会社員のわたしは、休みの日にアルバイトをしてみた
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:izumi(ライティング・ゼミ超通信コース)
自分がしている仕事は、いつまで続けるのだろう? と思ったことはないだろうか。
毎日同じ時間の電車に乗って、会社に行く。
事務の仕事をしているので、出張などがない。
だいたい同じ時間に出勤して、同じ時間に帰宅する。
朝電車に乗っている時や、帰り道にふと思う。
「いつまでこの仕事を、続けるのだろうか?」
今の部署に、事務として配属されて、4年程になる。
会社全体の事務部に所属しているため、たまたま今の部署で仕事をしている。
一定の期間をすぎると、異動になる仕組みだ。
そのため、どこの部署でも、即戦力で働ける能力がいる。
異動は、誰もが不安な気持ちになるだろう。
良い点もある。
もし嫌でも、ずっと同じ部署で働くのではないと思えるからだ。
最近はコロナウィルスの影響で、突然出社できなくなる人もいるためか、頻繁にあった異動も少なくなった。
自粛期間中は、仕事が時間短縮勤務になり、早く帰宅するようになった。
空いた時間を利用して、仕事に関係する資格をとる。
時間はあったため、ひたすら試験の過去問題を解いた。
試験直前にはオンライン講座があり、自宅で勉強するのに不自由はしなかった。
自粛期間中は、どこにも行けなくて、ちょうどよかったのだ。
資格が取れると、仕事の自信につながった。
他の部署に移動して、やっていけるのではないか? と異動希望をだした。
今の部署がいやだという思いもあった。
メンバーをまとめる立場にあったわたしは、仕事の改善を試みたが、うまくいかず、まわりが変わらないなら仕方がないと諦めの気持ちに変わったのだ。
「資格が取れたので、他の部署で働いてみたいです。異動させてください」
直属の上司は異動希望に驚いていた。
わたしは変化を好まず、同じ部署で働くのが希望だと思っていたようだ。
「せっかく資格を取ったのだから、それもいいかもしれませんね」
賛同してくれ、すんなり部署異動が出来ると思っていたが、そうはいかなかった。
一番上の上司に呼び出され、今異動すると残された人が困るからと却下されたのだ。
異動は保留になり、来年位には異動ですかねと曖昧なままになった。
その来年を過ぎても、一向に異動出来る気配がない。
仕事は手を抜かずにしていたが、いつ異動出来るのだろうという考えは消えなかった。
いつもモヤモヤした気持ちで、移動の時を待ちながら働いていた。
そんな時に、お世話になっているカフェのアルバイト募集の呼びかけを見た。
12月の繁忙期のアルバイト募集だ。
カフェは、ランニングのイベント、ママ向けのイベント、手作りの味噌教室、宿泊施設と手広く経営している。
わたしは、ランニングのイベントに参加していた。
味噌教室に通い、手作り味噌の美味しさを教えてもらった時もある。
野菜が盛りだくさんの料理が美味しく、食べても全く罪悪感がない。
ランチのご飯を、雑穀米や玄米、白米から選べるのも魅力的だ。
カフェは、コロナウィルスの影響で、今までと違ったサービス内容になっていると知った。
スイーツの通信販売が人気になっているようだ。
人々の生活や暮らしを、豊かに彩ってくれるスイーツの販売。
スイーツは卵、乳、砂糖を使わずに製造され、心と体に優しい。
グルテンフリーの製品が多く、小麦を使う際には、体に負担のかかりにくい品種の小麦を使用している。
大好な人との大切な時間や、新しい出会いにワクワクするコミュニケーションにぴったりのとっておきのお菓子を提供している。
食べることで後悔ではなく、ハッピーを感じさせるスイーツ。
そんなコンセプトで、たくさんの人にスイーツを届けている。
12月はケーキ屋にとって、1年で最も多くの人がケーキを買い求めてくれるシーズンであり、人手が足りませんと店長が書く文章に心が動いた。
普段と違う仕事を体験すると、気分転換になるかもしれない。
店長のケーキ作りの誠実な思いに共感した。
工場で大量生産されているスイーツと違って、注文が入ると手作りしているケーキだ。
心と体に優しいスイーツはすてきだなあ……。
アルバイト募集の応募に迷いはなかった。
1日だけ、7時間勤務で働くことになった。
「普段事務の仕事をしていて、役にたつのだろうか? 立ち仕事したのはいつだろうか。ちゃんと動けなくて迷惑はかけたくない」
前日まで不安になっていたが、当日の朝はやるしかない! とワクワクする気持ちに変化していった。
事前に、カフェの仕事は見た目に反して、掃除や、洗い物、地味な作業が多いですと案内が来ていたので心構えも出来ている。
わたし以外に2人のアルバイトがいて、3人でお手伝いをすることになった。
はじめに、通信販売で注文がきたケーキの、袋詰め作業をした。
出来上がったケーキを型から取り、ビニール袋にいれる。
落とさないかと、ドキドキした。
わたしが入れたケーキをもう一人が機械でパッキングする。
作業しているすぐ後ろで、スタッフがケーキを作っている。
その姿がテキパキしていてかっこよい。
ドラマの中の、レストランのシーンのようだ。
無駄がない動きをしていた。
スタッフ同士の会話が聞こえる。
「こうやった方が、効率よくない?」
真剣な姿を見ると、絶対に失敗してケーキを落とせない。
慎重に袋づめをした。
袋詰めした後は、ケーキの箱に麻のひもでラッピングする作業をした。
赤い麻のひもで、ケーキの箱をしばり、超蝶結びをする。
手先が器用ではなく、この作業も緊張した。
お店で売っているような、きれいな超蝶結びが出来ないのだ。
種類によっては、二重にリボンをかける。
メッセージカードをひもに通す。
時間がかかっても、丁寧にラッピングした。
その後、ラッピングされたケーキを、段ボールの箱に詰めていく。
気づけば4時間がたっていた。
時間の流れが早かった。
買ってくれた人を想像しながら、リボンを結ぶ。
結びながら、普段買い物をした時に、リボンをくしゃっと雑に捨てていたのを後悔した。
当たり前にある包装は、人が手間暇をかけているのだ。
申し訳なく思い、これからは丁寧にラッピングをあけようと誓った。
ケーキはヴィーガンスイーツだ。
食物アレルギーを持った人が購入する場合もあるだろう。
どんな人がこのスイーツを、待っているのだろうか。
アレルギーがある子供かもしれない。
健康に気を付けている大人の場合もあるな。
クリスマスに、この店のケーキを食べるのを、楽しみにしているだろう。
そう考えると作業が楽しくなっていた。
わたしの作業が、相手の楽しみにつながっていくからだ。
お昼からは、商品発送のためのチェックや、次の日の準備をした。
ケーキの空箱を作る。
ケーキによって入れる箱が違う。
ラッピングのリボンや、ひもも変わってくる。
商品の料金表を入れる場合、入れない場合と、チェックしながら準備する。
その後も、ラッピングのひもをあらかじめ切っておく作業をした。
地味な作業ばかりだが、お手伝いなのだから当然だ。
「いつもと違う仕事は、なんだか楽しいねー」
わたしたちは、楽しんで仕事をしていた。
普段と違う仕事が出来るのは、新鮮だった。
カフェのスタッフは、みんなイキイキしている。
アルバイトの人や社員、何人かいたが、全員の働きぶりが素晴らしかった。
自主的に何をしたらいいか考えて動いている。
どうやったら効率的に、作業出来るかを相談していた。
堂々とした働きぶりに、だれがアルバイトで、社員なのか分からなかった位だ。
指示を待つ姿勢ではなく、自ら動く。
わたしたちにも、的確に指示を出してくれる。
話しを聞くと、スタッフはアレルギーがある人もいて、自分の体験から体に優しいスイーツ作りを学びたいという思いがあるようだ。
ただお金をかせぐのではなく、目的があって働いている。
一生懸命に働くカフェのスタッフと一緒に働くと、こちらまでパワーがもらえる。
すごいなと感心したが、会社での自分の働き方を考えると、恥ずかしくなった。
正反対の働きかたをしていたからだ。
働くことを、楽しんでいなかった。
体によいお菓子を作れるようになりたいと働くのと、お金をもらうために、指示されたことだけをするのは違う。
同じことをしても、何を目的として働くかで、心構えが変わる。
やりがいも変わってくる。
わたしは、異動できるまで、仕事をなんとかやり過ごすという姿勢だった。
いつ移動できるのだろうと、頭の片隅にある考え。
まわりには、その姿勢が伝わっているだろう。
わたしが異動を希望しているのは、知っているのだから。
もし、何が出来るのかを考えて、まわりと一緒に行動できたら?
みんなの行動も変わってくるはずだ。
まわりが変わらないから、異動したいと考えるのではなく、自分が変わる。
同僚と一緒に相談して解決方法を考える。
いままでは、みんなをまとめなければいけないと、自分で何でも解決しようと考えていた。
まわりも、わたしが何とかしてくれると、動かなくなっていた。
もしかしたらわたしの行動は、同僚の積極的な発言や行動を、奪っていたのではないか。
今までの発想は変えて、まわりと一緒に考えて、行動してみよう。
出来ない時は、頼っていいのだ。
そうすると、同じ仕事でも、違った見方ができるのではないか。
たった1日のカフェのお手伝いは、貴重な体験になった。
カフェのアルバイトはおしゃれなものではなく、想像以上に地味な作業だった。
だが裏方ではなく、メイン作業のように感じていた。
まるで自分が物語の主人公のように。
どの作業をしても、ケーキを楽しみにしている人につながる。
わたしが作った箱に入ったケーキが、注文した人に届くと考えると嬉しい。
現金でもらうお給料は、久しぶりだ。
直接手渡されたお金の重みは、ずっしりとしていた。
休みの日に働くのは疲れたが、帰りの電車に乗っている時、いつもの会社帰りの疲れとは比べ物にならない充実感が得られた。
長年働いていて、忘れていた大切なこと思い出させてくれた。
同じ仕事をしても、どういう気持ちでするかで、取り組みかたが変わる。
もうちょっとがんばってみよう。
いつもは下を向いて歩いていた帰り道。
空を見上げると、夜空が大きく広がっていて、同じ道を歩くのでも、下を向くのと、上を見るのでは全く景色が変わると気づいた。
働いたご褒美に買ったのは、カフェの豆腐生チョコレートケーキ。
ケーキは、てんさい糖、豆乳、豆腐、ココアなど体に優しい食材で作られている。
作ってくれたスタッフの姿を、想像して食べてみた。
一口食べると、しっとりとしたチョコレートのような甘味が、口のなかにふわっと広がった。
体に優しい食材が、わたしの細胞に元気をくれる。
明日からがんばれる希望の味がした。
***
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