私のヒーローは、今日も髪をなびかせていく
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:小西 裕美(ライティング・ゼミNEO)
私は彼女たちが大好きだ。
今日も勇ましく働いて、ビール片手にきっとこう叫んでいる。
「ああ、もうハゲそうーーー!!!」と。
尊敬する友人たちは、なぜか新入社員の頃から、中間管理職ばりの責任感を持っている。
あの仕事は誰がやるの? と思ったら、もう身体がそっちの方に動いてしまい、誰が受けてもいいような、宙ぶらりんなボールを、片っ端から全部レシーブしていく。
彼女たちには未来を見る力があるらしく、それをやらないとあとですごく困る自分たちの姿が見えるそうだ。
そうやってコート内をパワフルに動き回っているうちに、ふと気がつく。
あれとこれって、実はムダじゃない? と。
気づいてしまったからには、無視できない。
一直線にガガガーーーっとブルドーザーのように仕事を進めていく。
そうなれば、もう彼女たちを止めることはできない。
飛んできたボールを片っ端から打ち返していく。
彼女たちに任せた業務はどんどんと前に進んでいくから、着々と社内で成り上がっていく。
そんな彼女たちを見て、私は「今日も元気にハゲに行ってんなあ…!」と思う。
決して悪口ではなく賛辞であり、他にぴったりの表現が見つからないのだ。
私は彼女たちをとても尊敬している。
もう何年も前に、ソフトバンクの孫正義さんが、Twitterのフォロワーに「髪の毛の後退度がハゲしい」と言われ、そのお返しに「髪の毛が後退しているのではない。私が前進しているのである」とツイートしたが、まさにそんな感じだ。
どう見ても、彼女たちは自分から進んでハゲに行っているとしか思えない、そんな勢いを感じる働きっぷりだ。
彼女たちの敵はとても多く、いつも目の前に立ちはだかる。
一番多い敵は「じゃがいも」らしい。
フライドポテトにも、ポテトサラダにも、肉じゃがにもなれるのに、もっと工夫次第で美味しくなれるのに、自分からは変わろうとしない受け身の人たちのことだ。
そっとして置いても害がないと思いきや、放置しすぎると毒の芽を生やしてくるからややこしい。
ひとつずつ、丁寧に芽を摘んでいくしかない。
そして、やっかいなのが「妖怪ハゲたがり」だ。
私もこんなに頑張っているんだけど! というアピールがすごい。
確かに努力家なんだけど、この妖怪はいろいろバランスを崩してしまうのが特徴で、ストレスで体調不良になったり、承認欲求をこじらせたり、「ああ、もうハゲそう」と漏らす言葉が本気すぎて覇気がない。
少しメンヘラ要素もあるので、要注意だ。
彼女たちが、いまとても手を焼いている敵は「ごみ屋敷」というらしい。
目上の人に多いらしく、とにかく物事を決めることができない。
判断するのに必要な材料がどれかもわからないから、とにかくボールがそこに溜まっていく。
とはいえ、決定権はこの人にあるものだから、待つしかない。
勝手にボールを漁って持っていくものなら、すんごく怒られてしまう。
こんな敵と日々、戦っているのだから、本当にあっぱれだ。
しかし、そんな彼女たちだって、完全無欠のヒーローではない。
ひとりの女の子だったりする。
「ちょっと聞いてよー!」
と大きな声でビールジョッキを片手に語り出すのは、いつも一緒に働く同僚たちのことだ。
本当に楽しく働けるようになっているのか、自分が相手に嫌な思いをさせていないか、すごく気にしている。
ドラッカーが書いた有名な本「マネジメント」では、「リーダーは尊敬されるが、必ずしも好かれるとは限らない」と書かれている。
時には嫌われ役になってでも、仕事を前に進める真摯さについて書かれているが、ちょっと彼女たちとは違うな、と思う。
どちらも素晴らしいリーダーだけど、私はあたたかみを感じる彼女たちと一緒に仕事がしたい。
普段は強そうに見えるから気づかないが、少しのことでもしっかりと傷ついている。
実はHPが残り5ぐらいになっていることもザラにある。
彼女たちは、誰よりもたくさんの挑戦をするからこそ、自分ひとりでは小さなことしかできないことをよく知っている。
だから、自分ができることには全力で取り組むし、周囲との関係も大事にする。
決してトップダウンではないからこそ、みんなで並走できるように、誰かの分まで自分が走る。
そんな覚悟がある。
そして走りすぎて、ふと立ち止まって言う言葉が「もう、ハゲそう」(笑)
眉毛をハの字にしながら言うその言葉は、どこか冒険を楽しそうな雰囲気もはらんでいる。
***
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