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自分を大事にする方法


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:九條心華(ライティング・ゼミNEO)
 
 
「自分を大事にしなさい!!」
すごい剣幕で怒られた。相手は本気だ。こわい。私なんにもした覚えはないんですけど……。
相手は、タロットカードの先生だった。タロットカードに興味があったわけではなく、人に勧められて参加したその場で、いきなり怒鳴られたのだから、私はきょとんとしていた。
「自分を嫌わないで」
嫌っているつもり、ありませんけど。
 
まったく無自覚だった。私は自分のことを好きだと思っていたし、自分を大事にしていると思っていた。だけれど、そうは見えないようだ。
 
夫からのDVは当たり前だったから、おかしいとも思っていなかった。私が悪いからしかたない。どうすれば関係がうまくいくかについて悩んだりはしたけれど、自分が変わらないといけないと思っていた。自分がもっと昔ながらの良妻賢母のようは完璧な女性になれば、関係がうまくいくだろう。
 
だから、料理がまずいと言われたら、おいしいお料理の本を見て料理をつくったりしたし、掃除ができていないと言われたら、休みの日に片付けたりした。でも、片づけても片付けても夫が買ったもので家の中は溢れていく。玄関が夫の何台もの自転車で通れなくなったとき、私のイライラはピークに達していたと思うが、「いい加減にしろ!!」と叫んだことはなかった。叫んでしまえばよかった。「私が働いていて、あたなは家にいる!」と。まあ、そう思っていることは目を見ればわかるようで、「俺が職を得たらどうするんだ。共稼ぎの奥さんはもっとちゃんとやっているよ」と彼はのたまった。
 
男性が女性を殴ると言うのは、どういう心境かわからないけれど、明らかに自分よりも弱いものにしか強く出られないから、と聞いたことがある。賃貸のマンションに住んでいたころ、
激しい暴力にあった。怒りの理由がよくわからないけれど、選挙で誰に投票したかを答えた直後だった。私が投票した人が気に入らなかったらしい。いや、それがきっかけだっただけかもしれないが、ぼこぼこにされた。私を下にして徹底的にぶたれたので、抵抗しては疲れるから、死んだようにただされるがままに殴られた。でも、相手は若い男性だ。私は命の危険を感じたのか体が反射的に彼の脇腹を押して払いのけようとしたら、彼が怯んだ。それから、私はあらん限りの大きな声で叫んだ。とても自分にあるとは思えないような大きな声だった。火事場の馬鹿力ならぬ火事場の馬鹿声だ。逃げようとしたら、頭をつかまれて壁にぶつけられた。あまりにも力が強すぎて、壁に穴がぽっかりと空いた。(私の頭がなんともなかったのが不思議)私は逃げなきゃ死ぬと思った。裸足のまま外へ走って逃げた。
 
着の身着のまま、お財布も何も持っていない。しかも靴もない。季節はいつだったのだろう。暖かい季節だったのはまだよかった。とりあえず、走って10分ほどの公園で休んだ。休みの日の公園は人がいる。裸足でいるのは、ちょっと奇妙に見られるので、公園の外にある、木陰のせせらぎに座って、足を洗った。ふつうにしていたつもりだったけれど、どう見ても異様だったようで、犬の散歩をしていたおばさまに、「だいじょうぶですか」と声をかけてもらった。
 
全然大丈夫じゃない。
けれど、笑って「大丈夫です」と答えた。
 
どうしよう、これから……。
実家の母に電話したいけれど、お金がない。歩いて実家に帰るには遠すぎる。車で40分もかかる距離を、裸足では無理だ。警察には行けない。(なぜか警察には行ってはダメだと思っていた)太陽はどんどん傾いていく。夜になったら、寒くなるかな。
 
何時間もそのせせらぎのところに座っていて行く末を考えたけれど、思いついたのは一つしかなかった。夫の実家だ。歩いて行ける距離にあった。でも、なんて言って行けばいいだろう。わからない。わからないけれど、行く場所がない。私の身の安全を護ってくれそうなのは、夫を犯罪者にしたくないお義母さんだろう。裸足で歩いてお義母さんの家まで行って、ピンポンを押した。そしたら、何も聞かず何も言わず、さあどうぞ上がってとお家に入れてくださった。裸足の私を見て、暖かな分厚い靴下を用意してくださった。それを履いて、お家に上がらせてもらって、お夕飯をいただいた。その後、どうやって私は家に帰ったのか覚えていない。
 
それから、万一のときのために、ポストにテレフォンカードと10円玉を隠しておいた。何かあれば、実家に電話するためだ。彼は私の一撃がかなりこたえたらしくて、病院に行ったらしい。私のたった一発で!?
 
なんでそんなに我慢したのかとよく言われたけれど、一人になるのがこわかったからだ。一人になるくらいなら、ひどい目にあっても夫婦でいるのがよかった。世の中で悩んでいる人は、不安よりも不満を選ぶという。それで解決できない。なんでそこまで一人になるのがこわかったのかは、思い込みとしか言いようがない。
 
心理学者の加藤諦三先生は、こう仰った。
・無意識の意識化をしないと道は開けない。
・楽観的なものの考え方と悲観的なものの考え方がある。
・悩んでいる人の共通性として、自己喪失がある。人の期待に応えて自分でない自分になってしまう。
 
確かに、私はそんな目に遭っていても、幸せだと思っていた。いや、思おうとしていた。まさか自分が傷ついているなんて、思ってもいなかった。現状をまともに意識できていなかった。
世の中考え方次第で、コップに半分の水が入っているとして、まだ半分も入っていると思うか、もう半分しか入っていないと思うか、人それぞれだ。考え方で、ずっと満たされないと思って生きることになる。
私は自分を見失い、一緒に住む夫の期待に応えようと、自分でない自分を生きていたのかもしれない。
 
加藤先生は、最後に自己蔑視する人の特徴をお話しになった。「自己蔑視」と聞いて、私のことじゃないなと思った。私は自己蔑視していない。でも、その特徴を聞いて、心当たりがあった。
「他人が自分をひどく扱うことを許してしまう」
あ……まさに私のことだ。ということは、私は自己蔑視していたのか。知らなかった。
 
自分をひどく扱われることを許してはいけない。
それからそう思って意識していたつもりだ。自分を大事にするために。
同じことの繰り返しはしたくない。自分が変わらないと、目の前に起こってくる出来事は変わらない。変わるために、心理学や自己啓発系などいろんなセミナーを受けた。リトリートにもあちこち出かけた。
 
でも、なんだかいつも相手の気持ちに合わせようとするところがあることに気づいた。自分は嫌だと思っている。それなのに、相手が脅迫するかのようにおしてくると、折れてしまう私はなぜか強くて自信満々な人に吸い寄せられるようにひかれてしまう。いや、よく考えてみれば、そういう人に好かれて、吸い寄せられるのかもしれない。好かれたら心地がいいから、話を聞いてしまう。それでうっかり、相手の気持ちに乗せられる。どうも、このパターンを繰り返している。
 
加藤諦三先生によれば、搾取する人と搾取される人がいるという。搾取される人は、「燃え尽き症候群」の人で、さびしいから相手の好意がほしくて、誰でも彼でも相手を喜ばせようとする。搾取する人を喜ばせようとすると、いよいよ相手から軽蔑され、奴隷扱いをされるという。なんだか、身に覚えがある。搾取する人を決して喜ばせようとしてはいけない。喜ばせようと努力すればするほど、いよいよ奴隷扱いされ、最後には燃え尽きるからだ。
搾取する人は、搾取される人を見つける目を持っている。搾取される人を自分の母親代わりにしている。本来母親に求めるものを求めても、逃げないのは燃え尽きる人くらいで、そこまで搾取されれば普通の人は逃げ出す。
ああ、私は完全に、燃え尽き症候群で、「搾取される人」認定だ。
 
搾取される人にならないために、私は搾取してこようとする人から離れないといけない。ただ、その見分けがよくわからない。
 
いろんな学びをしても、自分が同じことを繰り返していることにはたと気づいて、信頼するマナーの先生から、すべての学びを辞めてみたらと言われた。確かに、いろんなことをしすぎて、いっぱいいっぱいになっていた。時間がない。余裕がない。今の自分じゃダメだと思っているから、自分に足りないものを必死で外からとってきて埋めようとしている。もっとよくなりたいと常に願っている。よくなるためにいろんなことをしていた。
睡眠不足になり、体調も崩して、確かにやり過ぎだと思って、やめようとするけれど、どれも自分がしたいからこそしていることで、やめられない。というか、やめるのが怖い。やめてしまったら、自分に何も残らないのではないかと不安なのだ。不安だからこそ外から得ようとしていたことをやめたらどうなるのか。学びをやめるのがこわいということに気づいたことは、自分の現状を知るきっかけとなった。
 
自分には何もないと思っているということだ。だから、外からとってこないといけない。
そうではなくて、あなたはそのままで十分すばらしいし、価値がある。先生はそう言ってくださった。
えっ、どこが?
「あなたはそのままで100点満点です。120点でもいい。それがなかなか理解できないなら、100点と書いて目につくところに貼っておいて」
と言われて、私はいたるところに。「100点!」と書いて貼った。
 
セミナーに行けば行くほど、今の自分を否定していたような気がする。よくなろうと思ってセミナーに参加するのに、よくならなければならない=今の自分はダメというレッテルを貼り続けていてダメな自分をより強固なものにしてしまっていたのかもしれない。まずは、今の自分を認めてあげることからしか始まらないのにもかかわらず。
自分が自分を認めていないから、いつまでたっても満たされない。
 
セミナーに行くよりも、自分が行きたいところに出かけて、のんびり一人旅して自分の気持ちを感じたほうがよっぽどいいですよ。
先生にそう勧められて、一人旅に出かけた。そうだった。私は忘れていたけれど、一人旅が好きだ。人との旅行はどうしても気を遣うから、心の底からくつろげない。一人だと、気まぐれでも誰にも怒られないし、どこに行ってもいいし、何してもいいし、食べても食べなくてもいい。すべてが自由だ。
 
私は本来自由奔放で、誰にも支配されたくない。そういうことを思い出した。自分の心に耳を傾けてあげよう。自分は何を感じて、何を思っているのか。それが自分を大事にするということだ。
もっといい自分は、幸せの青い鳥だった。もっと自分がよくなるための種は、自分の中にある。いや、自分の中にしかない。
まずは、自分に大好きな桃を食べさせてあげようかな。

 
 
 
 
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