メディアグランプリ

ライティングゼミの課題で自分をさらけ出したら、苦手を打ち明け合う、新しい親子関係が始まった。

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:森本裕子(ライティング・ライブ東京会場)
 
 
「そんな事があったんだね〜知らなかったよ」
 
両親は、私が書いた文章を読んでそう言ってくれる事がある。
ライティングゼミの課題で書いている文章は、読んでくれるどんな人にも何かメリットを感じてもらえる様に意識して書いているが、読者が親ともなると、娘の近況や内面が知れて、文章から読み取れる情報量がかなり割増になるらしい。
 
私の苦手な事、それをどうやって克服したかの話。
 
そんなテーマでライティングゼミの課題を書く事が多いのだか、私の父は、娘が書いた記事が天狼院書店のホームページに掲載されると、必ず感想文をメールで送ってくれる。
 
その感想文を読むと、「やっぱりな〜」と「そうだったの?」という納得と驚きの気持ちが一気に押し寄せる時がある。というのも、父も私と同じ様な事に悩み、苦手を感じ、克服する人生を送っていたのだ。
 
私が高校2年生の時に数学に挫折し、理数系の受験を諦めた話を書いた時は、父も高校の時に物理が分からなくなり、理系から文系に進路変更した。という事を教えてくれた。
 
私が仕事で、上司不在の中手探りで商品開発を進めた話を書いた時は、父も若い頃急な転勤があり、前任者から何の引き継ぎもなく仕事をしていた時がある。という事を教えてくれた。
 
親子は変な所で似ているね。と締めくくられた父の感想文を読んでいると、
良く知っているようで実はあまり知らなかった、父の進路で挫折した話や、仕事で苦労した話を、すごく楽しく読んでいる自分に気づいた。
 
「やっぱり親子なんだなー」
「えっお父さんもそうだったの?」
 
照れくささと嬉しさが入り混じったような親近感が、ムクムクと湧いてきた。
 
そしてある事を思い出した。それは、父に言われて心に残っている2つの言葉である。
 
1つ目は、就職先が決まった時に言われた
「入社したら3年は、今の仕事を続けた方がいい」という言葉。
 
どんな理由でそう言ってくれたのか分かっていた訳ではないし、父の教えを守ったからという訳でもないのだが、私は20年以上同じ会社に勤める事になる。
 
その会社の役員になる事を父に報告した時に
「お世話になった会社に感謝して、引き受けるのもいいんじゃないか」という2つ目の言葉をもらった。
 
2つの言葉は仕事をする上での礼儀みたいな所があり、ちょっと昭和のオジサンぽい発言でもある(あくまで、ぽいという私見)。言われたその時は、正直大して気にとめてなかったのだが、父の感想文を読んだ今はちょっと分かる。
 
いつもおおらかでユーモアのある私の父も、日々悩みながら勉強し、働いてきたんだ。そして悩みや苦手な事や困り事がいっぱいあったのだ。そしてそれらを1つ1つ乗り越えてきた。働ける喜びや、仲間の大切さ、職場への感謝を体験してきたからこそ、娘に伝えられる言葉があるんだなと。
 
そう思うと、昭和のオジサンぽい発言も、急に説得力が増してきて、親子の価値観のつながりみたいなものを感じるのであった。
 
改めて思う。
 
これは、ライティングゼミの課題を書くようになったおかげかもしれない。
長年一緒にいる親子だからといって、心の中を全てさらけ出して共有できている訳ではない。
楽しかった面白かった思い出とか、好きなものや得意な事が似ているね、といった話はよくするし盛り上がるけれど、子どもの私は知らなかった、両親の悩みや苦手や困りごと、そんな人間臭いリアルな話ももっと知りたい。
 
そうだ!
 
ライティングゼミの課題で、自分の内面や苦い経験を思いっきりさらけ出して文章にするのは、どうだろう。
 
もちろん個人に対して書く文章じゃないし、書くことはサービスだ、って何回も何回も口にしながら毎週書いている。それでも、読者のその先に、感想文をくれる父の存在が微かにチラッと見えると、私の文章を書く力もどんどん付いていくし、離れて暮らす両親と気持ちを伝え合うきっかけにもなる。
 
何より、悩みや苦手や困り事、その事とどうやって向き合ってきたのか、克服したのかを、振り返って文章にするのは、自分の気持ちの整理にもつながるし、その時に得た気付きや学びを、読者の方に伝える事もできる。
 
「実は、お父さんもね……」
そうやってお互いの苦手を打ち明け合えるのは、お互い年を重ねてきた今だからこそ味わえる、新しい親子関係の始まりだなと思う。


2022-06-15 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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