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夜空に咲く花火を見ながらいまだに後悔していること


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記事:赤羽かなえ(ライティング実践教室)
 
 
後悔しても、戻れないのだ。
 
あの時、あんな風に思ってしまったこと、態度に出してしまったことを後悔することになるなんて思わなかった。
 
広島には大きな花火大会が2つあった。
そのうちの1つ、宮島で行われる花火大会に毎年、我が家、義両親、義祖母一家で行くのが恒例行事だった。ホテルで大きい部屋を取り、ご飯を食べた後で涼しい部屋から目の前の海であがる花火を見るなんて、なんとも贅沢な話だ。
 
特に宮島の花火は、水の中に放り込まれる水中花火が有名で、水中から太陽が半分顔を出したような状態で大きな半円球の光が目と鼻の先で広がる。空に上がり、海咲く、キラキラと照らす光のシャワーを一身に浴びると、心が空っぽになって瞑想状態のように静かに時間が過ぎていく。
 
関東に住んでいた私は、花火大会と言えば、ぎゅうぎゅう詰めの電車に乗って、人と人の間からチラッと遠めに上がる花火を喜ぶだけだった。だから、冷房のきいた涼しい部屋で、ビールを片手にゆっくりと、時折バルコニーに出て湿気を含んだ海風と音を一身に浴びるのも新鮮な時間だった。
 
でも、そんな贅沢でも、毎年続くとだんだん飽きてしまう。まず、そのホテルの食事が口に合わなかった。毎年、全く同じメニューなのも気に入らない。ホテル側の「どうせ、花火がメインなんだから食事なんてどうでもいいだろう」という意図がスケスケ見えるようで気に入らない。
 
しかも、集まっている親戚たちが毎年同じような感想を言い合うのも、だんだんとつまらなくなっていった。もちろん、子ども達は少しずつ大きくなっていくので、その時々で反応は違うのだけれど、それくらいしか、かわり映えしないのに、毎年同じ場所に行って同じように過ごすのが面倒になってしまった。いつしか断る理由ばかり考えるようになっていた。うまく予定がかぶった年はラッキーとおもったが、断った時の義母のしょんぼりとした様子に胸が痛んだ。断れなかった年は、陰でブツブツと文句を言うこともあった。負の言葉を口に出すと、ますます気持ちが後ろ向きになった。
 
でも、永遠、なんてないのだ。
 
それは突然終わった。
 
義祖母が亡くなってしまった。いつもニコニコしていて、うちの子ども達を抱っこしてくれた優しい人だった。私のことも、「よく広島まで嫁いでいらっしゃいましたねえ」と迎えてくれるような素敵な人だった。毎年、花火を見て「ありがたいですねえ。こんなキレイなものを見せていただいてうれしいですねえ」と少女のように喜ぶ人だった。
 
義祖母が亡くなって、花火に行くメンバーが減り、いつもの会話すらぐっと減ってしまった。その時、永遠なんてことはないということを思い知ったのだった。
 
それからすぐにコロナになった。宮島の花火大会もご多分に漏れず、中止になった。
断る理由も考えなくて良くなり、ホッと胸をなでおろした。
 
でも、その翌年、新聞の記事で
 
「宮島花火大会終了」
 
の文字を発見して呆然とした。私達の年中行事は強制的に過去の思い出となってしまった。
 
コロナで中止になった当初は、夫と、「中止になってよかったね」と話すくらい軽い気持ちだった。
 
でも、さすがにその記事を見て、夫と二人で黙り込んでしまった。
 
義母に連絡すると、彼女はすっかり落ち込んでいた。
「みんなで、毎年楽しかった花火がなくなってホント悲しい」
泣き出しそうな勢いだった。しばらくその話を聞いて電話を切った時、私は自分の面倒くさがっていたことを後悔して唇をかんだ。
 
親族には色々な年齢の人がいる。90歳の人、70歳の人、私達の年代くらい、そして子ども達の年代。私達が、毎年変わらない、とつまらなく思っていても、変わらない時間を過ごすことがとても大切な人達もいる、ということに私は気づくことができなかった。彼らにとって宝物のように大切な時間を私は軽んじてしまったのだ。そして、それに気づいた時には、とりかえすことができない時間になっていた。
 
広島に2つあった大きな花火大会は、コロナが終わっても戻らなかった。その代わりに、ときどきゲリラ的に10分ほどの花火があがることがある。
 
それは、自分の家の窓からみえることも多いのだけれど、あの時の宮島花火のようには大きくなくて、とても小さく寂し気に見える。
 
そんな花火でも、子ども達は歓声をあげながら見ている。
 
私も一緒に花火を眺めながら、もう戻れない日々を思い出す。
そして、今度こそ、この一瞬が何度も何度も繰り返されるとしても、それは決して永遠ではないのだ、ということを心に刻む。
 
花火の火がゆっくりと消えていくのを眺めながら。
 
 
 
 
***
 
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