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介護は愛の滑走路

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:垂水明美(ライティング・ライブ大阪会場)
 
 
母の介護を始めたのは、先月末のことでした。
母は、長期間、入退院を繰り返し、リハビリ病院や、介護施設でお世話になっていました。最初は、転倒したことが原因で、足腰や、四肢へのケガや捻挫、打撲だったんのですが、最後の転倒では、頭部打撲で、クモ膜下水腫を起こしました。
高齢者は、本当に周りが気を付けてみていてやらないと、ちょっとしたことが、大きな打撲や転倒につながってしまいます。
小さなこども達と変わらないと、感じます。こちらの気持ちが、ちょっと緩むと、本当にびっくりするくらい、すぐに動作や、体調に現れます。できなくなってくる動作が増えてくると、何度も何度も、繰り返して、やらないといけませんし、忍耐力が試されているようにも感じます。
そんな介護の際には、無理せずに、何でも一人でやろうとしないことが大切だといわれます。全くその通りなのですが、ちょっとしたことは「ええい、もうやっちゃえ~」とばかりに小分けしないといけない食事を、おおざっぱに大きな一口にしてしまったり……そうすると、嚥下できなくて、誤嚥性肺炎を起こしたりします。本当に、ていねいにしないといけないことが多いのに、時々、手抜きをしてしまうのですが、それは、即座に相手の状態を変えてしまいます。
かねてより、母の最期の看取りは自宅でやろうと決めていましたので、今回、帰宅が許され、お世話になっていた介護施設から自宅に戻ってくることになりました。
まず最初に戻ってくるということが決まったら、さっそく、在宅介護のために、ケアマネージャーさんが、看護師さんとヘルパーさんを派遣してくださいました。身の回りのことは、お下のケアも含めて、ヘルパーさんが担当してくださいます。そして1日2回、看護師さんは、血圧や、体温、呼吸などを見てくださるという手厚い看護です。そういった一連の手あての様子を家族は共に見守れることができるのです。このようなコロナ禍で病院では、面会は一切できず、病人は寂しい思いをすることになり、そのような心の状態は病状に良い影響は与えないでしょうから、在宅看護、介護は今後も必要度は、高くなると思います。
私が最も、在宅介護でよかったなと感じたことは、何名かの方が、交代で1日に何度も訪問してくださったことです。そして、その際、看護師の方は、母の手当てをしてくださる際に、今ここに生き生きした母があたかもいるかのように、呼びかけて、笑顔で話しかけてくださったことです。看護を受ける母を一人の人として、敬意を持って対応してくださるのです。もちろん、患者のケアをなさる看護師さんにとってはそれは当然のことでしょうけれども……。その様子を見て、聞いている私は、母が元気でそこにいるかのように感じたのです。
それは、子供のころ読んだ聖書に書かれていたことを思い起こさせました。
私の家は生粋の仏教徒でしたが、なぜか私は毎週日曜には日曜学校へ出かけて、聖書の読み聞かせを楽しみにしていました。その聖書に、イェスさまが、眼しいの人に話しかける場面があります。イェスさまは、あたかもその人は、目が見えているかのように話しかけるのです。そうすると、その人は目が見えるようになっている。というくだりです。子供のころの記憶ですから、ちょっと違っているかもしれませんが、私は、最初、「へぇ、それはイェス様やからやん」と思っていたのですが……。その後、人は誰も皆、完全な自分、理想の自分として対応されるとその姿になろうとするのだ。ということを学びました。
看護師さんは母に笑顔で話しかけ、「暖かくなったら、車いすでお庭を見ましょう。次は、こんなことも、あんなこともしましょうね~」と対話してくださいました。
にこやかに朗らかに、看護師さん介護士さん2人そろった時は、笑い声が絶えませんでした。私もその輪に加わりました。母は、血色もよくなり、点滴の合間にアイスクリームを少し頂くこともありました。
介護の現場は、大変なことが多くて暗くなりがちと思っていた私にとって、朗らかでにぎやか、明るい空気は本当に何よりの救いでした。
母は、この家に養女にきて、父と結婚し、後継ぎとして縁をつないできました。いろいろなことがあった、でも、一生懸命生きたそんな家に帰ってくることができて、うれしかったのでしょう、満足することができたのでしょう。
帰宅して、3週間後の2月14日、愛の日に天に召されました。
皆に見守られ、愛する家族に囲まれて旅立ちました。
病状は、安定していたので、突然の容態変化に、皆、驚きましたが、最後の時間は、本当に穏やかで、安らかで、幸せな空間時間だったと思います。
介護・看護の方たちに明るく、朗らかに支えていただいていたことが大きかったと思います。皆さんには感謝の気持ちでいっぱいです。
介護は、人生の最期の時間、そのかけがえのない時を愛で満たし、次のステージ、天国へと導く続く介護。それは、愛の滑走路なのではないかと思いました。
 
 
 
 
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