メディアグランプリ

タロット占い師になりそこねた話


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:戸田そのこ(ライティング・ゼミ2月コース)
 
 
「必要なものは1デッキのタロットカードと1メートル四方のクロスです」 一見サラリーマンにしか見えないネクタイを締めた講師はおもむろに教壇の上に何やら光沢のあるクロスを広げ、ホワイトボードにタロットカードとクロス、と書いた。
 
習い事と名の付くものはことごとく挫折している私。やっぱお勉強系は続かないよね(だってグロービスも途中でやめちゃったしね)、と勝手に自分を納得させてきた。けれど、今度こそと占い講座を申し込んだのは、好きこそ物の上手なれ、とばかりに、占い好きはやはり占えるようにならなくては、と思ったからだ。申し込んだのはタロット占い講座。
今でこそ占いブーム到来で、地上波にも占い師がバンバン登場し、芸能人を適当に占うだけでゴールデンタイムの番組が成立してしまう時代だが、今をさかのぼること15年前、当時は占いを教える学校なんて主婦が通うカルチャースクールを除いて、数えるほどしか存在していなかった。その中でもマニアが好むタロット占いを習いに来る人なんてよほどの変人か暇を持て余している人なのだろう。と想像しながらスクールに足を運んだところ、そこは本当に変人の集まりだった。プロの占い師もいたし、占いの趣味を持ちたいという男性もいたし、私のようにキャリアに伸び悩む拗らせ系OLもいた。
 
毎週木曜日の19時から1時間半✕24回。毎週1日だけは早く帰れるというご褒美を自分に与えるため、そしてタロット占いをマスターして将来は占い師で身を立てる! という振り切りすぎて完全に訳が分からなくなった野望を胸に秘めた1回目の授業。冒頭の講師の言葉に期待はむくむくと膨らむ。クロスの上で神妙な顔でカードを混ぜている私の姿も妄想に浮かんだ。けれど、最初から占い方を教えてくれるわけもなく、タロットカードの起源は15世紀イタリアらしい、とか、なぜ大アルカナ、小アルカナがあるのか? など「へえ」 的なうんちく満載の90分はあっという間に過ぎた。「市販の書籍は買ってはいけません。自分で想像力を広げる癖をつけてください」 とは講師の言葉。ふーん、そうなんだ。
 
24回も習えば、プロとしてとっくに独立できるスキルが身についたと思われるだろうが、毎回大アルカナ計22枚の1枚を1時間半かけて教える、という馬鹿丁寧なのか、ぼったくりなのか、とにかくやたら詳細を微に入り細に入り教えてもらえる内容が残り23回続き、占い方やスプレッドの展開などの占い実践については全く教えてもらえなかった。当時はタロット占いを講座仕立てで教えている場所も他にはなかったし、誰も正解を知らなかったので、正統派占い専門学校としては形から入ったのだろう、と振り返ってみて思う。けれど、後半になってくると退屈でサボることも増えていった。約半年通って、タロットカード78枚のうち22枚分の知識はついた。残りの小アルカナ分を習うにはさらに56回通わなくてはならないと言われ、もういいや、とタロット占い講座は中途半端なところでやめてしまったが、今となって思えば、急ぐものでもなかったから習っておけばよかったかな。
 
当時の日記を読み直してみると、占的(せんてき)と占機について書いてあった。占う目的を事前に決めておくことはどんな占いでも基本中の基本だが、占的が占機(せんき)を得ていることがとても大事だということ。講師が実例をあげて話してくれたエピソードを思い出して書いてみる。
あるタロット占い師(女性)がいた。占い師とはいえ、1人の人間。片思いをしている男性がいた。ある日、好きな人との仲を占ってください、と女性客が現れた。占う相手の名をフルネームで書いてもらったところ、その名前は占い師が片思いをしている相手だった。タロット占いの結果、大アルカナの「悪魔」のカードが出た。
 
占い師:あなたは彼のことを考えると嫉妬でメラメラとした思いが沸き上がりますね?
客  :いいえ、全然。
 
つまり、占い師の客に対する自分の嫉妬心がカードにそのまま表れてしまったというわけだ。
タロット占いでは占う相手が最も気になっていることへの回答が出てしまう。だから占い師はどんな客でも、どんな占的においても主観を入れないように常に自分の心を透明にし、客の気持ちになって占わないといけない。なぜならそうしないと、客が占ってほしいことへの答えではなく、占い師が気になっていることが答えとして出てしまうからだ。この話を聞いた際、タロット占いをしてもらった際に「あれれ」 というカードが何回か出たことを思い出した。その時はわからなかったけれど、占い師が占的に集中できていなかったんだなあ。タロットは深い。
 
結局、私はその後、占い師として生計を立てることはなく、障害者支援という全く別のキャリアを歩んでいる。タロットカードはその後もちょこちょこ触っているが、深められているとは言えない。常にカードは持ち歩いているので、たまに飲み会の席で頼まれて相性占いや出会いのタイミング、今年の吉凶などを観るくらいである。この投稿から15年前の自分を思い出したので、再度しっかり占いについて学び直してみようと思っている。誰かの役に立つ占いを今こそ改めてしてみたい。占機をわきまえて。
 
 
 
 
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2023-03-16 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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