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もういちど、ゴルフをやってみたくなった

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:種村聡子(ライティング・ゼミ6月コース)
 
 
先日、久しぶりにゴルフをした。
 
不思議なことに、それがとても楽しかった。誰にも言ったことはなかったけれど、以前は、まったく楽しいと思えなかったのだ。
以前と比べて上手になったわけでもないのに、なぜ、あんなに楽しかったのだろう。
 
いまから10年ほど前、わたしは、夫とふたりでゴルフスクールへ通っていた。一年間通ったのち、夫はそのまま趣味のひとつとなり、友人や職場のお仲間とゴルフを楽しむようになったが、わたしはスクール終了とともに、ゴルフから遠ざかっていた。
 
理由は妊娠、出産をしたから。
コース練習も受講し、ゴルフ道具を一式揃えたタイミングだった。
わたしのゴルフセットは使われることがないまま、ホコリを被り、居心地わるそうに部屋の片隅に置かれていた。何年も。
 
それから月日は経って、小学4年生の息子がゴルフスクールへ通い始めた。ある週末、夫と息子が練習のためにゴルフ場へ行くという。そのとき、わたしも一緒にどうかと誘われた。
 
いつもだったら、つかの間の自分時間ができた! と、ひとりで留守番をするのだが、なぜか、そのときは一緒に行こうと思った。いや、なぜか、一緒に行ったほうがよい、と思ったのだ。
 
そのゴルフ場は、564ヤード・PAR18・全6ホールのショートコース。
 
いわゆるドレスコードは無く、ジーパンとスニーカーでもOK、という気軽さながら、グリーンまわりのアプローチやパット、バンカーショットまであって本格的。池まであるし、川沿いの斜面はボールが転がりやすそうだった。
 
「家族だけだから大丈夫だよ」
夫の言葉にも励まされ、10年ぶりにゴルフクラブを振ってみた。
 
安定の夫のショット、スクールでの練習の成果で思いがけず飛びすぎちゃった息子のショットのあと、わたしの見事な空振り……。
 
「10年振りだもん、そんなもんだよ」と夫は笑って、「小さく刻んでもいいから、とりあえず前へ進もう」と促してくれた。
 
斜面を転がりそうなボールを足で止めたり、もう無理だと思ったら手でボールを持って打ちやすい位置に移動させたりと、前後のチームに迷惑をかけなければ、なんでもありのファミリールール。
 
あさっての方向に飛んでしまったボールは2個なくなってしまったけれど、最後の6ホール目では勘を取り戻し、よい当たりもでてきた。
 
ほんの40分程のラウンドを終えた頃には、心地よい疲労感とともに、なんだか気持ちも清々しく、スッキリしていた。
 
なんでゴルフから遠ざかってしまったのだろう。
やろうと思ったら、小さな子どもがいても出来たはずなのに。
 
そういえば、10年前にレッスンに通っていた頃、全然楽しくなかったことを思い出した。
 
ゴルフを始めるきっかけは、ゴルフ場併設のホテルで、カッコよくゴルフウェアを身につけたお洒落な女性を見かけたことだった。わたしもあんな可愛いゴルフウェアを着て、華麗にスイングしたいわ。旅行先でゴルフするって、素敵だわ。
 
そう、完全にミーハー根性でゴルフを始めたのだった。
 
可愛く、かっこよく、素敵に、のイメージが先行しすぎて、実質が伴わない。筋金入りの運動オンチだから、週一回のレッスンでは全く上達しない。ボールは止まっているのに当たらない。自分から言い出して習い始めたものの、途中からあまりレッスンにも気持ちが入らなくなっていった。
 
あの頃、というか、いままで、わたしはなんでも完全に準備してからでないと前へ進むことができなかった。
 
ゴルフ用語を覚えなくちゃ。
プレーの際のマナーを身につけなくちゃ。
100ヤード飛ばせるようにならなくちゃ。
 
一緒にプレーする人や、パーティの前後のチームの迷惑にならないように。もたもたプレーして自分が原因の渋滞を起こしてしまわないように。そんなことを考えていたら、ゴルフ自体が、全然楽しくなくなっていったのだ。
 
それなのに。
 
先日のわたしのゴルフは、ひどいものだった。ヘロヘロのプレーもさる事ながら、格好もひどかった。出発の直前まで掃除をしていた、そのままの、着の身着のまま。唯一のお洒落ポイントのキャスケットすら、帽子を忘れた息子に取られてしまい、見かねた夫がニット帽を貸してくれたけど、サイズが合ってない。でも、そんなことはまったく気にならなくなっていた。
 
夫曰く、転がっていくボールを「仔犬のように」追いかけているとき、なんだかとっても楽しかった。
 
できなくっちゃ、やらなくっちゃ、でがんじがらめにしていたのは自分だけ。
間違えたって、できなくたって、やり直せばいい。
失敗したら、アハハって笑って、おしまい!
 
ひどいプレーも、ひどい格好も、誰も気にしないし笑わない。気にしているのは自分だけだった。すると、あんなに苦手意識があったゴルフが、楽しくなってきた。
 
10年間もゴルフから遠ざかっていて、もったいないことをしたな、と思うと同時に、やっと気がつくことができてよかった、とも思った。家族でゴルフをしなければ、きっとこのまま気づかずに過ごしてしまうところだった。
 
また、ショートコースへ行きたいな、と家族に話したら、夫と子どもは驚いたように、でもちょっと困ったように言った。
 
「いいね、また一緒に行こう。でも、お母さんはもうちょっとまっすぐ打てるように、練習してから行こうね!」
 
なるほど、確かに、いまのままだとボールがいくつあっても足りないものね。練習は必要だね。でも、その練習すらも楽しそうでわくわくする。週末の楽しみが、またひとつ増えてしまった。
 
 
 
 
***
 
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