メディアグランプリ

いい子じゃない。信じている子の所にサンタさんは来てくれる


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:レイ咖(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
いい子にしてれば、きっと報われる。と夢は見ていない。
だけど、いつも忙しそうに、眉間にシワを寄せている大人も、この時期だけは浮足立っているから、自分もソワソワしてしまう。
電飾の光が周りを照らして、しあわせな雰囲気に包まれるこの時期、決まって思い出す子がいる。
何も疑っていない純粋な彼。
私は彼のことがうらやましくて仕方なかったみたいだ。
 
「あ! サンタさん見てるよ」いつも私の話を聞かない子、走り回ってじっとしていられない子も、この時だけは急にお利口になる。どんな罰よりも、サンタさんが来てくれないことの方が、イヤなことなのだ。話を聞いて、手伝いをして、こども達はサンタさんに一生懸命いい子であることをアピールし始める。
 
私が働いている保育園では、サンタさんに向けて、手紙を書くことが習慣になっていた。
「サンタさんに、ここにいるよー! って気付いてもらえるように、書こうね」
1枚ずつ紙を配ると、こども達は欲しいものや、サンタの似顔絵を描き始める。
「せんせー! みて! しんかんせんほしいの」
「さんたさんてって、ひげもじゃもじゃなんだよ」あちこちから声が聞こえる。
「わー、新幹線かっこいいね。サンタさん持ってきてくれるね」
「おひげ長いの、上手に描けてるね」一斉に話しかけてくるこども達、1人ずつに返事をする。全員が書き終えると、園内のポストに入れる。投函口をじっと見つめて手紙を入れる姿は真剣だ。
「サンタさんきっと来てくれるね」少し高めのトーンを意識して話す。気を抜くと、本当は地域のおじさんなんだけど……現実的なことを考えていることが、バレてしまいそうな気がした。
「うん!」こども達は期待に満ち溢れた顔で笑っていた。
 
「さんたさんいつくるんだっけ?」手紙を入れてから、クリスマス会の日程を確認するのが習慣になった。
「あと15回寝たらだよ」
毎日指折り数えて、過ごす。たった15日なのだが、待ちわびているこども達には、あまりにも長いようだった。
「あと10回」
「あと5回」毎日確認し続けて、やっとクリスマス会当日になった。
 
真っ暗な部屋。いつもは「静かにしなさい!」と注意されているこども達が、一切しゃべらない。
シャンシャンシャンという鈴の音と共に、サンタさんが入ってきた。
「わー……」こども達の声がじわっと漏れた。あれだけ楽しみにしていたのに、どうしていいかわからないのか、距離をとって、じっとしている。あの子も口をぽかんと開けて、真剣に見つめている。
彼らの姿を見て、涙が出るのをこらえた。心から信じ切っている姿はキレイ過ぎた。
 
「サンタさんがプレゼントを持ってきてくれました」
進行役の先生の合図で、1人1人プレゼントを受け取る。彼はそろそろとサンタさんに近寄る。
「メリークリスマス」と話しかけられると、肩がギュッと上がっていた。上目づかいで、じーっとサンタさんの顔を眺め、プレゼントを受け取ると
「ありがと……」か細い声でお礼を言った。
 
やっと会えた憧れの人との時間はあっという間に終わってしまう。
「またきてねー」サンタさんを見送り、部屋に戻ると
「ぷれぜんとなんだろー!」と袋を覗く。彼はいつもの調子に戻っていた。
 
楽しそうな彼らの横で、大人はまだ気を抜くことが出来ない。
職員室に漢字で張り紙をする。
”赤い服洗濯中”
服は当然外に干せないので、職員室に干す。夢を壊さないことも、私の重要な仕事なのだ。
 
片づけを終えて、給食を食べた。こども達はサンタさんの話で大盛り上がりしていた。
しばらくすると、彼の様子が違うことに気が付いた。
「どうしたの?」と聞くと
「おなかいたい」と言うので、検温すると微熱があった。
職員室で寝てもらうことにした。
布団を敷き、寝かせると
「ねえ、せんせ」細々と声がする。
「どうしたの?」と聞くと
「わすれちゃってるね」
「ん? 何を?」彼が言いたいことが全く読めない。
「さんたさんくつわすれてるね」
……。
彼の目線の先には空箱があった。ご丁寧に太い字で
”サンタのくつ”と書かれている。慌てて
「ほんとだね。あわてんぼうのサンタさんだったね。園長先生に言って、取りに来てもらわなきゃね」
「さんたさん、くつないのにだいじょうぶかな」彼は心から心配していた。
 
私も子どもの頃は、えんとつがないことを気にして、窓を開けて寝ていた。サンタさんはきっと来てくれる。何も疑うことなく、信じ切っていて、夢を見ている時間はすごく楽しかった。
大人になった今、心から何かを信じて、楽しむことを忘れてしまったような気がした。
経験豊富になった分、色んなことを知り過ぎた。大体は見当がつくようになって、夢見ることが無くなった。楽しみで仕方ないと心が踊ったのは一体いつなんだろう。
サンタの正体がバレるかもしれない。という焦り以上に、彼の言葉が印象に残っているのは、根拠がないこと、分からないことでもいい。心から信じて、楽しい! と思える何かが欲しくて、うらやましかったからなのかもしれない。
 
彼はもう中学1年生になる。
今でもサンタを信じているだろうか。
いい子の彼の所にはきっと、サンタさんが来てくれると私は信じている。
 
 
 
 
***
 
この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

お問い合わせ


■メールでのお問い合わせ:お問い合せフォーム

■各店舗へのお問い合わせ
*天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。


■天狼院書店「東京天狼院」

〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
TEL:03-6914-3618/FAX:03-6914-0168
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
*定休日:木曜日(イベント時臨時営業)


■天狼院書店「福岡天狼院」

〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階
TEL:092-518-7435/FAX:092-518-4149
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00


■天狼院書店「京都天狼院」

〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5
TEL:075-708-3930/FAX:075-708-3931
営業時間:10:00〜22:00


■天狼院書店「Esola池袋店 STYLE for Biz」

〒171-0021 東京都豊島区西池袋1-12-1 Esola池袋2F
営業時間:10:30〜21:30
TEL:03-6914-0167/FAX:03-6914-0168


■天狼院書店「プレイアトレ土浦店」

〒300-0035 茨城県土浦市有明町1-30 プレイアトレ土浦2F
営業時間:9:00~22:00
TEL:029-897-3325



関連記事