メディアグランプリ

モバイルオーダーという効率化を捨てて、スマイルをもらいに行きたい


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:志村幸枝(ライティング・ゼミ1月コース)
 
 
モバイルオーダーしたことありますか?
私は子どもたちとマクドナルドへ行ったとき初めて利用した。並ぶことなく席に着き、そこからゆっくり注文できる上、注文した商品は席まで届けてくれる。便利だなーと思った。
 
「最適化」「効率化」みたいなことは、デキル人というイメージでかっこいい。マクドナルドで流れをつかんだ私は、スタバのアプリをいれて、見よう見まねでやってみた。すると、「ニックネームを登録しますか」と出てきて、一瞬迷ったが、なんだか張り切ってる人みたいになるのはちょっと恥ずかしいかも、なんて思って、何も登録せず注文を進めていった。
 
すると期せずして、「ウガンダ・45」という、超インパクトある名をいきなり与えられ「わわわ、ちょっと待って、こっちの方が恥ずかしいんだけど!」
そう思ったのも束の間、「ウガンダ・45のおきゃくさまぁぁあ」、と呼ばれてしまった。
 
恥ずかしい。
こんなことならニックネームを設定しといたらよかった。そんな動揺をどうにかしたくて、スタバスタッフのお姉さんに話しかけた。するとお姉さんは「いやいや、なんでもありです。今度はルワンダかもしれませんよ~。勝手にあてがわれるコレって、コーヒーの産地名なんで」と教えてくれた。
 
モバイルオーダーでもう一つ疑問だったのが、マグカップ希望の場合のオプションのつけ方だ。尋ねると「ニックネームのところに、マグカップデ、って登録している方が多いですね」とのこと。私に与えられたニックネーム、「ウガンダ・45」というシールのついた紙カップに、かわいいうさぎさんを描いてくれた、明るく親切なそのお姉さんがさらに教えてくれた。
 
後日、またそのスタバに行った。ニックネームはマグカップデ、にしてモバイルオーダー完了。うんうん、この調子だ。「最適化」「効率化」のかっこいい私になっている。確かに無駄な工程はなく、こちらは最小労力、店側は最短でコーヒーを提供してくれた。
 
がしかし。
 
あの明るく親切なお姉さん。前髪を眉毛の上でパツっと切り揃えた、どんぐりみたいな髪型(どんぐりにもいろいろあるが、シラカシ系どんぐりをイメージしてほしい)に、親しみある笑顔。こちらの一方的な思いを言わせていただければ、つまり個人的に仲良くなりたいタイプのお姉さん。
 
私は「最適化」と「効率化」に、そのどんぐりお姉さんとの仲を引き裂かれてしまった。いや、みなさまご存じの通り、まだ何も始まっていないのだが、そのくらいの気持ちになってしまった。どんぐりお姉さんと会話を交わしながら、にこやかにコーヒーを注文する、あのお客さんが眩しかったのは言うまでもない。え、「最適化」や「効率化」ってこんなにもさみしくなるものだったの? あれこれ考えているうちに、すっかり冷めたコーヒーが、ますますそう思わせた。
 
 
 
 
まだ子どもが小さく保育園に行っていた頃のこと。仕事の帰り道はいつもクタクタで、晩御飯づくりが億劫なことがよくあった。通勤電車の乗り換えついでに、そんなときは時々、出来合いのお好み焼きを持ち帰りしていた。
 
そのお店の店長さんは「いらっしゃいませ」じゃなく「おつかれさまです」と言ってくれた。産後8週からフルタイム出勤。必死に働いて心も身体もすり減らしていた私はそれだけで涙が出そうになった。というか、本当に泣いた。たくさんの言葉を交わしたわけじゃない。でもその一言は「いつも頑張ってるね」「無理しないでね」「大丈夫だから安心して」「きっとできるよ」という励ましの言葉をスペシャル詰め合わせセットで差し出されたくらいの威力があった。帰り道は疲れが軽くなった。お好み焼きがおいしかったのもあるが、そのパワーチャージが欲しくて、それからもよく立ち寄り、スタンプカードが何度も満スタンプになったくらいだ。店長さんは労いの気持ちはあったにせよ、さすがにそこまで意図していなかったとは思う。受け取るこっち側の心が弱っていただけなのかもしれない。それでも人と人が関わる時って、こういうことあるよね、と思い出した。
 
通勤で出会う犬の散歩のご婦人。すれ違うとき会釈をする、だだそれだけの方。柔和な笑顔に、こちらもつられて、微笑む。ほんわかして、今日もいい日だなと思える。そういう名前も知らない誰かとのやりとりで、心が和らいだり、温かくなったりする。ほんの数秒のやりとりで、特別な言葉を交わしたわけではないのに不思議なものだ。損得や利害関係がないからこそ生まれる、純粋な一期一会の優しさとでも言おうか。その一つ一つは一瞬で消えてしまう出来事だけど、その温かさだけは、案外ずっと心に残っている。
 
今度あのスタバへいくときは、私は並んで待ちたい。
どんぐりお姉さんの笑顔でほんわかしたいから。
 
 
 
 
***

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2025-03-13 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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