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作文はご遠慮します ~小学校4年生で人生終わったと作文を拒否した私~


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:わこ(ライティング・ライブ東京会場)
 
 
「お話を書くの楽しいね」と、忙しい母に話したことを覚えている。
当時、両親が忙しく、帰宅しても相手をしてくれなかったことが多かった。だが何かしら一言は、食事をしながら母に伝えていたのだ。
 
本を読まない私が、小学校に入学したあたりから、お話を自分で作って書くようになった。
きっかけは些細なことだ。
小学校1年生になった時、学校の先生から作文の時間に褒められて発表されたのがきっかけだった。
 
母がいまだに言うのだが、姉二人は読書家だった。
小さなころから、渡された本を静かに読んでいたそうだ。
私はというと、落ち着きのない子で本を渡しても、姉達のようにじっとして本を読んでいなかったそうだ。
渡した絵本は、絵だけ見て「読んだよ~」といっていたとか。
話の内容を聞いても、覚えておらず、「この絵がね」と話を逸らすくらい、「本を読まない」子供だった。
 
そんな私が、学校の先生に1度作文を褒められた。気分が舞い上がるほど有頂天になった。作文の時間は、また褒められたくて、必死で書いていたことを思い出した。
それはまるで「パブロフの犬」のようだ。
 
褒められるという餌が欲しくて、作文を書く。ヨダレまではたらさないが、時間も忘れるほど書き続け、次の授業で読まれるのが楽しみで仕方なかった。
今思えば、なんとかわいそうな子供だ。条件反射なのか。
 
それからというもの2年生、3年生と順調に作文を書き続け、必ず、みんなの前で発表してもらえることとなり、どこか自分を見失っていた。
作文を読まれるたびに、周りから尊敬のまなざし。
私は「できる子」と勘違いし始めていた。
先生からは、文章も上手でわかりやすいですねと毎回褒められた。この言葉が、さらに私に魔法をかけた。
今でいえば、某テレビ番組の「私失敗しないので」といいそうになる。
 
家での私は劣等生だった。
姉達は母からよく褒められていたが、私は何をしても褒められたことがなかった。
その反動なのか、学校での私は天下をとっていた。
 
周りにいないだろうか、子供とか大人とか関係なく、ちょっと人よりできることがあると、できていない人を下に見る感じの人って。
今ならそんな人を目の前にしたら「は~? 何様ですか?」というところだが、当時の私は、子供ながらにそんな、残念な子供だった。
 
作文は、作文用紙に書いて先生へ提出していた。
今の時代はどうなのだろう。
学校にパソコンやiPadが普及しているようだが、作文もWordで提出なのだろうか。
小学校のお子さんがいる方に聞いてみたいものだ。
 
私が4年生になった時のことだった。
いつものように、先生から選ばれた人がみんなの前で作文を読まれる。
私は、今日も読まれるだろうと、ちょっと顎を突き出してどや顔をしていた。
 
「はいそれでは、今から3人の作文を読みますね」と先生が言う。
その中に私も入っていた。
「今日も読まれる」と、自慢げな顔をした。
 
さあ次は私の番だ!
心が弾む。
先生が読み始める。
 
ん? 何かおかしい……
周りがクスクス笑い始めた。
何が起こった?
落ち着け私。
先生の話をよ~く聞いてみる。
 
え? うそでしょ!
自分の耳を疑った。
 
先生は、普通に何気ない顔で私の作文を読みながら、間違った漢字をそのまま読み続けていた。
「音楽の強勉が好きで、算数の強勉が嫌いで……」
なんと「勉強」を「強勉」と書いていた。
私は、全く気にもせず、全ての「勉強」という漢字を「強勉」と書いていたのだった。
 
なんというばかもの!
なんという慌て者!
 
なぜ見直さなかったのか。
間違って覚えていたのか?
思い込みで書いたのか……
 
今となっては、なぜ漢字を間違ったのかは覚えていない。
しかし、間違った漢字を「いい作文だから」といいながら普通読みますか?
確かに間違ったのは、私が悪いけど、そこ1回読んで間違ってたとか言いながら、次はちゃんと読んでくれませんか?
その時の私は、瞬時にこんなことを考えていた。
 
先生は、読み終えた後、「まあ漢字は間違っていたけどいい作文でしたね」と、私の作文の良いところを言ってくれていたようだが、私には、そんなことはもう耳に入ってこない。
それよりも、恥ずかしいやら悔しいやら。
 
子供ながらに、「これからどうしたらいいのか。もう二度と作文なんか書かない!」と、人生が終わったかのように頭を抱え、しばらく気持ちが落ち込んでいた。
 
家に帰ると、父から珍しく「今日はどうだった? 作文」と聞かれた。
「父よ! 何も聞かないでくれ」そう心の中で呟いた。
 
聞かないでほしいと思っても、話してしまうのが小学生の私だ。
悔しかったこともあり、これまでのことを父に話をした。
父からは「まあ、お前が悪いな。ちゃんと漢字を書いていなかったこと。これまで通り大丈夫だと思っていたこと。それが原因じゃね~か?」
「物事順調な時程、油断はするな。油断した時、できると天狗になった時、必ず、神様は見てるぞ。こいつには、少し、お灸をすえようと今回のことがあったとしたらどうだ?
お前は、謙虚さが足りなかったんじゃないか? 感謝の気持ちが足りなかったんじゃないか?」それだけ言って、居間から静かに立ち去った。
 
悔しかった。すべてお見通しだ。
何も言えず、その場で泣き続けた。
 
それからある日、また作文の時間だ、
気が重い。書く気がしない。
まだ、自分の中で、前回のことが残っていたようだった。
チャイムが鳴る。いつも作文用紙5枚以上は書いていたが、今日は1枚も書ききれなかった。その後も、作文の時間は嫌いになった。
自分の中で、大きな扉が閉まっていた。
 
こんな苦い経験があったのにもかかわらず、歳を重ねるにつれて「自分の生きてきた証を残したい」という気持ちがでてきた。また、お話を書きたい気持ちが出てきたのだ。
 
そうはいっても、SNSで何かを投稿するのは嫌だった。
また、誰かに何かを言われてしまう……
そんな苦い記憶が思い出される。
子供の頃の苦い記憶は、意外に厄介なものだ。
 
たまたま、友人のご主人が天狗院書店の「ライティング・ゼミ」を始めていた。
Facebookで投稿されているそれを見て、あまりにも楽しそうだったので、私も書いてみたくなった。一度しまった扉だが、再び開けるきっかけができた。
 
もう、以前のように天狗になる私はいない。
父のいう通り、謙虚さと感謝は忘れない。
だから神様からの許可が出たのかもしれない。
書くことは私に必要なのだと。
 
 
 
 
***
 
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2022-02-23 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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