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メディアグランプリ

●一瞬先に何があるかわからないからこそ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:小栗 健吾(ライティング・ゼミ 10月コース)
 
 
「明日がいつものようにやってくるなんて、ないんだね」
 
電話のむこうの友人の少し苦しそうな声に、一瞬なんて答えていいかわからなかった。2011年4月のことだ。前月の大震災で、福島にいた友人は家族ともども被災した。
 
「そうだよね。一瞬先に何があるかわからないから、本当に毎日大事に生きなきゃいけないよね」
自己啓発書の模範のような回答をしながら、何とも言えない気持ちで電話を切った。
 
 
そして電話を切ってわずか5分後。
 
僕は、車に後ろから突っ込まれた。
大きな交差点で、青信号を渡っているときのことだった。
 
まるで出来損ないのドラマのようだと思う。「そんなことある?」と思うが、事実だ。事実は小説より奇なり、とはよく言ったものだ。青信号の交差点を淡々と歩いて渡っているときに、「ぞわっ」と恐ろしい寒気が噴きあがり、その瞬間左斜め後ろを振り返ると、黒い車が猛スピードで曲がりながら突っ込んでくるところだった。携帯電話を片手に握った50代とおぼしき女性と目が会ったのは今でも鮮明に覚えている。
 
「うわ、ぶつかる!」と思った瞬間から、何がどうなったかわからない。
大学時代にやっていた空手のおかげなのか、何かに護られたのか、車との直撃はかわしていた。それでも左側の肩や腰はアスファルトと激しく接触して悲鳴をあげた。
 
本当に一瞬先に何があるかわからない、ということを実証したようなものだ。
しかも、その女性は、妻の職場の同僚の方だった。娘さんからの緊急の連絡で急いでいたとはいえ、あまりにも不注意な運転だった。青信号の交差点の歩行者に突っ込んだのだから責任は100%向こうにある。ただ、責任分担割合など、この理不尽さの中では何の意味もないように思えた。でも、0.1秒の差で命は助かったともいえる。
 
忙しい日々の中で、整形外科のリハビリに毎日のように通い、苦しそうな高齢者の方と一緒にリハビリの体操をした。本当に明日死ぬかもしれないということが理解できて急に怖くなった。身体が動かないというのが、こんなに心理的にもしんどいとは思わなかった。だから、身体がどんどん動かなくなっていく高齢者の方は、本当に不安になるだろうとも思う。
また、明日が来ないとしたら、人生これでいいのだろうかとも本当に考えた。
その頃、大震災の理不尽な映像は繰り返し流されていて、最初は他人事だったのが、段々と自分事のようにも思えてきたのだった。
 
だけど、本当に人間というのは、忘れていく生き物だ。僕だけなのかもしれないけれど。この大震災と自分の事故の後、「死ぬまでにやりたい55のこと」をつくった。ところが、つくったことに満足して、傷がいえるとともに綺麗に忘れていった。
以前に鹿児島の知覧特攻記念館にいったときも若くして命を散らした学生たちの手紙を読んで、「毎日大切に生きよう」と思った。小児がん病棟にお見舞いにいって「早く治して学校に行きたい」といっていた友人の子供に明日がこなかったときもそうだ。大学時代にスペインでジプシーのおばあさんに命を助けられたときも、「このありがたさを忘れることなく毎日を大事に過ごす」と決めたはずなのに。
 
事故から3年間、日常の仕事が忙しすぎて、すっかり忘れた頃、出版した友人の女性のお祝い会にいって話を聞いた。「私の生き方が変わったのはね、イタリアで列車事故に巻き込まれて肋骨を折って重傷になり、何人も近くにいた人が亡くなった経験をしたからなの」という言葉を聞いて、忘れていた気持ちを強烈に思い出した。
そこからようやく一念発起して、自分も商業出版できたり、大勢の前で講演したり、いくつかのやりたかった夢は叶った。
ただ、しばらく好調が続いた後で、不調になるとまた忘れていくのだった。
 
だから、「忘れないための努力を忘れないこと」が大事なのだと思う。
スティーブ・ジョブスの有名な話で、彼は「もし今日が最後の日だとしたら、私は今日やろうとしたことを本当にやりたいだろうか」という言葉を毎朝30年間鏡に向かって話つづけたという。
正直いえば、たいしてやりたくもない仕事を毎日惰性的にやっているときがある。それでも1日の終わりに今日という日を振り返って日記を書きながら、1つでもいいこと・感謝できることがある1日を過ごすと決めている。
なんて偉そうに書きながらも、1日の最後に今日を振りかえって「あれ、今日、何してたんだっけ?」と自己嫌悪になる日も、疲れたり、うまくいかない1日も正直ある。そんなときに、SNSで友人の充実した投稿を見ると更に焦ったりもする。
 
それでも否応なく、時々思い出させてくれる出来事はおきる。今年の元旦、お屠蘇気分も吹き飛んだ能登半島地震。友人も被災した。
そんな大きな出来事があったときこそ、本当に一瞬先に何があるかわからないよ、と言われている気がする。なかなか前を向けないときもあれば、嫌になるときもあるけれど、それでも生きているって本当にありがたいと思う。
だからこそ、「一瞬先に何があるかわからないから、本当に毎日大事に生きなきゃいけないよね」と強く思う。自己啓発書の模範解答みたいだけれど。
 
 
 
 
***
 
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2024-01-31 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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