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おしゃれになりたきゃ、ジムへ行け


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:藤本摩理(ライティング・ゼミ集中コース)
 
 
「今日の藤本さんと長谷川さん、ペアルック?」
 
仕事を終えて私服に着替え、事務所の前に出てきたときの同僚の一言がこれ。私は長谷川さんと思わず顔を見合わせた。
長谷川さんは私の上司。五十代のおじさまだ。中肉中背、娘が二人いる典型的な「お父さん」。本日のスタイルは迷彩柄の白Tシャツ、足元はカーキのチノパン、黒いバッグ。
私、藤本は二十代女性。本日のスタイルは白いTシャツ、カーキのジャケット、黒いパンツと黒いリュック。カラーリングが見事に丸かぶりだった。
 
同僚たちがくすくす笑って、「今度合コン行こう」「服一緒に買いに行きましょ」と私をからかう。彼女たちとしては「いじり」のつもりなのだろうが、こちらとしてはたまったものではない。私はそそくさと自転車にまたがり、職場を後にした。
 
白、黒、カーキ、ベージュ、茶色、紺色。
私のクローゼットはいつも6色。モノトーンとアースカラー。カラーリングが毎日おじさんと毎日丸かぶりでも、からかわれても、知ったこっちゃない。これが一番落ち着くのだ。
 
なのに。
 
クローゼットを思い浮かべて、私は一瞬ソワソワした。
私のクローゼットに、今まで存在したことのないピンクがちょっとだけ存在しているのだ。それも鮮やかなショッキングピンクが。
 
きっかけは、始めたばかりのジム通いだった。
毎日同僚から地味だの彼氏を作れだの言われ放題だった私には、変身願望があった。断捨離をしたり、その日あったことを寝る前に三つ書いてみたり、ほんのちょっとの努力をしては諦める日々が続いていた。
そんなとき「筋肉は裏切らない」というワードがブームになった。それに触発されて「筋トレ系インフルエンサー」をTwitterでフォローしていた私は、そのツイートを目にするたびに感化されて、「体を変えれば心も変わるかも」と淡い希望を持つようになった。
自宅と最寄駅のちょうど真ん中に総合スポーツジムがあったこともあり、月会費二ヶ月無料キャンペーンをやっていたのに後押しされ、私は晴れてジムの会員となった。
 
ところが。
スポーツウエアときたら、揃いも揃って露出が多い。しかも私の定番カラーがレディースだとほぼ存在せず、やっと黒いウエアを見つけたと思ったら、思いっきりショッキングピンクのラインがサイドに入っている。それでも見つけた中ではそのピンクなウエアが一番地味で、ボディラインも隠してくれそうだったから、仕方なく買ってきたというわけだ。
 
ピンクのラインのウエアを着て、私はこそこそとトレーニングに励んだ。ランニングマシンで走ると、同僚たちにからかわれた時の嫌な気持ちがスッと消えていった。
 
そんなことを繰り返すうち、ウエアのまとわりつきが気になるようになった。ジャージはよく伸びるけれど、走る足にまとわりついてたまらない。
周りを見ると女性はタイツにショートパンツで走っている人が多かったから、私もそれを買うことにした。
足のラインがもろに見えるのに恥じらいつつも、ピンクのラインが入った黒いランニングタイツを履いて走ってみたら、見事に走りやすくなった。またピンクのラインの黒い服が1着増えた。
 
ジムはあちこちに大きな鏡がある場所だ。自分のフォームを鏡でチェックしながらトレーニングをする。脚のラインもあらわなタイツを履いた自分を、鏡越しに恥じらいながら見るうちに周りの人も自然に目に入り……私は、自分の地味さにやっと気がついた。
 
そこはジムで、周りは全員スポーツウエアを着ている。スポーツウエアだから、周りは原色だらけだ。真っ赤なウエアに真っ白なスポーツブランドのロゴ。そんな人がゴロゴロいる中で、「まっくろくろすけ」な私はむしろ初心者感丸出しで浮いていた。
あんなに恥じらっていたピンクのラインも、何の助けにもなっていなかった。
 
新しいウエアが欲しくなった。それも、とびきりド派手なやつが。
 
足回りの動きにくさはタイツで解消されていたから、ひまわりみたいな真っ黄色のタンクトップを買った。脇が大きく開いていて、スポーツブラをわざと見せるタイプのもの。肩や背中のトレーニングが格段にやりやすくなった。
ぴったりしたスポーツウエアでボディラインを出すのに慣れ、派手な色を着るのにも慣れてきたら、私服の選び方も変わり始めた。
 
今まで着たことがないラズベリーピンクのニットを着て出勤したら、同僚たちの目がまん丸になった。
マスタードイエローのスカートを履いて更衣室から出て行ったら、「彼氏でもできたのか」と噂になった。
 
肩と背中のトレーニングで邪魔になるポニーテールを切った頃から、デパートで丁寧に接客してもらえるようになり、久しぶりに会った友人は「誰?!」と目をまん丸にした。その友人が連絡したのか、大学卒業以来会っていなかった男友達から突然連絡が来たりもした。
体重が落ちたとか、そういうわけではない。もともと私は体力仕事だったから、細身で筋肉質で、体型にさして変わりはなかった。変わったのは服と髪型だけ。
 
今日の私のスタイリングは、スモーキーブルーのニットに、パールのネックレス。シルバーのロングスカートに、ネイビーのコート。ヒールのかかとをカツカツ鳴らして闊歩する。もう誰にも地味とは言わせない。
 
筋肉は裏切らないし、ジムには人を変える力がある。
おしゃれになりたきゃ、ジムへ行け。
たとえ体は変わらなくとも、ウエア一着で人は変わる。
 
 
 
 
***
 
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2021-12-31 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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