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メディアグランプリ

やりたいことが見つからなかった自分がブラック企業で天職を見つけた理由。


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:鈴木おさむ(ライティング・ゼミ 土曜コース)

やりたいことがみつからない。

大学を出て、社会人として働き出して12年。
この歳になると後輩にそんな悩みを相談されることが多くなってきた。
その度に思う。

「いや、俺もなんだけど」

こんな自分でも慕ってくれて、真剣な顔つきで相談してくる後輩を前に、そんなことは言えるはずもなく、それなりに積んできた社会経験と、どこかの自己啓発本で聞きかじった知識でなんとかごまかしながらやってきた。
思えば大学へ進学したのも、付属高校からの推薦入試で、学内の評定がそれなりに良ければ好きな学科を選べたので、今っぽいという理由だけで理工学部情報学科を選択したのだった。
そんな適当な理由で専門を決定してしまったものだから、大学2年の頃には技術畑で生きていくという実感は完全になくなっていた。
それでも落第は親に申し訳ないという理由でそれなりに単位だけは取り、無事に卒業した。
就職までに時間が欲しいという理由だけで大学院にも進んだ。
だが、時間をいくら稼いだところで自分がなりたいもの、やりたいことは見つからず仕舞いで、卒業を迎えてしまった。

いよいよいい加減に就職を決めなくてはならないという時に、バイトをしていた会社の社長から、「うちに来ないか」と声をかけられ、特段好きでもないが嫌いでもない、3年間も続けた仕事だし、必要としてくれているならと理由だけで、流されるままに就職をした。

人生は選択の連続だ、なんてよく言われるが、有が無か、2つに一つ選ばざるを得ないネガティブな選択と、何十という選択肢から好きなものを選ぶポジティブな選択があると思う。
自分の人生は、断然前者だ。
続く道と行き止まりの道、選ばなければ進めない。かと言って他の道もない。
だからとりあえず選ぶ。
その連続だった。

就職した会社はもともと人手不足が深刻で、一人が少なくとも3つの部署、仕事を兼任しているのが当たり前のブラック体質の会社だったと知ったのは後のこと。
だが、今改めて考えてみると、この悲惨な状況が自分にとってはとても幸運だったと思う。

私の就職した会社は、社長が一代で築いた典型的なワンマン企業で、利益が上がると踏んだ事業は片っ端から立ち上げるマッチョ体質の組織だった。
その代り、利益を産まない事業は次々と閉鎖され、社員は脈絡のない事業内容に日々翻弄されていた。
定時退社? 週休2日? 有給、ボーナス、なにそれ知らない、美味しいの?
そんな日常だ。

私も最初こそIT系の知識を生かして企画や広報を担当していたが、系列飲食事業のホールをやらされたり、経理をして欲しいから簿記を取れといきなり言われたり、東南アジアから果物を輸入するから海外に半年住んでくれと言われたり、はっきり言ってもう無茶苦茶だった。
そんな中もちろんワークライフバランスを崩して、身体も私生活もボロボロになって、いよいよ転職を考えたが、ここでも同じ問題にぶち当たる。

「やりたいことがみつからない」

当たり前だが、転職するには転職先が必要だ。
だが、その候補の検討すら思いつかない。
脈絡なく色々なことをやってはきたが、会社の体質上、事業を長期に渡って継続させるようなことがなかったので、専門性があると胸を張って言えるまで突き詰めた分野もない。
日に日に転職したいという思いは募るばかりだが、矛先が定まらず、ずるずると数年が過ぎた。

そんな私が転職を決意することができたのは、2年前のある出来事だった。
相変わらず二転三転する事業内容に翻弄されて、新たに配属されたのは女性向けの着物レンタルショップのマネージャーだった。
着物なんて生まれてこの方、成人式でも着たことがない。
せいぜい七五三で着たであろうおぼろげな記憶があるだけだが、予約は問答無用で入って来る。
やるからには自分も予約したいと思える店にしたいと、とにかく不備がないように丁寧な接客を心がけ続けた。
嫌々ながらも強制的に場数を踏まされ、それなりに店を回せるようになってきたのは半年を過ぎた頃だった。
その頃から、着付け師でもない自分を指名して、「鈴木さんはいますか?」という予約がちらほら入るようになり、海外からのお客様からサンキューレターなんかも頂くようになった。
はっきり言ってこれがめちゃくちゃ嬉しかった。
こんなにワクワクしたのは人生で初めてだった。
もともと言われるがまま始めた仕事だったが、思いがけず届いた“お客様からの感謝”という手応えは、今までの自分になかった選択肢をもたらした。

「接客業を極めてみたい」

生まれて初めての経験だった。
やりたいことが見つからないという時、それは見つけられないのではく、知らないのだということをこの時理解した。
黒いナンバープレートの車を3台見つけたら、ラッキーなことが起こると言われ、意識した途端に黒いナンバープレートの車を連続して見つけてしまうように、見つけるためには、それを知っていなくてはならない。
流れ流され色々な仕事を転々して初めて見つけた、自分が想像もしなかった本当にやりたいこと。
すぐさま転職活動を再開し、今は老舗旅館で日々勉強の毎日を送っている。
自分はブラック企業という特殊な環境で強制されながら見つけることができた分、幸運だったのかも知れない。
やりたい、やりたくない、好き、嫌いに関わらず、自分の環境の許す限りで手当たり次第にやってみる、そこから得られた情報を使ってさらに広げてやってみる。
そうすれば、なにか一つ、自分が想像もしなかった“本当にやりたいこと”が少なくとも、車の黒いナンバープレートくらいには視界に入るようになるかも知れない。

強制だっていい、とにかく知ること。
それが本当にやりたいことをみつける近道だと、私は思う。
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2019-01-19 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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