メディアグランプリ

セクハラ発言をした上司の末路

thumbnail


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:都宮将太(ライティング・ゼミ4月コース)
 
 
「彼氏おるとね?」
たった七文字。この七文字で私の上司は地獄に堕ちた。
他人事ではない。その場にいた者、後々その話しを聞いた者。全ての者がそう思っただろう。
 
 
生きた化石。これは私がひそかにつけた上司のあだ名だ。
当時営業職だった私は、その上司の下で約2年間仕事をした。
「契約とれるまで帰ってくるな!」
「契約とれんなら辞めてしまえ!」
など、今では大問題になる発言を毎日のように叫び、定時を過ぎてから営業会議が始まる日々も続いた。
情けないが、私を含め、誰も文句を言えなかった。
 
 
その上司は目先の利益ばかりを大切にする人間だった、
実際にあったのは、2ヶ月ほどお客様と伴走して、案件を進めていけば、約3,000万円の契約になるはずの案件を、2ヶ月も待てないと言われ、100万円前後の契約で着地した。
その場は凄く上機嫌だったが、数ヶ月後、同業他社が同じお客様から数千万円の契約をした。と知ったときは、大声で職員に怒鳴り散らしていた。
「お前らモタモタするから、他社に契約を取られただろうが!」と!
怒りより、呆れた気持ちだった。
 
その上司は男性相手には怒鳴り散らすが、さすがに女性相手であれば怒鳴ることはない。だが、セクハラ発言はひどかった。
「まだ結婚せんとね?」
「これから婚活行くとね?」
など、今の時代、SNSに投稿すれば即バズる投稿になる問題発言を繰り返していた。
だが当時はその上司の機嫌ばかりを気にして、誰も文句を言えなかった。
 
そんなある日、私たちに希望の糸が下りてきた。
毎年一回行われる業務アンケート。
今の悩みや、会社に対して改善してほしいこと等を匿名で記載し、本部に送る。その書面は社長や役員、人事課長まで目を通すアンケートだ。
これはチャンスだと思った。このアンケートで上司のパワハラやセクハラがバレ、その上司が異動する。そんな期待を持っていた。
 
しかし、甘かった……。
アンケート内で私は訴えた。毎日のように怒鳴られ、更に、営業時間外も会議をしていると。
後々知ったが、私以外の職員は、自分の名前がバレることを恐れ、「悩み事なし」「職場環境良好」と記載しアンケートを提出していた。
そのことが原因かは不明だが、結局私の上司が咎めらることは無かった……。
希望の糸は切れてしまった……。
 
 
半ば諦めていた私を救ってくれたのは、新入職員の女性だった。
四月一日、ほとんどの企業では新入職員が入社する。私が所属する支店には、一人の女性が入ってきた。
事件が起きたのは、その女性の歓迎会だった。
 
私の上司はとにかくお酒が好きだった。
お酒を飲むと終始喋り倒し、一人だけ満足してしまう。
約二時間、上司のノンストップトークを聞かされたこともある。
新人歓迎会が中盤に差し掛かったとき、全員がほろ酔い状態だった。私の上司はほろ酔いどころでは無く、完全にエンジンがかかっていた。
その場でも周囲など気にせず、大きな声で喋り倒していた。
 
会話のキッカケは同僚の男性が言ったこの言葉。
「先週告白して振られた」
同僚が振られた。お酒も入っていたため、その場にいた者は私も含め笑っていた。同僚も落ち込んだ様子も無く(もしかしたら気持ちを隠していただけかもしれないが)、笑い話しだった。
その会話を聞いていた上司が新人の女性へ急に尋ねた。
「彼氏おるとね?」
「いませんよ」
新人女性は笑って答え、その場は終わった。
その後は女性だけで恋愛トークが始まっていたが、我々男性は、その上司のノンストップトークの餌食になっていた。
 
 
 
それから数週間後、一本の内線電話が鳴った。
本部の役員から、その上司宛だった。何も珍しくない。良くある光景だ。
「今から本部に行ってくる」
電話が切れ急に上司が言った。どうやら役員から電話で呼び出されたようだ。
「業績が悪くて怒られるかな」
そう言いながら上司は出ていったが、業績が悪いだけで呼び出されたりしない。毎月の業績会議で指摘すればいいだけだ。
「何故上司が本部から呼ばれたか?」
支店内は、その会話でもちきりだった。
「不正が起きたか?」
「何か事件か?」
色んな予想を立てながら、私たちは上司の帰りを待った。
 
しかし、上司が出て行って約四時間。戻ってくる気配もない。
定時になったため、女性職員は帰宅し、男性職員だけが残ることになった。
定時を回ってすぐ上司から電話があった。
「今日は直帰するから戻らない」と。
何の違和感もなく、上司の帰りを待っていた男性職員も退社した。
 
翌日、上司は出社しなかった。上司だけではない。新入職員の女性も出社しなかった。
代わりに本部から役員と人事課長が訪れた。
「事件だ」
その場にいた者すべてがそう思っただろう。
役員と人事課長と、我々職員の個人面談が急遽始まった。
そこで初めて聞かされたが、新入職員の女性が人事課長に直接相談したそうだ。
「上司からセクハラされました」と!
 
セクハラなんてあったか? 正直私はそう思った。
話しを聞くと、新人歓迎会の時に上司が言ったあの言葉。
「彼氏おるとね?」
この言葉が原因だった。
その言葉に不快な思いをしたという新人女性の発言の裏付けが取られた。確かにその発言はあった。と、職員全員が答えていた。
 
それから数週間後、時期的には異例の人事異動が行われた。
セクハラ発言をした上司は本部の隅に飛ばされ、セクハラされたと発言した新人女性は別の部署へ異動した。
 
 
約二年間私たちが苦しめられた上司。
その上司から救ってくれたのは、新入職員の女性だった。
飛ばされた上司に同情する声も少し聞いたが、多くは新人女性への称賛だった。
その新人女性の発言をキッカケに全店へ一斉監査が入った。
ある支店ではサービス残業を指摘され、ある支店では管理職のパワハラ発言が指摘された。
管理職以上を対象とした研修制度も導入された。
「なんでこんな研修を受ける必要がある」
そう言う管理職もいたが、その者はパワハラ発言を指摘された人間だった。
 
その飛ばされた上司は常に言っていた。
「俺が若いころは、結果が出なければ毎日のように怒鳴られていた」と、その反動で上司もそうなってしまったのだろう。だが、昔の正解が現代の正解とは限らない。
 
今まで「昔はこうだった」と口を揃えて発言していた上司に、新人の女性が教えてあげたのだ。
「昔のやり方で通じたのは昔だけ。現代では通用しませんよ」と!
 
 
 
 
***
 
この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

お問い合わせ


■メールでのお問い合わせ:お問い合せフォーム

■各店舗へのお問い合わせ
*天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。


■天狼院書店「東京天狼院」

〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
TEL:03-6914-3618/FAX:03-6914-0168
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
*定休日:木曜日(イベント時臨時営業)


■天狼院書店「福岡天狼院」

〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階
TEL:092-518-7435/FAX:092-518-4149
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00


■天狼院書店「京都天狼院」

〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5
TEL:075-708-3930/FAX:075-708-3931
営業時間:10:00〜22:00


■天狼院書店「Esola池袋店 STYLE for Biz」

〒171-0021 東京都豊島区西池袋1-12-1 Esola池袋2F
営業時間:10:30〜21:30
TEL:03-6914-0167/FAX:03-6914-0168


■天狼院書店「プレイアトレ土浦店」

〒300-0035 茨城県土浦市有明町1-30 プレイアトレ土浦2F
営業時間:9:00~22:00
TEL:029-897-3325



2023-05-31 | Posted in メディアグランプリ, 記事

関連記事