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片思い


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記事:児島大河(ライティング・ライブ名古屋会場)
 
 
私は数学が向いていない。
嫌いとか苦手とかそういった話ではない。向いていない。
ここでいう数学とは学校で授業を受けてテストを受ける科目としての数学である。
学問としての数学はむしろ好きである。数字を使って世の中のあらゆることを解き明かすなんてことはとても知的で憧れる。憧れるが、自分がスキルとして使いこなすことはできない。
どれだけ気を付けて問題を解いても計算ミスが無くなることはなく、算数・数学のテストで満点をとった記憶はほとんどない。
小学生ながらに数学(算数)が向いていないと気付いた私は中学校に進学してからは数学に対しての取り組み方を改める。
普段の授業では先生が強調しているポイントのみを覚える。定期テスト対策は、テストをどの先生が作るのかを予想し、自分が予想した先生であればどのような問題を出題するのかを予想するというギャンブルのような手法で定期テストに挑むようになった。
 
そんなこんなで中学生時代の成績は5段階評価のうち多くは3、テストでヤマが当たったときには4がとれていたくらいであった。私の記憶では5をとったことがない。
私は数学が好きだが、私が数学に振り向いてもらえることはこの先もないんだろうな、とぼんやり思っていた。
高校に進学するまでは。
 
私の数学人生に転機が起きたのは高校一年生の最初のテスト以降のことである。最初のテストで赤点をとってからというもの、それ以降は一回も赤点をとることはなくなり、それどころか成績は4もしくは5しかとらなくなった。
中学校時代の自分がこのことを聞いたとしてもきっと信じないだろうと思う。
 
私がこのような変化をとげた理由は2つある。
一つ目は、部活動である。
私は高校生活のあらゆることを甘く見ていたので、入学して初めての定期テストにおいて見事に数学で赤点をとる。
赤点をとると追試を受けないといけないので、放課後の部活動に遅刻する、もしくは参加できないことを部活動の顧問に報告しなければならない。
私は追試の報告している時間が何よりも嫌だった。
というのも、顧問は体育教師だったため、体育教官室という体育科の先生しかいない場所に報告にいく必要があった。体育教官室は、職員室とは空気感が全く異なり、普段の用事でもなるべく入ることを避けたい場所であった。理由は単純で、体育科の先生はほとんどの人が恐いからだ。ただでさえピリピリした空間なのに、赤点の報告をするときなんかは尚更である。他の体育科の先生たちの視線を受けながら顧問の先生に赤点の報告をするのが当時の私にとってはかなりのトラウマになり、数学を勉強するきっかけとなった。
ここまでであれば、赤点をとらない最低限の勉強をしていただけだろうが、もう一つの理由が私の数学の成績を大きく向上させることとなる。
 
そんなもう一つの理由とは、一目惚れである。
私は入学説明会で、一目惚れをした。私の人生において一目惚れをしたのは後にも先にもその時だけである。
 
隣のクラスに一目惚れをしたあの子はいた。何とか接点を見つけることはできないかと苦心をしていた私に思いがけないチャンスが舞い込む。
私の高校の数学の授業は最初の定期テスト以降は2クラス合同で3教室に分かれておこなう形式をとっており、私のクラスとその子がいるクラスが合同で授業をすることになった。
そしてその子は頭が良かったので、絶えず一番上のクラスにいた。
そうなると私がやることは一つである。
私は今までにない勢いで数学を勉強した。一目ぼれ効果によってそれ以降の数学の成績は急上昇、赤点はおろかクラスの中でも好成績をとることができ、一番上のクラスに在籍をすることができた。
運がいいことにその子とはクラスが隣であったり、一緒のクラスだったりしたことで3年間数学の成績は高いままキープされた。
「怒られたくない」
「一目惚れしたあの子を見たい」
そんな不純すぎる動機によって私は数学に振り向いてもらうことができたのである。
 
そこから大学に進学し、部屋の整理をしていたときに高校のときに使っていた数学の問題集が目に留まった。大学の夏休み期間で時間を持て余していた私は数学の問題を解いてみた。
ここで問題をスラスラと解けていたら私の人生の方向は今とは違っていたのかもしれない。思っていた通り、計算はミスばかり、覚えていた公式も全く思い出すことはできず、数学と両想いだった人生は約二年半で終わりを迎えていた。
動機を失った私はいつも通りの数学が向いていない私に戻っていた。
 
一目惚れをしたあの子と両想いになれたかはあなたの想像にお任せする。
 
 
 
 
***
 
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2021-12-08 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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