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メディアグランプリ

うつ病を経てピュアになった話


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:Keiko.S(ライティング・ゼミ6月コース)

「テスト前になると、急に普段やらない部屋の片付けとかし始めて、その流れでマンガとか読み返しちゃうじゃない? あれって、結局は言い訳づくりの行動らしいよ」

試験の答案が続々と返却された日の帰り道、友人が唐突に切り出す。

「え? どういうこと? しちゃだめ! って禁止されるとやりたくなっちゃう、天邪鬼現象じゃないの?」

私は前のめりで尋ねる。

「まあ、それもあるかもしれないけどね。でも、そもそも自分に自信がないから、全力を尽くせないらしい」

「自信がないから頑張るんじゃなくて?」

「そういう人もいるけど、もし本気で取り組んで、その結果がダメだとショックだから、あえて手を抜くというか、他のことをして寄り道して、ダメな結果に対して、全力で準備してないから当然だ! って自分に言い訳するの」

「本気でやったら、私だってもっとできるはず! みたいな?」

「そうそう。だから私たち、試験前から予防線を張ってるんだね。落ち込まないようにさ」

目から鱗。
多感な高校生には誘惑が多い。いざ、勉強机に向かわなければならない時期に突入すると、周りのものがますます魅力的に目に映る。それだけのことだと思っていた。
しかし、この問題は思った以上に根が深そうだ。
彼女の話が真実なら、無意識のうちにとんでもない護身術を身に付けてしまったらしい。
そうまでして守りたいものとはいったい……

友人と別れた後も、その話がずっと頭から離れずにいた。
どうにも引っかかることがあったのだ。

自信のない私は、全力で取り組んだにも関わらず良い結果を出せないとダメージが大きいから、あえて手加減することで、本気を出せばもっとできたのに……という緩衝材的な余地を残している、ということになる。
でも、本当に自信がないなら、結果が振るわなくてもそこまでショックを受けることはないのでは?
どうせ私なんてダメだから。ほらやっぱりダメだった。という具合に。
それなのに、悪い結果に必死で目を背けたくなるのは、どうしてなのだろう?

これは恋愛などにも言えることかもしれない。
気になる人がいて、どうにか距離を縮めたい。けれども、真っ向からアピールをすることで、振られたり嫌われたりするのが怖いから、自分からはアクションを起こせない。そればかりか、好意を悟られないようあえて冷たく接してしまう……そんな経験がある人はいないだろうか。
誰だって傷つきたくはないし、まっすぐに気持ちを伝えるのは怖いことでもある。当たって砕けろと言われても、それはなかなかできることではなかったりする。

もっと頑張りたいのに……
この頑張りたいという気持ちと同じぐらいの強さで行動に移せたらいいのに……
そうやってかなりのジレンマに苛まれていたことを今でもはっきり覚えている。

当時の私は、家に寝に帰るような生活だった。
学校、部活、塾、習い事、趣味、友達との遊びの約束……
スケジュール帳をびっしり埋めることに喜びを感じていた。
今は今しかないのだと、見えない何かに急き立てられるようにして暮らしていた。
そんな生活に充実感を覚えていた一方で、無理が祟ったのだと思う。

翌年、高校二年生の春。
私は学校に行けなくなった。
病院の診断結果は、うつ病。

それからというもの、生活はがらりと変わってしまった。
学校を半年間も休んだ。
時間を惜しむように行動していたのが一転、部屋に引きこもるようになった。
そして猫並みに寝た。
別人のようだと我ながらに思った。

とてもつらい時期だったけれど、一つだけ、救われた点がある。
「もっともっと頑張らなくてはならない!」「こういう自分にならなければならない!」という強迫観念のようなものから解放されたことだ。
強い理想を描いてきた筆がバキッと折れ、そんな現状を受け入れがたくも、どこか気が楽になったのは事実だった。
何事にも頑張れない自分に対して落ち込んでしまうと同時に、「もうどうにでもなれ」という諦めの境地。

当時の私はおそらく、胸を張れるような自信はないけれども、心の奥底で多少なりとも、本当の自分はこの程度の存在ではないはず、という自負があったのだ。
至らぬ結果によって、そんなプライドを傷つけられないよう、あえて手を抜くことで、ダメだったのは自分の実力ではなく、単に準備不足のせいだと思いたかった。
そうやって必死に自身のプライドを守ってきた気がする。

それが、うつ病を経験したことによって、理想とは程遠い生活を余儀なくされ、落ちるところまで落ちた。
自己肯定感も地を這い、今まで大事に抱えていたプライドは粉々に砕け散った。
それはいまだに砕けたままだ。
けれども、言い方を変えると、自身に対する驕りがなくなった、ということでもある。

鬱との葛藤は長く険しいものだが、15年以上付き合う中で、自分をありのままに近い形で受け入れられるようになってきた。
当時に比べたら、ずいぶんと生きやすい。
今は、目の前のことに対してひたむきに頑張ろうというスタンスで歩んでいる。
全力でやった結果を恐れることはないのだ。たとえそれがどんなにダメでも。
だって、力を尽くしてダメなら、それはもう仕方ないじゃないか。
だからって自分を否定する必要なんてないのだよって自分にもみんなにも言いたい。
むしろ、一日の終わりに、その日頑張れた自分を褒めるように心がけている。
すると、ただの苦行でしかなかった「頑張る」という行為が楽しいものに変わっていった。
これはとても大きな収穫だったと思う。

おかけで今は、大事な時期に部屋を片付けたり、マンガを読んだりしない。
好きな人にも、恥ずかしながらもまっすぐ気持ちを伝えてしまう。
むろんこれらが良い結果に結びつくとは限らない。
でも、正直なところ、それは二の次なのだ。

心のままに行動ができること。
その幸せを噛みしめている道の途中なのだから。

***

この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。

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2022-07-27 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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