メディアグランプリ

らしく生きるための、モヤっと


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記事:Motoko(ライティング・ゼミ10月コース)
 
 
ふとしたきっかけで、モヤっとした思いにおそわれることがある。
何気なく言われる親や友人のひとことや、たまたま読んだSNSの文章などで感じることもある。画像を見ただけで気分が沈むこともある。
他のヒトから見れば、なんてないことない、他愛ないことでも、ひどいときは、こころの奥底から
 
「なんか、違う気がする」
 
ざわざわざわざわ……。苦い思いが湧きあがる。
でも、大体はその思いにフタをして、なかったことにしてしまう。
自分の気持ちから目を背けて、フタをする。何回も閉じてきたフタは、いつしか癖になる。そうやってモヤモヤに向き合うことから、ずっと逃げてきた。
今までこれでやってきたのだから大丈夫、そう自分に言い聞かせながら。
 
だって、向き合えば自分の醜い部分、どろどろした黒いものがあらわになってしまうにちがいない。それを見るのも怖かった。
他人の成功への嫉妬や、やっかみなどもあるかもしれない。それを感じている自分を他人には絶対に見せたくないし、決して自分でも見たくはない。
だからそっとしておくのが一番。開けてはいけない、パンドラの箱。
 
先日覚えた違和感は、久しぶりに会った知人との会話だった。
 
「もとこさんは、ストイックだものね」
 
そう言われたとき、何とも言えないモヤモヤを感じた。
話は、なんてことはない、ストレッチポールを使っているかどうか程度のハナシ。別にストイックとは、なにも関係ないよなぁ、そう思ったのだ。
帰り道、その違和感がシャボン玉のようにふわふわと漂うのを感じ飲み込もうとしたとき、ふとあることを思い出した。
 
「モヤっとは、ラッキーアイテムなんだよ」
 
アレクサンダーテクニークの先生の言葉だ。
アレクサンダーテクニークは、身体のコーチングと呼ばれるボディワーク。
6年前、急に痛みはじめた椎間板ヘルニアを少しでも治したい、といろんなボディワークを受けてみた。整形外科のリハビリに通ったこともある。けれど、どれもあまり目覚ましい成果は見られなかった。このまま痛みを一生抱えていくのかと、悩んでいたところに、偶然見つけたのがアレクサンダーテクニークだった。初めて参加した日、身体の緊張をほどくだけで、おどろくほど痛みが減って身体が楽になった。
以来、数年にわたり月に一度のペースで通っている。
 
今までの当たり前が、たったひと言で、がらがらと音をたてて崩れていった。
途方に暮れながらも、もっと深く知りたいと突っ込んで聞いてみた。
 
「なんでラッキーアイテムなんですか?」
「違和感を覚えたことにフタをしないことが大事なの。モヤっとポイントは同じだから、なかったことにしないで、拾うの。どうしたいかなって考えれば、自然と相手と自分を区別できるし、自分の好き嫌いも理解できる。」
 
自分の好き嫌いがはっきり分かる、ラッキーアイテム。
それがモヤっと。
教えてもらってから、モヤモヤを感じたときはひとつ、ひとつ、拾うようにしてみた。
小さなものは、見逃すことも多かったけれど、翌日まで持ち越してしまいそうなものは、なるべく拾い上げてみた。
 
「この画像、モヤっとするなぁ」
「この投稿、意味あるのかなぁ」
「今のことば、なんか違和感あるなぁ」
 
なんだか、アラ探しをしているイヤな奴みたいに思えて、最初のうちは、なんだか気分が落ちていくのが分かった。
でも、我慢して何回かキャッチしていると、言われたとおり、同じような違和感が何度もでてくることに気づくようになってきた。
そして、一度拾えたモヤっとは、すっと手放せるようになり、こころのざわざわがおさまるのが早くなってきた。
 
とは言っても、長年の癖は、なかなか抜けない。
 
「おっ、来た来た、ラッキー!」
 
正直、まだこう思えるまでには、至っていない。
ただ、時には、
 
「また来たな」
 
ちょっとニヤリとできるようになってきた。
性格的に分析が好きなので、ときたま
 
「なんで、コレにモヤっとしたんだろう?」
 
ちょっと深追いしてしまうこともあるけれど、それはそれで良し。
黒いものやどろどろしたものが見つかっても、それだって自分の一部と受け止める。
自分の価値観と合わないことには、どうしたって違和感をおぼえる。
モヤっとは、価値観への道標でもあるのだ。最近、そう思えるようになった。
 
そして、くだんの違和感を夫に伝えてみたくなった。
 
「ストイックって言われちゃったんだよ」
「はぁ? そのヒト、ストイックの意味、知らないんじゃないの?」
 
そう、言って夫が笑った。
ああ、このヒトは、ワタシのことをちゃんと分かってくれているな。
そして、夫の前では、のびのびと「らしさ」全開なんだな、ワタシ。
ちょっと嬉しくなった。
自分らしく、伸び伸びと生きるために、これからもモヤっとをきちんと拾っていきたいと思う。
 
 
 
 
***
 
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2022-11-09 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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