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「ワイン」が趣味だった私の婚活の末路


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:杉本陽子(ライティング・ライブ 東京会場)
 
 
婚活において、プロフィールに書くと不利になると言われている趣味があるのをご存じだろうか?
 
女性の三大NG趣味は「海外旅行」「ワイン」「ゴルフ」である。この3つに共通するのは「金がかかりそうな女」というイメージである。
 
そんなことも知らない私は、ワインの勉強と婚活をほぼ同時期に始めてしまった。
 
初めてワイン教室のドアをくぐった時は、婚活を始めた時よりも緊張していたかもしれない。それまで私が持っていたワイン教室のイメージは、ブランド服を着飾ったお金持ちマダムの集まりだった。
 
しかし、実際に行ってみると拍子抜けしてしまった。
 
そこにいたのは私よりも10歳ぐらい年下のほんわかした雰囲気のかわいい女子二人だった。実は二人ともソムリエの資格を持っているプロらしい。笑顔で挨拶してすぐに仲良くなった。そしてソムリエの先生は斎藤工似のイケメンだった。
 
シャルドネ(品種)とシャブリ(産地)の違いもわからないド素人の私に、参加者二人と先生は全く馬鹿にすることなく優しく丁寧に教えてくれた。私はワインそのものの魅力に加え、ワインを通して知り合うことのできる素敵な人たちに魅了されてしまった。もっとこの道を深めていきたいと思った。
 
講座終了後、ワイン教室が生まれて初めての私に向かって
 
「ワインを本当に深めたいと思うのなら、ワインパトロンを見つけないとだめですよ。僕にもワインパトロンいますよ」
 
と斎藤工は爽やかに笑いながら言った。
 
(え、パトロンっていわゆるパパじゃないの?先生にもいるの……?)
 
昼下がりの午後、明るい太陽が差し込むお店で発せられた言葉に、私は一瞬固まってしまった。
 
しかし、「パトロン」というのは私が想像してしまったようなエッチな意味だけではない。先生の言うワインパトロンは、高級ワインを沢山頼んでソムリエにも飲ませてくれ、いろんな意味で育ててくれる上客という意味だったのだと思う。
 
しかし、言われたタイミングが悪かった。
私はまさに婚活を始めたばっかりなのである。
 
「そうか!ワインを深めたかったら、高いワインを飲ませてくれそうなお金持ちと結婚すればいいんだ」
 
素直な私はそう深く心に刻んだ。
 
ここから私の泥沼婚活期間がスタートした。
 
結婚情報サービスに登録し活動を始めると、37歳の私は思いのほかモテた。気合いを入れてプロの写真館でプロフィール写真を撮ったことがよかったのだと思う。3ヵ月くらいで100人くらいからお申込みがあった。
 
下は31歳から上はなんと72歳。一般的な婚活女性は±5歳以内の男性を希望するそうなのだが、私はファザコン気味なこともあり、年齢が離れた男性でもあまり抵抗はなかった。しかしどこかで基準を定めて足切りしないとキリがない。そこで私は「年収800万円以上」というアラフォーにしては無茶な足切りラインを設けてしまった。
 
それからの私は、月に8人以上と会うと決めて、淡々と男性と会い続ける婚活マシーンと化した。
 
会う前のやりとりの中でもワイン好きをアピールすることで、どの男性とも1回目のデートは確実にワインが飲めるお店になった。
 
しかし、一度デートで会ったとしても、次に繋がることは少なかった。そりゃあそうである。異性としての魅力よりも「いかに高いワインを飲ませてくれそうか」という濁ったフィルターで男性を見ていたのだ。すると自然と相手の年齢は高くなり、実際会ってみると男女の仲になる想像がつかない人が多かった。
 
それでも、「今日はワインを5杯も飲めたから無駄じゃなかった」。
そう思うことで不毛な時間を過ごしているやるせなさから目をそらすことに成功していた。
 
知らず知らずのうちに私は、飯目的の女「メシモク女」ならぬ「ワインモク女」になっていた。
 
そうやって婚活を続けて1年がたった頃、私はついにある男性にプロポーズを受けた。市内の一等地で開業している17歳年上の内科医だった。
 
これで一生高級ワインを飲み続けられる……そう思った。
 
83歳となる私の母と先方のご両親の顔合わせを済ませ、さあ結納はどうする?というタイミングで私の母が倒れて入院した。インフルエンザにかかり、体力は急速に衰え、娘の私がわからないほどの「せん妄状態」になってしまった。
 
「母がこのような状態なので、結納は無理だと思います」と彼に言った。
 
一旦は「わかりました、両親と相談します」と引いてくれたものの、翌日には「なんとか結納はできないでしょうか?病院の一室を借りてやるとか。うちの両親はどうしても結納をしたいと申しております」
 
(この人たち何言ってんの???母は娘の私のこともわからないくらいの状態になってるって言ってるじゃない)
 
この時点で違和感ありありだったのだが、なんとか説得して、私だけ参加する「婚約式」ということでことを済ませた。
 
母の病状はなかなか回復せず、入院が長引く中で母に大腸がんがみつかった。
もってあと6ヵ月という告知だった。
 
そういう中でも先方は「結婚式はいつにしますか?費用分担はどうしますか?」と言ってきた。
 
(どうしてこの家族は空気が読めないんだろう)
 
もうこの辺りで完全に気持ちが冷めていた。相手の顔を見るのも嫌だった。
 
この人と結婚して一生この家に入るのかと思うと死にたくなった。
 
母は医師の告知通り、半年後、他界した。
彼は葬儀には来てくれたものの、その後一切連絡を取らなかった。
 
そして1ヵ月が経った頃、彼の方から婚約解消の話が出た。
私は正真正銘ひとりぼっちになった。
 
そんな時、私を支えてくれたのはワインだった。
 
ワインエキスパートの試験を受験し(1次試験は母が亡くなった翌日だった)、二次試験のテイスティング試験も合格することができた。たった一人の家族であった母親を失うと同時に婚約破棄されるという大きな二つの悲しみを、ワインに没頭することで忘れることができた。
 
婚活の道を誤らせたのもワインなら、私を生かしてくれたのもワインだった。
 
それから約1年。なんとか婚活は続けていた。
 
(もう一生一人かもしれないな。でも、それもいいじゃない。自分で頑張って稼いで美味しいワインを飲もう)
 
そんな境地に至っていた頃、結婚相談所で7歳年上のサラリーマンの男性とお見合いをした。
 
出会ってすぐに私は彼に一目ぼれをした。
 
一緒にいた3時間半があっという間だった。
 
この人となら「うどん屋さん」でも楽しいに違いない、と心から思った。
 
「僕はそんなにお金持ちじゃないし、ワインのことなんか全然わかりません。それでもいいですか?」
 
と彼は言った。
 
この人と一緒に居られたらワインなんかなくてもいいと初めて思えた。
 
「手放せば手に入る」とはよく言ったものである。
 
彼と結婚して2年半。
食卓にワインが無いと寂しそうな顔をするほどワイン好きの旦那様になってしまった。
 
今夜の夕食は白身魚に南仏の白を合わせようと思っている。

 
 
 
 
***
 
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