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病院に現れた幽霊はおかげさま!


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:上田聡代(ライティング・ゼミ4月コース)
 
 
外来待合室に幽霊がでると、入院患者の間で話題になっていた。深夜1時半時頃、ジュースを買いに行った男性が、女の幽霊の泣き声を聞いたらしい。怖いもの見たさか、入院生活がつまらないのか、数人で夜中に幽霊偵察ツアーも組まれたりしていた。
 
幽霊の声を聞いた人もいるし聞かなかった人もいる。これがまた、霊感があるとかないとかの話題となり盛り上がったりしていた。普段、病院勤務をしていると、この手の話を耳にすることが多く気にすることはなかったが、入院患者だった私は、少し気味悪さを感じながら話の輪に交じっていた。そう、私は入院患者だったのだ。
 
入院生活が始まった日の早朝、目が覚めると激しい頭痛、めまいで立ち上がれない。明らかに異変を感じた。救急車を呼ぶことにためらいがあった私は様子をみようとしたが、症状は一向に良くならない。一人暮らしだった私は悩みながらも助けを求める為に、勇気を出して「119」を押した。電話対応の女性のテキパキとした質問に答えていった。救急車が向かいます、という言葉を聞いて「助かった」と力が抜けた。
 
ところがすぐに、悠長にしている場合でないことに気づいた。救急隊員を迎え入れるために、マンション1階ロビー入り口を開錠しなければならない。歩けなかったので、四つん這いで開錠ボタンがついているインターホン下まで移動し、救急車のサイレンが近づいてくるのを待った。ピンポーン! 立ち上がれない私は、待っていましたとばかりに、思いっきりジャンプ! 開錠ボタンを押し、第一関門を突破。
 
第二関門は玄関の鍵。目をつぶりながら四つん這いで玄関までたどり着いた頃には、ブザーが鳴っていた。力を振り絞り、手をのばして開錠成功! その場に倒れこんだ。待ちに待った救急隊員の第一声は、「大丈夫ですか? ご主人はどちらですか?」でした。関西育ちの私は、「おいおい、ご主人いたら玄関で倒れてへんわ」と、心の中で突っ込みをいれながら、実際はか細い声で「一人です」と答えた。その後の救急隊員は、優しく頼もしく、安心して何もかも委ねた。
 
救急外来に搬送され、医師の診察が静かに終わる。穏やかな口調の医師は、「今から詳しい検査をしますけど、おそらく小さい脳梗塞をおこしていると思いますので、このまま入院になります」と説明してくれた。脳梗塞に大きいとか小さいとかある? と思いながらも、めまいと頭痛が激しく誰とも話す気になれずに黙っていた。
 
入院が決まり、検査の嵐が始まる。超音波検査で、喉周辺を細かく映し出しては写真を撮る。超音波の機械からでてきた写真が床に着くくらい何枚も何枚も。この時点で、なにかあると思ったけれど、検査技師が疑われる病名などを答えないことは知っていたので、黙っていた。検査終了後、突然内分泌内科から呼び出し。車椅子で診察室まで行き、初めて会う女医と挨拶を交わす。気さくな女医は、超音波検査結果の説明をはじめた。甲状腺に腫瘍が映ったこと、甲状腺の場合、90%が良性腫瘍だけど、一応来週調べましょう! と明るく話をされた。検査の方法を聞き、「え? 喉に針刺すのですか?」と怪訝な顔になる。
 
検査当日。意識があるので全部見える。喉元を布で覆われ消毒されながら極度の緊張。喉を針が貫通! 怖い! と思っている間に終了した。検査結果がわかるまでには数日かかることを聞いて病室に戻る。
 
それから数日、検査結果当日がやってきた。悪性腫瘍だった。頭が真っ白、まさにそのような感覚。何を話しているかわからないのに、「ハイ。ハイ」と平静を装い返事して終わった。病室のベッドまで何も言わずに付き添ってくれた看護師長は、そっとカーテンを閉めて一人にしてくれた。その日の夜から眠れなくなってしまった。
 
消灯後、飲み物を買いにいくふりをして、誰もいない外来に向かった。真っ暗な中、待合室の長椅子に移動すると、初めて涙がでてきた。「なんで? 何にも悪いことしてないのに。頑張ってきたのに。なんで?」思いっきり声を出して泣いた。
 
歩けない悔しさ、悪性腫瘍への怒り。誰を責めることもできないが涙がでてくる。椅子を持ちながら歩く練習を始める。「歩ける! 歩ける!」と自分を励まし、一歩一歩。よろけては椅子に座り、うなるような声で叫ぶ。叫ぶと、悪性腫瘍という言葉が頭をよぎる。真っ暗な中で一人になれるその場所だけが、涙を流せる場所だった。そんな夜が続いた。
 
ある日、警備員に見つかり、「あなた、もしかして毎日?」「すみません」誤った時に、ハッと気づいた。もしかして、あの女の幽霊って私? 冷静になった私は、その日を最後に夜に出かけることはやめた。
 
幽霊の噂はいつのまにかなくなっていた。おそらく、自分が幽霊だったことを考えると、久しぶりに笑うことができた。それに、その幽霊を少し怖いと自分でも思っていたことを考えると、もっと笑ってスッキリした。笑いを取りもどした私は、病気を受け入れ、前向きに治療を受けることができた。
 
あの時、一緒に入院していた患者の皆さま、怖がらせてしまってごめんなさい。幽霊になったおかげで病気を受け入れ治療し、今でもこうして笑うことができる日々を送れています。
 
 
 
 
***
 
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2022-05-04 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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