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トゥモロービューティ 家族への愛情


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記事:萩原りえこ(ライティング・ゼミ4月コース)
 
 
そのバラは、純白。そして花びらは、まるでウエディングドレスの裾のよう。ひらひらとした薄いフリルの花びらを持つ。
『ジューンブライドの花嫁さんの手元を飾ったら素敵だろうな』
生花市場でその花を初めて見た瞬間、私はその花に夢中になった。
 
 
今、日本の市場で切り花として流通するバラは、およそ600品種。
皆さんはこの数が多いと思うだろうか? それとも意外と少ないと思われるだろうか?
そのラインナップは、目まぐるしく変わる。新たに品種改良で生み出され話題となるバラも多いが、その陰で人知れずそっと市場から姿を消してしまう品種も後を絶たない。
花の中でも特にバラは、人を惹き付ける魅力を持っているからかその傾向が強い。
需要と供給の関係で、作られなくなる花がある。それは仕方のないことなのか?
 
 
鑑賞するためのバラが大きな飛躍を遂げたのは、19世紀の初めのこと。かのナポレオンの最初の妻、皇妃ジョセフィーヌは、パリ郊外のマルメゾン宮殿の庭園に250種ものバラを植えていたそうだ。ジョセフィーヌは、この庭園をヨーロッパでも最も美しい庭園にすると夢中になっていた。彼女のバラコレクション熱は、尋常なものではなく、当時の有名な園芸家たちを囲い込み、ガーデンデザイナー、庭師、そして園芸研究家までをも雇い入れた。この頃のバラの育種や改良を押し進めたことがその後のバラの品種改良に拍車がかかる発端となったようだ。この時まさに世界中の富を集めた大航海時代。その時を同じくしたことから収集は、中国、中近東へと拡大する。そして我が日本からもフランスへバラが輸入されたそうだからその熱心さは、相当なものだったことが伺い知れる。
 
しかしながら、その時に改良された品種で現在も残っているバラはどのくらいあるのだろうか?
 
 
人々に翻弄された花は、バラだけではない。
カスミソウもその1つに挙げられる。
かつてその時代の大スターであった山口百恵さんが結婚直前の引退コンサートでこのカスミソウの花を髪飾りに使った。
テレビ映像の効果は、絶大だった。百恵さんの引退のニュースと同時にこのカスミソウを髪に付けた映像が日本中に映し出される。カスミソウはその結果大ブームになった。私も幼心に百恵さんの付けた真っ白な小花の髪飾りが素敵だったのをよく覚えている。
しかし、その昭和後半に花業界に旋風を起こしたカスミソウもバブルの崩壊とともにいつしかブームは過ぎ去り、その生産数も減少の一途をたどった。そして、ついに一時は、誰も使わなくなった花とまで言われてしまったのだ。
 
大流行の揺り戻しは大きい。何度もテレビで繰り返されたおかげで昭和の香りが色濃く残ってしまったせいなのか、花店経営者やフラワーデザイナーに“時代遅れ”のレッテルを張られてしまった時期があった。中には、
「うちの店には、カスミソウは絶対置かない」と豪語していた花店があったほどなのだ。
 
 
農水省の資料によると、現在、国内の花の生産者は、10年前と比べ半減している。それも年々減少傾向で推移している。花農業従事者の年齢も、45歳未満は8%なのに比べて全体の7割以上が60歳以上の高齢者で占められている。
 
野菜やフルーツと比べ、食べることと直結しない。花は、人が生きるためには直接必要ではない。そのためか、一般的に多くの人が花も野菜やフルーツと同じ農産物であることを気にしていないのではないかと時折心配になる。
 
 
群馬県前橋市は、国内のバラの産地の1つだ。ここに1件のバラ農園がある。その名前は、横堀バラ園。
冒頭の純白のバラ、その名も『トゥモロービューティ』は、この農園が生まれ故郷だ。そしてこちらの横堀さんこそがこの名前の名付け親である。
 
私にとって花はどれも同じであるが、この新種のバラの名前の由来が特別気になった。調べてみると、お嬢さんの名前が“明日美さん”というそうだ。
品種改良は、幾年もの歳月をかけると聞いている。毎日毎日愛情の気を配り、手塩にかける。子育てとまったく同じなのだ。横堀さんにとっては、バラも我が子同然。『トゥモロービューティ』の名前がその証である。
 
 
さて時代遅れのカスミソウがその後どうなったか、気になるのではないだろうか?
時代は繰り返すものである。そう、昭和レトロブームがやってきたのだ!
昭和を知らない10代20代の若者が、目新しいものとして注目しだしたのである。そして
近年のドライフラワーの人気と同調して、その人気が再びやってきた。
カスミソウの完全なリバイバルとなった。
 
花文化は、ファッションと同じ。流行として繰り返される傾向にある。そして、流行に流されているうちに残念ながら無くなってしまうものもある。
でもどうか一度考えて欲しい。
鑑賞するための花も農産物なのだ。その美しい花たちの向こう側には、私たちが楽しむために手間暇かけて下さっている生産者さんがいるのである。農産物であるがゆえに、流行が復活したとしてもすぐに大量生産をすることができない。
 
 
今現在もジョセフィーヌが愛したマルメゾン宮殿ではバラ園を見学することができる。
しかしながら、そのバラは、当時のものとは異なり、植栽されている品種も当時とは全く違うバラ達が咲き誇るバラ園となっている。
 
 
 
 
参考資料:「花きの現状について」農林水産省 令和4年2月
***
 
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2022-06-16 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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