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通訳とは忍者である


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記事:John Ishii(ライティング・ゼミ6月コース)
 
 
皆さんも何らかの形で、一度くらいは通訳のお世話になったことがあるだろう。
 
なぜ私が通訳のことを書いているかというと、私自身が通訳をしているからだ。私は50代の普通のサラリーマンで、今はたまたま上海に駐在している。実は大学時代に日本で中国語を専攻し、大学時代のアルバイトで通訳をやった。就職してからもずっと日中間の業務についている。現在でも時には会議の通訳をすることがある。ある意味現役の通訳だ。
 
皆さんが中学や高校の英語の授業で、英文を日本語に訳すのと、日本語から英作文するのではどちらが苦手だっただろうか。おそらく英作文の方が苦手だったという人がほとんどだろう。書いてある英語を日本語にするのはなんとかできそうだが、英作文となるとハードルが高い。文法とかよく覚えていないし、間違っているのが怖い、そういう気持ちになる。
 
ところが、通訳の世界ではこれが逆になる。つまり日本人が通訳の場合、話者の日本語を聞いて外国語に訳す方が適している。理由は、話者の話した言語を母国語としてしっかり理解し、それを外国語に訳すほうが話者の意図が伝わるからだ。話者の話した内容をまずは完璧に理解することが通訳の基本となる。
 
私も長年中国語に接してきたが、今でも中国語を日本語に訳す場合、私でも中国語の語彙を理解できない場合がある。逆に日本語を中国語に訳す場合、私は日本語が母語なので日本語で聞いた内容は100%把握できる。私の中国語の語彙に少々難はあっても、日本語の話者の意図の全体を私が把握しているからこそ、中国語に訳した時にしっかり意味が伝わる。
 
通訳者は、会議では歌舞伎の黒子のようなものだ。前面に出ず、目立つことなく、スムーズに作業し、業務が予定通り進むようにコミュニケーションを促進していく。時に話者の感情が高ぶったりすると、私の場合は同様に自分の語気も高ぶるように訳していく。そういう意味で通訳は、演じる役者のような役割も必要となる。話者が相手を笑わせたい発言をしたときは、話者になりきって相手に笑ってもらうように面白おかしく訳す。
 
このような雰囲気や状況を読み切って、通訳は言葉の通じない双方の橋渡しとなり、言語の壁で不可能だった相互コミュニケーションを可能にしていく大切な仕事だ。
 
しかし問題もある。皆さんが会社で通訳が必要となった場合、その通訳の能力を見極めるのがとても難しいのだ。理由は簡単だ。外国語ができないから通訳を雇うわけで、その通訳が話す外国語のレベルを雇う側が判断することはできない。
 
通訳を雇うことは、不動産を買うようなものだ。つまり、雇われる通訳側にだけ専門知識があり、雇う側にはその知識がないからだ。よって雇う側が通訳の能力を客観的に判断できないから、通訳派遣会社のアドバイスに従うしかない。1日雇うと何万円もする通訳で失敗することもあるのだ。
 
では優秀な通訳を雇うにはどうしたらいいだろうか?それは事前の通訳の面接にかかっている。結論から言うと、忍者のような通訳を見つけて雇ってほしい。
 
忍者通訳は忍びの者なので、まず服装は地味、でもこざっぱりしている。決して目立たない。あと持っている武器を確認してほしい。レコーダー、ペン、メモ、マイク、イヤホンなど、オンライン会議でも対応できるガジェットを必ず持っている。
 
そしてもちろん、会議内容を完璧に通訳できる忍術を持っている。これこそが忍びの本業なので、面接でいろいろ質問してどの程度の忍術を持っているかを、可能な範囲で把握して欲しい。
 
食事を伴った会議でも、忍者通訳は会議に集中する。食事にはまず手をつけない。食事中の会話の流れを読み取って、適切な音量で雰囲気を和やかに保ってくれる。
 
忍者通訳がどのようなメモを取るかも確認して欲しい。優秀な忍者通訳ほどそのメモは一般人には判読できない暗号でメモを取る。例えば、売上向上という発言の場合、S↑とメモしているだろう。セールスが上がったという意味なのだ。速記という忍術を心得ている。
 
会議中も、雇い主の商談利益が最大化するよう、通訳忍者は雇い主の立場に立ってポジショントークをさりげなく入れながら忍術を使ってくれる。相手側をこちらのペースに巻き込み、次第に交渉を有利に進めていく。これくらい戦略的にコミュニケーションできる通訳はかなり上級の忍者だ。
 
そして会議が終わった後、優秀な忍者通訳なら30分ほどで会議メモを作成してそっと渡してくれる。雇う側にとってはかゆいところに手が届くような忍術を、さりげなく使えるのだ。
 
このように、優秀な通訳ほど全く目立たずに、重要な会議を雇い主のために有利に導く高い能力を備えている。そんな優秀な通訳に出会いたければ、ぜひ忍者のような通訳を探して欲しい。実はあなたのすぐ近くに、その忍者はいるかもしれない。
 
 
 
 
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2022-09-29 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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