一生懸命に私なりに考えた。結果、暖かな春。来年の春を迎えれるか分からない状況と主治医から聞き、とっさに思いついた!
 
病院内で一番綺麗な桜の見える場所へ行くこと。
 
澄み切った空気を肌で感じながら、綺麗な景色を見て子供たちと触れ合える屋上に行くこと。
 
Sさんの体に負担なく、安全にそれらの場所へ行けるように、主治医と綿密に打ち合わせをし、点滴の時間も調整してもらい、師長や先輩看護師にも相談した。一般病棟でここまでする事は珍しい。恐らく、他のスタッフからしたら、こんなに忙しい時に何してるの!? 緩和ケア病棟じゃないんだから! と思われてたに違いない。でも、私はどうしても実行したかった。
 
そして、遂にその日が来た。
 
2回とも天気の良い日で、Sさんの笑顔、ご家族の笑顔が、とにかくキラキラしていて、涙が出そうになった。少しでも、今日という日が、Sさんとご家族にとって、素敵な思い出の日になります様に。そう願いながら、その日の勤務を終えた。
 
Sさんの退院日。今後は、もう治療はなく、外来フォローアップで自宅で過ごすことになった。
 
また元気な姿で会えるかな? いつまで病棟に顔出しに来れるかわからない状況。
 
色んな感情を持ったまま、Sさんとご家族を見送った。
 
それ以来、会うことはなかった。
 
今思えば、Sさんは、私が受け持たせて頂いた患者さんの中で、1番若く、私の年齢に近かった。私と約10歳離れていた。
 
『あなたの目標は何ですか? 5年後、10年後は、何をしていたいですか?』
 
セミナーで聞いた事を思い出す。私の10年後、Sさんの年齢。Sさんは、乳がん発症したのは亡くなる2年前。あっという間に、病状は進行し人生最期を迎えた。
 
Sさんに、大切な事を気付かせて頂いた。
 
Sさん自身、まさか乳がんになるとは、1ミリも思わなかった様に、20代の私もいつ何が起こるか誰にもわからない。今日、明日、1年後、10年後、どうなっているかわからない。ただひとつわかるのは、ストレスが癌の原因であること。そして、当たり前の事だが、人生は一度きりである事。
 
『私は、最期まで健康でいたい! 私は、本当にやりたい事をやりきって最期を迎えたい!』と心の底から強く思った。
 
大好きだった看護師から、心も体も健康にい続けられ、自分の目標を叶えることを全力でサポートしてくれる、お客様にもそれを提供できる仕事に、26歳で転職した。そして、やりたいと思った事は、何でもやってみるようにした。一生涯を通して、本当にやりたい事を見つける為に。
 
40代の今、一生涯を通して本当にやりたい事。『活き活きと健康に生きる人を増やす』その為の場所の提供。これが、今の私の目標だ。
 
 
 
 
***
 
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2021-11-03 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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