メディアグランプリ

自分に嘘をつくと、大切な人を傷つけることに気がついた


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記事:pon(ライティング・ゼミ特講)
 
 
スライサーで野菜をスライスしていたら、指が滑って指先に刃が当たった。まだ指は切れたことに気がついていないようで、血が出ていなかった。大丈夫ってことにしておこう。さっと絆創膏を貼った。多分、感触的には結構深くいったな。時間が経つにつれ、指先はジンジン、ドクドクする。血も絆創膏のガーゼ部分に広がっている感じもする。
……大丈夫じゃない。痛い。
 
大丈夫ってことにしておこう。これは私の悪い癖だ。傷ついていない、自分は遠慮しておく、自分の気持ちは優先されなくて大丈夫と言うフリをすることで何度も自分の心を守ってきた。
手にできない時の悔しさや、気持ちを優先してもらえなかった事実に傷つきたくなくて、防御することがいつの間にか当たり前になっていた。
 
集まった友達たちと一人が買ってきてくれた数種類のお土産を選び分ける時も、「私これがいい!」なんて主張する子の横で、なんでも大丈夫だよと言う顔をする。実際その子みたいに主張したいほど、絶対に譲れないわけじゃないから、大丈夫は本心でもある。だけど、やっぱり最後手にした時には、あっちの方が可愛い色だななんて思うこともあったり。言えばいいのだけど、言うほどの主張でもないのだ。
 
いつからだったけ。
思い出してみると、幼い頃からそうだった。母方のいとことは年が近く仲が良かったので、お正月、夏休み、春休みことあるごとに集まって祖父母の家や旅行に行っていた。年の近い幼い子供たちは、誰かがやっていることは真似したいし、持っているものは欲しくなる。巣の中でピーピーピーと声を張り上げ合うヒナのように常にそれぞれが何かを主張していた。その頃から諦めていたように思う。他の子供達のようなスピードで自分がそれをやりたいのか、欲しいのか私は答えを出すことができなかったのだ。なので主張競争には入らず。ゆっくりとその音を聞きながらウトウトしているような子供だった。大体、祖父母がそのおっとり具合を気遣ってくれて、「○○ちゃんの欲しいものは何?」と、別に時間をとって聞いてくれていたように思う。
 
幼稚園や義務教育の集団生活を経て、周りの反応を気にする社会性、協調性を身につけていく過程で経験がある人もいるのではないだろうか?ちゃんと主張すれば良かった。と後悔したり、言ったもん勝ちやん……と目の前で主張が強い人たちが希望した何かを掴み取っていく姿を見て、ため息をついたこと。その度、まあ大丈夫なのだけどと、気持ちを誤魔化しやり過ごしてきた経験が。
それは最初、お菓子を選ぶなど「まあいいか」レベルのことに対して優先されなくてもいい、主張しなくてもいい。私は大丈夫と思っていたのだけど、気づけば譲ってはいけないこと、自分の本当の気持ちにフタをして、大丈夫となってはいないだろうか。
私自身おっとりしてるが故に学生時代は友達の目まぐるしい関係づくりのスピード感についていけず、なんとなく輪に入れなくなった時も、一人になっても大丈夫。そう思うようにした。幸い輪に属さず楽しく過ごす友人と気が合ったので、気ままに過ごした。ただ仲良くしていた友達と離れた自分の悲しいや寂しいと感じる本心にまでフタをしていたのは同時に自分の気持ちを見失っていく結果にも繋がっていった。その思考の癖が自分のことだけではなく、大切な人も傷つける結果になるなんて……
 
そのことに気がついたのは、
「嫌だったら無理しなくていいよ。私は大丈夫」
とても大事な人に対して、そう言ってしまった時だった。絶対に言ってはいけないタイミングで。
なんでも隠さず素直な気持ちで向き合ってきた人に、自分の心に、嘘をついた。
「嫌々で、無理して合わせてると思ってたん?」
相手のその言葉を聞いて、傷ついた悲しい顔を見て、自分のついてしまった嘘に死ぬほど後悔した。どうして相手を信じてる、そう本心のままに伝えなかったのだろう。
初めて、自分は大丈夫と思ってしまう癖が自分を信頼してくれている大切な人も傷つけてしまうのだと気がついた。
 
「思ってもないこと言ってしまった……ごめん。」
悲しい顔の相手に向かって、自分の心の中にも言い聞かせるようにポロポロと話した。
大丈夫って思うことで、傷つかないように防御してしまう。本当は大丈夫じゃないことも。大切すぎるが故に、急に怖くなって傷つきたくない気持ちが出てきてしまったのだと。自分を守ることで傷つけてしまった。申し訳ない気持ち、言ってしまった後悔。ゆっくりと何年もフタをしてきた自分の本当の気持ちを取り戻すように全てを話した。恥ずかしいし苦しい胸の内を絞り出すと同時に静かに流れる涙を拭ってくれる相手がいるから、取り戻せたのかもしれない。
 
もしも、自分の気持ちにフタをする癖があるとするならば、フタを少し開けてみてほしい。
これはやりたい、これ欲しい。と言ってみることは、周りを信頼しているからできる瞬間もあるのだ。ありのままを受け止めてくれると知っているから。自分に対しても嘘をつかなくてもいい。傷ついたら傷ついたと受け止めてもあなたの価値が下がるわけではない。
本当の気持ちも、大切な人も見失わないために自分の心を大切にして、やりたいことを掴んで生きよう。きっと笑顔が増えるはず。
 
 
 
 
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2022-12-08 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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