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リバウンドにかけて、何とかやりきったバスケットボール選手時代について。


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:平田台(ライティング・ライブ福岡会場)
 
 
9年間も、一生懸命に取り組んだスポーツ。
それなのに、自分のポジションはどこだったのか? を訊かれて……答えられなかった。
「背が高いから、センター?」そう導かれて、ようやく「そうです! センターでした!」と答えられたのだ。
 
正直なことを言うと、良い思い出は少なくて、あまり想いだしたくない記憶でもある。
だから、ポジションの名前すら、すぐに答えられなかったのかもしれない。
 
バスケットボールを始めたのは、小学校4年生。
5つ上の姉が先にミニバスに入っていたことがきっかけだった。土日になると、いつもと違う服装で練習に行く姿が羨ましくて、時々着る青と黄色のユニフォーム姿も格好良くて、キラキラして見えたのだ。スタートできる4年生になり、迷わず、ミニバスを始めた。
 
体を動かすことは好きで、苦手意識もなく、背も高い方で、背の順で並ぶと後ろから数えた方が早かった。レギュラー選手とまではいかないが、試合には半々くらいの割合で出場できていた。
この時の悩みといえば、「ウテ、打てー!」と言われて、自分のあだ名「ウテ」で呼ばれているのか? はたまた、シュートを打てと言われているのか? 時々分からなくなることだった。今、想うと、とてもかわいい悩みだ。
チームは市内で10ほどのチームの中で、良い時で3位になるくらい。練習もキツかった記憶はない。週末の、楽しいクラブ活動だった。
 
中学に入っても、「バスケを続けたい」と自然に想い、バスケ部に入部した。身長はぐんぐんと伸び、中学2年生までの2年間で10センチくらい上乗せの170センチ近くなっていた。背の高さはバスケでは、大きな武器である。先輩方に交じり、レギュラーとして試合に出るようになった。当時は、もちろん、先輩に対する礼儀正しは、必ず守るべきこととして、教え込まれていた。自分でも、想いだすと驚きを隠せないのだが、先輩にパスを出すときには、心ばかりのお辞儀をしてしまうほど、先輩の存在は大きなものだった。
気遣いばかりして疲れるのでは? と思われるかもしれないが、楽しいこともあった。
バスケには「応援歌」のようなものが付き物で、「試合開始直後の歌」、「オフェンス中の歌」、などシーンごとに、各チームオリジナルのものがあった。「ゴー ゴー レッツゴー レッツゴー 〇〇中! イーケーイケイケ イケイケ 台!」といった感じである。ベンチと、出場選手が一体になれる感じが、大好きだった。
そして、引退最後の大会前となると、1~2年生で、特別な「3年生への感謝&応援歌」を作り、猛特訓して大会前日に先輩に披露するという、なんとも微笑ましい風習があったのだ。
 
そんな最後の素敵な思い出もあり、高校でもバスケをしたいと、進学先を決めるまでは、想っていた。
 
実は、背の高さを買われて、近所の強豪校から「ウチに来ませんか?」という有り難いお声もいただいた。
進学先を決める中で、「高校では、英語を勉強する!」そう決めた私は、外国語学科のある高校を選んだ。おそらく、自宅から通える県立高校のなかで最も遠く、片道2時間をかけて通うこととなった。
「バスケは卒業だ」そう心に決めたはずだった。部活紹介を見るまでは。
 
新入生オリエンテーションで、各部の先輩方が、部活紹介をしてくれた。
衝撃だった。
バスケ部の先輩方が、「一緒に、バスケをしましょう! 待ってまーす!」と最高に素敵な笑顔で、体育館のステージから呼びかけてくれた。
そして、なんともリズミカルで、明るく楽しい「新入生歓迎ソング」を披露してくれたのだった。
 
気付いたら、部活の見学に行き、入部を決めていた。
 
練習は、小学校、中学校とは比べ物にならないほどの量だった。特に持久力強化メニューが「もう無理だ」というレベルのものばかりで、毎日練習についていくのに必死だった。
1km走を3本とか、体育館を50往復するとか……。今の私には到底、無理である。
つい力を抜いてしまって、監督から「走れ! ブター!」と叫ばれたこともある。
今となれば笑い話だが、当時は結構ショックを受けていた。
それでも頑張れたのは、先輩方がいつも前向きだったこと。そして、時々弱音を言い合える同学年がいたからだ。
 
同学年に、スター選手がいた。2年生の途中までは。
中学校時代、全国大会に出るようなチームでレギュラー選手だった。「台がいるから、県大会ベスト8はいけると思う!」具体的な目標を、度々語ってくれた。
練習では、私の知らない技術や戦術を、時にはノートを使って丁寧に教えてくれた。
彼女の家に泊まらせてもらい、お母様が作ってくれた、「あんトースト」の味は、あったかくて、本当においしかった。尊敬する、素敵なチームメイトだったのだ。
 
2年生に上がってすぐの頃。彼女は妊娠をした。打ち明けられたのは、彼女が手術を終えた後だった。体調が優れないことを理由に練習を休んでいたので、ずっと気にはなっていたが、学校も休んでいたこともあり、噂で彼女の状況を知った。
 
彼女と、話ができなくなった。「帰ってきてほしい。一緒にバスケがしたい。もっともっと教えて欲しい」そう言いたかったのに、伝えられなかった。周りの目を気にしていたのかもしれない、「相談して欲しかった」という気持ちが強く、どこかで裏切られたような気持になっていたのかもしれない。
彼女とは、学校で会っても、挨拶をする程度になってしまった。
 
彼女がチームを離れてから、自分がチームの中心となった。
どこかで、彼女の分も頑張る、何があってもやりきる、そう思っていた。
 
必死だった。
チームメイトに厳しい言葉もたくさん言ったし、傷つけてしまった後輩もいると思う。
何とかして、成績を残せるチームにしたかった。
チームの皆も、必死に練習に、試合に臨んでくれていのは、目の色で感じていた。
 
2年生の冬に地区選抜選手として選ばれて、埼玉県西部地区代表チームに参加した。県内の強豪選手が集まる大会。地区別の選抜チームで戦うのだ。
自分より背の高い選手ばかり、スキルも1つ、2つ上のレベルであるこことは、すぐに実感した。それでも、必死に食らいつこうと、自主練習の量を増やした。
 
逆効果だったのか、シュートが全然入らなくなった。
最終学年を前に、初めて「スランプ」に陥った。
体のバランスも崩れていて、縁石の上を歩くと、まっすぐ歩けなくて、すぐに落ちてしまうほどだった。
悔しかった。シュートを決められないセンター選手なんて、使い物にならない。
 
だが、選抜の試合に出るチャンスはもらえた。「シュートがだめなら、リバウンド。ゴールからこぼれたボールは必ず拾って、別の選手に託そう」そう決めて、最後まで戦いぬいた。
 
選抜の試合を終えて、3年生春の県大会。
スランプから抜けられないままだった。
シュートの練習以上に、リバウンドの練習を繰り返していた。
 
後輩たちもぐんぐん成長してくれて、ベスト16までいくことができた。
 
高校でも、引退前の感謝&応援ソングがあり、嬉しさと寂しさで大泣きしてしまった。
 
振り返ると、色々な出来事があった。
精神的にも肉体的にも厳しいことは度々。当時の顔は、さながら「鬼の形相」である。
 
その中にも、あたたかな応援ソング、一緒に頑張った仲間たちの存在がある。
 
今は、それぞれの場所で、それぞれの生き方で前を向いていると信じている。
 
ちょっと顔をしかめてしまう思い出もあるけれど、素敵な出逢いを、思い出をくれたバスケットボールに、感謝である!
 
 
 
 
***
 
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2022-05-31 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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