メディアグランプリ

極度の怖がりさんが、2回目で見違えるくらいに成長した話


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:高橋陽夏(ライティング・ゼミ2月コース)
 
 
「歯医者さんが怖い」
 
4歳のユナちゃんがそう言う。その子は私の友人の子供で、いつもはとっても明るくて元気な子だ。しかし、友人である母が言うには歯医者さんは極度のビビリとのこと。
 
「ユナの歯の着色が気になるから近所の歯科医院に連れて行ってるけど、怖がって全然口を開けないんだよね〜。保育園で受ける歯科検診の時は全然大丈夫なのに、歯科医院では何回行っても出来ないで終わるからイライラするの」
 
 
私は普段歯科衛生士として働いているため、母から相談を受けていた。中々出来ない娘の様子に、焦りや怒りを感じていたのだ。
 
 
そして、こう言われた。
 
 
 
「ユナ、はーちゃんにやってもらうのだったら頑張れる?」
 
「……うん!!」
 
 
私は普段初診で幼児を担当しないが、ユナちゃんとは会えばいつも遊んでいるし、お風呂も一緒に入りたいと言ってくれるほど仲良しなので大丈夫でしょ! と思ってた。実際に担当するまでは……
 
 
 
私の勤めている歯科医院に本当に行くと言われたため、母は本気であることがわかった。虫歯ではなく着色であることが間違いないのであればそのままでも良い気もしたが、遠くから来てもらうからには私がユナちゃんの歯を必ずクリーニングしないとと使命感を抱いていた。
 
 
私担当で予約を取られ、母はユナちゃんを本当に連れてきた。
 
 
 
「ユナちゃん〜! ヤッホー!」
 
いつも通りに声をかけたが、その日のユナちゃんは明らかに顔が強張っていた。まるで別人のようだった。
 
 
「ユナちゃん、遠くから来てくれてありがとう! 今日ははーちゃんが担当するからよろしくね!」
 
そう声をかけると、何とかうなずいてくれた。早速ユニットに通そうとすると、問題はそこからだった。初めてくる場所だからか、待合室から中々動こうとしてくれない。
 
 
「ユナちゃん、歯医者さん怖いかな? ここを真っ直ぐ歩いたらすぐお椅子があるし窓からお外も見えるから、はーちゃんと手繋いで一緒に行こうよ!」
 
それでもユナちゃんは怖がっていた。
 
 
「ユナちゃん、歯医者さんのどんなところが怖いか教えてほしいな! 先生? それとも音かな?」
 
 
どんなことに不安を感じているのか聞くと、音が怖いようであった。確かに歯科医院では音がつきもので、幼い子供にとっては怖く感じるだろう。母はそんな娘の様子に「早く行かないともう帰るからね!」とむしゃくしゃしたのかそう伝えると、ようやく母と一緒にユニットまで来てくれた。早速お口を診ていきたい。
 
「ユナちゃんこんにちは! 僕は鏡さんだよ。ユナちゃんとお友達になりたいから、どこに汚れがついているかお口を開けて見せてほしいな〜」
 
口腔内の観察に用いる小さな丸い鏡を見せ、慣れさせようと思った。初めは中々お口を開けてくれなかったため時間は少しかかったが、しばらくしたら歯を見せてくれた。確かに、前歯中心に着色がついている。このくらいだったらすぐ落とせそうと思ったので、母の主訴であったクリーニングを行うことにした。
 
「そしたらね、これから前歯の汚れを落としていくよ! 今日はこのブラシさんを使うから、触ってみていいよ! ね、大丈夫でしょ? こんな感じでブルブル〜って音がするけど、歯は削らないから怖くないよ」
 
 
そう言って回転するブラシを見せると、やはり音が怖かったのか極度に嫌がった。
 
 
「どうしよう……ユナちゃん結構怖がってるな。本当はここまでにして終わりたいけど、母は友人だし遠くから来てもらってるからクリーニングまで進めないととも感じるし……けど、ユナちゃんは初めて来たのによく頑張ったよね! 無理に進めようとしてももっと歯科医院が怖く感じちゃうかもしれないから、今日教えたことを少しずつ出来るようになればいい」
 
また来院してもらうことを考えると母は大変だと思うが、ユナちゃんの状態を優先して今日は終わることにした。それと共に、母にも一声かけた。
 
 
 
「今日はわざわざ来てくれたのに、期待に応えられなくてごめんね……けど、大体の子は待合室でギャン泣きだから、ユニットまで来て座れただけでも偉かったよ! これでユナちゃんを責めちゃうともっと恐怖心が強くなるから、絶対に怒っちゃダメだからね! 歯科医院は楽しいところだって思ってもらえるように、パパとか周りを巻き込んでユナちゃんのことを沢山褒めるの! そうしていくと次はもっとできるようになるはずだから、また練習がてら来てよ」
 
 
そう母に伝え、ユナちゃんには頑張ったご褒美にうさぎのシールをプレゼントしてバイバイした。
 
 
 
 
それから数日が経ち、2人はまた来院してくれた。その日のユナちゃんは前回とは違い、やる気がみなぎっていた。母がいなくてもユニットまで1人で行くことができ、お口も難なく開けてくれた。前回できなかった回転ブラシでのクリーニングも、音が平気になったのかやらせてもらえた。
 
私は2回目でこんなにできるようになるとは思っていなかったため、子供の成長に驚いてしまった。なぜこんなにもできるようになったのか、母はユナちゃんにどんな言葉を投げかけたのか聞くことにした。すると、
 
 
「ユナは褒めると調子に乗って怒ると言うこと聞くタイプだけど、今回は沢山褒めたよ。前回の帰りにはご褒美もあげたりして、怒らないように気をつけた。そしたら、次は頑張るって言ってくれた。これまでは私も早くクリーンングしてもらってよとイライラしちゃって当たりが強かったけど、ユナの気持ちを考えて声かけしてよかった〜」
 
 
 
今回の出来事は、私も大変勉強になった。初めは歯科医院が怖かったのに2回目の来院でクリーニングができるようになった姿を見て、周りを巻き込んで褒めることに加えて保護者へのアプローチも大切であることがわかった。子供はやはり、褒められると嬉しいのだ。今回はクリーニングだけだったが、虫歯の治療が必要な場合は色々な器具や材料を使用する。歯を削る音はもっと大きいため怖がる子も多いと思うが、焦らない。いきなり100点を目指すのではなく10点ずつクリアしていけばいい。そんな気持ちを胸に、明日からの診療でも生かしていく。
 
 
 
 
***
 
この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

お問い合わせ


■メールでのお問い合わせ:お問い合せフォーム

■各店舗へのお問い合わせ
*天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。


■天狼院書店「東京天狼院」

〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
TEL:03-6914-3618/FAX:03-6914-0168
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
*定休日:木曜日(イベント時臨時営業)


■天狼院書店「福岡天狼院」

〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階
TEL:092-518-7435/FAX:092-518-4149
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00


■天狼院書店「京都天狼院」

〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5
TEL:075-708-3930/FAX:075-708-3931
営業時間:10:00〜22:00


■天狼院書店「Esola池袋店 STYLE for Biz」

〒171-0021 東京都豊島区西池袋1-12-1 Esola池袋2F
営業時間:10:30〜21:30
TEL:03-6914-0167/FAX:03-6914-0168


■天狼院書店「プレイアトレ土浦店」

〒300-0035 茨城県土浦市有明町1-30 プレイアトレ土浦2F
営業時間:9:00~22:00
TEL:029-897-3325



2024-03-27 | Posted in メディアグランプリ, 記事

関連記事