メディアグランプリ

偶然見つけたラーメン屋で学んだ、新規顧客をリピーターにする新たな方法

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:Shota(ライティング・ゼミ8月コース)
 
 
「腹が減った……」
私は自転車をこぐ足にも力が入らなくなっていた。
その理由は簡単だ。先ほどジムで約60分汗を流したからだ。距離にすると約7キロ走ったことになる。
もうスタミナも限界だ。
そんな時、私の視界に、「ラーメン」と書かれた旗が、風で揺れているのが見えた。
その瞬間、私の脳内で天使と悪魔が会話を始めた。
 
 
天使:せっかくジムに行ったのに、ここでラーメン屋に入ったら諸費したカロリーが無駄になる。
悪魔:腹が減っては戦はできぬ。と言うだろう。ここは目の前のラーメン屋に入ろう。
天使:今、ラーメンを食べたら先ほど走った7キロが無駄になる。
悪魔:家に帰りつくまで約20分。今の空腹状態でもつのかい? あのラーメンの写真を見てみろ。美味しそうだろう。
 
 
数分間、天使と悪魔が会話を行った。
私が気づいたときには、既に「ラーメン定食」の食券を購入し、麺の硬さまで店主に伝えていた。
天使と悪魔のやり取りは、悪魔の完全勝利で終わった。
人間とは不思議なものだ。
「またジムに行って運動すればいい」
「空腹状態が続くのも体に悪い」
というように、自分の行動を正当化してしまうのだから。
 
 
「いらっしゃい」
店主の元気な挨拶に出迎えられた私は、案内されるがままカウンター席に座った。
私のほかにお客がもう一名いる。
「一人じゃなくてよかった」
私はそんな安心感を得て、注文したラーメン定食が来るのを待っていた。
店主が運んでくれたラーメン定食は、空腹状態の私を臨戦態勢にした。
腹ペコのライオンが獲物を見つけたとき、こんな感じなのかと思うほどだった。
「美味い」
私は数分で半分以上を食べていた。
「ご馳走様」
私がラーメン定食をほぼ食べ終えたとき、既に店内にいたお客が席を立った。
「この人帰ったら私一人か。なんか気まずいな」
私はそんな不安を抱えた。
「ありがとうございました」
店主が威勢のよい言葉で帰って行くお客を見送る。いかにもラーメン屋の店主と思わせる元気のよさだ。
「私が帰るときも、元気な挨拶で見送ってくれるだろうか?」
そんな不安が一瞬浮かんだが、次に店主が放った一言は、私の不安をかき消した。同時に新たな不安が生まれた。
 
 
「スープ完食です」
「ありがとうございます」
店主の声に合いの手を入れるように、厨房にいる別のスタッフが声をあげた。
お礼を言われたお客は、少し照れくさそうに、首を店内に向け軽く会釈をしてお店を出て行った。
「おいおい、マジかよ。この店はスープ完食のお礼を叫ぶのか」
私は焦った。既にラーメン定食を完食していたが、スープはほとんど残っている。お店に入る前の空腹状態も満たされ、もう残りのスープを体内に入れる余裕はない。
「定食にしなければスープ完食できたのに……」
なんて後悔もした。
「いや、それよりスープを残したら何て言われるんだ?」
「スープ残してます! と叫ぶのだろうか」
そんな不安な考えが、蛇口をひねった水のように勢いよく浮かんできた。
「いや、あれこれ考えても仕方がない。何を言われても、このラーメン屋に今後来なければいいだけだ」
そう思った私は、「ご馳走様でした」と店主に伝え席を立った。
 
「ありがとうございました」
と店主の威勢のよい声が店内に響く。
ここまでは予想通り。しかし、問題は次だ。
私が立った席を片付ける際、残ったスープを目撃してしまう。
私は若干早歩きになりながらお店を出ようとした。
なるべく店主が私の残したスープを見る前にお店を出よとしたのだ。
だが、私の願いは叶わなかった。私がお店を一歩出た瞬間、店主が次の言葉を叫んだ。
「スープ四分の一、完食です」
「ありがとうございます」
店主の声につられ、厨房スタッフが声をあげる。
「そうきたか」と思い、私は不覚にも笑ってしまった。
同時に思った。
次は絶対に、「スープ完食です」というお礼の言葉を聞いてやろうと。
まさか、こんな感じでまた行きたいと思うお店が増えるとは思わなかった。
 
 
「またこのお店に行きたい!」と新規顧客に思わせる方法は何も、感じの良い接客をしたり割引券を渡したり、美味しい食事を提供するだけではない。
もちろん、それらも非常に大切だ。
だが、今日いったラーメン屋のお客の中には、
「次行ったときには店主から、スープ完食です! のお礼を言われたい」という目的でリピーターになったお客もいるのではいか。そう思った。
新規顧客をリピーターにするための新たな手法を、偶然見つけたラーメン屋で学ぶことができた一日だった。
 
 
自宅に戻るための帰り道、再び天使と悪魔が私の脳内で会話を始めた。
悪魔:俺の言った通り、ラーメン屋に入ってよかっただろう。
天使:確かに! 結果論だけど、ラーメン屋に入ってよかった。
 
天使と悪魔が意気投合した。そんな一日でもあった。
 
 
 
 
***
 
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2023-10-16 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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