メディアグランプリ

入院中の楽しみ、おじいちゃんのラジオ

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:八幡未来(ライティング・ゼミ6月コース)
 
 
日常とはなんて素晴らしいことなのだろう。
 
ここへ来て、何度も何度も感じた。
絶賛入院中の今の私は、まるで赤ちゃんだった。
ここでは、一人でお手洗いに行けるのも、2本の足で歩くことも当たり前ではない。
廊下の外からは、「上手に歩けるようになったね!」なんて褒め言葉も聞こえる。
 
入院のきっかけは、本当に小さなことだった。
先日から体の不調は出ていたが、市販薬だけで乗り切ろうとしていた。
それから数日後に、突然の高熱。近所の病院へ行ったが、インフルエンザでもコロナウイルスでもないと診断され、大きめの市民病院へかかったところ、即入院。
最初の不調を感じている時点で病院に行っていれば、一週間の処方箋を出されて終わりだったものが、初動を誤ったせいで、2週間の入院となってしまったのだ。
 
両親と夫に動いてもらい、急遽入院の用意をしてもらった。忙しい中、早退してきてくれたらしい。
自身の仕事は、上司と取引先に連絡し、着手前の仕事をストップ。後輩に頼んで現行の仕事を引き継いでもらった。
 
あぁ、本当に何をやっているんだろう……。あの時さっさと病院に行っていれば……。
 
高熱が続き、体も痛む。たらればばかり考えてしまい、メンタル面も不健康になっていった。
コロナウイルスの影響で、面会もできない。直接家族にお礼も言えず、不甲斐なさが残った。
 
点滴を打たれ、氷枕の置かれたベッドの上で過ごす。
患部は痛み、その度に痛み止めの薬を飲んでいた。その結果、胃を壊してしまい、胃薬を追加してもらうことになってしまった。悪循環である。
 
心はどんどん落ち込み、何もしていなくても涙が滲んでくる。千と千尋の神隠しのワンシーンの如く、涙をボロボロ流しながらご飯を食べる時もあった。
 
ただ、ひとつだけ楽しみなことがあった。
 
 
隣の病室の、おじいちゃんである。
コロナウイルスの関係で、全ての病室の扉が開けられており、耳の遠いらしいそのおじいちゃんの会話は、隣の私の部屋まで全て筒抜けなのである。
 
足を骨折しているらしく、長いこと入院しているらしい。
大体の看護師さんと仲良く話し、「早く退院したいねえ」なんて声を掛けられている。
 
90歳を超えているが、まったくボケている様子はなく、むしろ頭の回転は速いように感じる。
担当の先生が先日休みだった理由をちゃんと覚えているし、リハビリの療法士さんがだいたい何日振りに会ったかも記憶している。
 
 
朝の挨拶は、「グッモーニン!」だし、看護師さんが回診を終えた後は「サンキュー!」「グッバーイ!」と見送る。
その元気な声に、入室した看護師さんは必ず笑っているし、おじいちゃんにつられて「グッバーイ」なんて他の人にはしてくれない挨拶を返したりしている。
 
おじいちゃんの話し声は、まさにラジオのようだった。
90歳も超えると、病人にも関わらず、人から相談や元気の秘訣を聞かれるようになるのだ。
「なんでそんなに元気なの?」という質問には、「美人に囲まれてるからだ」なんて返していた。
そのおじいちゃんとの会話はうまくできるが、普段こんなに話が続かないという療法士さんは、会話のコツを聞いていた。ちなみにそのコツに関しては、特に何もしていないそうだ。ただ、挨拶を大事にしていて、町でも積極的に挨拶をするらしい。最近は無視されることもある。そう言う人が増えてきた、と嘆いていた。
挨拶は人生のパスポート、なんて小学生の頃から聞かされてきたが、そのおじいちゃんが言うと、なぜだか説得力がすごい。
 
たしかに、私が生きてきた中で、こんなに元気なおじいちゃんには出会ったことがない。自然と尊敬してしまうし、私もそうやって心を元気に過ごして歳を重ねたい。私だったら何を聞くだろうか、なんて考えてしまう。
 
そして、おじいさんのどんな人にも同じ態度で接する面も素敵である。おじいちゃんの「サンキュー!」の破壊力はすごい。みんなが笑って、明るく返事をしてくれる。
「ひとは鏡」とはよく聞くけれど、まさにこの事なんだろうな。おじいちゃんの明るさが、訪れる人に映っている。
 
おじいちゃんのラジオを聞く生活を過ごしているうちに、日にち薬もあり、私の体調はすこしずつ回復傾向にある。
熱も下がり、メンタル面も健康になってきた。マイナスなことを考えることがなくなった。
 
入院生活とはなんて素晴らしいことなのだろう。
 
普段会うことのない人の話をじっくり聞けて、当たり前のことが当たり前じゃないと改めて気づかせてくれる。
私もおじいちゃんのように、周りを明るくできる存在になっていきたい。
 
 
 
 
***
 
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2023-09-06 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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