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どうやら私は、背中に「岩」を背負って生きてきたらしい


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:北江りな(ライティング・ライブ東京会場)
 
 
「大丈夫ですか? 肩甲骨、岩のようですよ?」
 
どうやら私は、背中に「岩」を背負って生きてきたらしい。
 
 
デスクワークが多い私は、最近肩が凝って仕方がない。
首を回すとゴギゴギッと聞いたことのないような音がする。
 
決め手は、寝ていないのに、寝違えたようになったことだ。
少し遠いものを取るときに、腕を出来るだけ伸ばしたら、
なぜか首がピキッとなり、曲げられなくなった。
 
これはもう重症かもしれない……。
あまりマッサージや整体に行ったことのない私だったが、
意を決して、近くの整体を予約した。
 
色んな口コミを見て、悩みに悩んだ。
整体を選ぶ基準がよく分からない。
スッキリしました、とか、気持ちよかった、というよくある口コミの中に、
自分の身体の状態を、丁寧に説明してくれました。
という口コミを見つけた。
 
まずは自分の身体がどんな状態なのか教えてほしい。と、その整体に行くことに決めた。
 
雑居ビルの1フロア。
ガタガタした古ぼけたエレベーターに乗り込んだ。
その時点で、少し不安だ。
 
整体の入り口で、靴を脱ぐ。
動きやすい服装に、着替える。
そして、いよいよ、整える時間がやってきた。
 
私の前に現れた整体師さんは、長身の男性。
そして、マッチョ。
おぉぉぉぉ……。
半袖から隠しきれない筋肉が、すごい主張をしている。
こりゃ、痛そうだな……。
緊張してきた。
 
「じゃあまず、楽にして立ってください」
強そうな筋肉とは反対に、優しく声をかけられた。
 
横向きの写真や、後ろからの写真を撮られる。
そして、整体師の方が、おもむろに人体模型を持ってきた。
理科室にあるような、筋肉や骨がむき出しになった、例の人形だ。
 
「今撮った写真を、見てください。右肩が下がっているが分かりますか?」
 
おぉ……。確かに、下がっている。
まっすぐ立っているつもりが、右に傾いている。
 
「いつも荷物は右に持ってたりします?」
 
その通り。
 
「あと、普段、足組んだりしてませんか?」
 
そ、その通りだ。
 
下手な占い師より当たっている。
私の身体はお見通しのようだ。
 
その占い師ならぬ整体師は、突然人体模型をあちこちに曲げ始めた。
もうぐにゃぐにゃだ。
骨盤は捻じれ、肩は下がり、首は前に出ている。
 
「これが、今の身体の状態です」
 
おぉ、すごい衝撃。
人体模型って、実は姿勢がとても良かったんだな、と感心する。
いや、そこじゃない。今、感心しているところは、そこじゃない。
私の身体が、こんなにあり得ないほど、ねじれている、という事だ。
 
驚くほど姿勢の悪い人体模型を、自分の身体に重ね合わせる。
デスクワーク、スマホ、癖。
色々な生活習慣が、私の身体をここまで悪くしたようだ。
 
 
「じゃあ、始めていきますね。痛かったら、痛いって言ってください」
 
そして始まった整体は、もう、相当痛かった。
 
うううぅ……
い、痛すぎる……
 
人は、痛すぎると、声がでない。
 
「あのぅ、痛いです……」
 
声にならない声を絞り切って、ようやく伝えた。
 
「まあ、すごい凝ってますからねぇ。
大丈夫ですか? 肩甲骨、岩のようですよ?」
 
こうして私は両肩に「岩」を背負っていたことが分かった。
 
そりゃ岩を背負っていたら、ゴギゴギッと鳴るのも分かる。
もう人間じゃないよ、それ。
 
痛みに耐えながら、マスクの下の顔が真っ赤になるのが分かる。
しばらくすると、もう1人の整体師がやってきた。
なになに? ふたりがかりで、何をする気だ?
マッチョに囲まれ、痛すぎて、もう思考停止だ。
 
「最初は驚くかもしれませんが、安心してくださいねー」
と、突然、後ろから抱え込まれた。
次の瞬間、ゴリゴリゴリッ! と、身体から聞いたことのない音。
これは私の身体か!?
不思議と痛くはなかったが、何かを踏みつぶしたような、この世のものとは思えないような音が、私の首のあたりから聞こえた。
 
「これ、どういうことですか!?」
驚きすぎて、我も忘れて、マッチョ2人に問いかける。
 
「大丈夫ですよ、首を元の場所に戻しただけです」
 
おぉ……。
私の首は、ここまでしないと元に戻らないのか……。
自分の身体の歪みを、悲しいほど実感した。
 
時を忘れて、されるがままの私だったが、
どうやら1時間経ったらしく、整体は終了した。
 
今まで24時間365日、一緒にいた身体なのに、
今日だけは、自分のものでは無いみたいだった。
 
最後に改めて写真を撮ると、
右に傾いていた肩は、少し上がっていて、左右対称に近づいていた。
目に見える変化、これはすごい。
 
肩を回してみる。
両肩の「岩」は、「小石」ぐらいに感じられた。
なんなら羽根だって生えた気がする。
それぐらい、歴然とした違いだった。
 
自分の身体の癖を直すには、一朝一夕では難しいらしい。
整体に行った直後は戻っても、段々と自分の楽な姿勢へなってしまう、とのことだ。
これから何度か通う事になるだろう。
日常生活で、仕事をしていても、歩いていても、あの曲げられた無残な人体模型を思い出すようになった。
その度に、すっと背筋が伸びる。
自分の身体を知ることは、想像以上に大事だった。
これからも、自分の身体と上手く付き合っていこう、と、生えかけの羽根を伸ばしながら、まっすぐ歩きはじめた。
 
 
 
 
***
 
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