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週刊READING LIFE vol.212

熱い想いをそのままに、光を当てる。フォトライターとしての出発点《週刊READING LIFE Vol.212 ライターとしての自己紹介文》


*この記事は、「ライティング・ゼミ」の上級コース「ライターズ倶楽部」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

2023/4/10/公開
記事:河瀬佳代子(READING LIFE編集部公認ライター)
 
 
日記にしろSNSにしろなんにしろ、「ものを書き残す」行為は、自身の中に何か満たされないものがあるからだと思っている。どうにも抑え難い何かの感情をどこかにぶつけたい。その表現のうちの1つが「書くこと」だ。
 
「書くこと」について改めて考え始めると、自分の中での意識が、時間を経るごとに変わっていくのがわかる。そもそもの始まりは2005年にブログを開設したときからだ。
 
マイブログの歴史を紐解いてみると、2005年〜2013年までは自分でパンを焼いていたのでそのレポートをしたり、鑑賞した映画のレビューをしたり、かなり頻繁に書いていた。そこから別のプロバイダーにブログを移して書いていたけど、2017年から投稿がめっきり減り、年に数回しか更新しなくなった。
 
仕事が忙しくなりブログを書く時間も気力もない自分が、ではどうして2019年8月開講の天狼院書店「ライティング・ゼミ」を受講しようと思ったのか。それは、自分が書いてきたものを客観視してほしい、きちんと評価してほしいという気持ちがどこかにあったからだ。実際ブログでの映画レビューはきちんと書いていたけど、果たしてそれがいいのか悪いのか自分ではわからない。ブログ友さんは好意的に見てくださるけどそれでいいのだろうか、自己満足だけなんじゃないか。それが、ちゃんと文章の勉強をしようと思ったきっかけである。
 
そこから始まって2020年、天狼院書店『WEB READING LIFE』にて、神奈川県内の生産者の方に登場していただく「魂の生産者に訊く!」の連載がスタートしてから早くも2年半が過ぎている。自分で出した企画が通って嬉しかった。それまではライターとして書くことをあまり意識していなかったが連載となると話は別だ。文章の中に、自分だけが満足する部分が少しでもあってはいけなくなる。しかも自分の場合は取材ありきだ。自分が書くだけで整うタイプの連載とは違って、取材をしないと書けない。
 
取材の準備、どうしよう。それまで取材とは無縁だった私がいきなり取材をすることになった。とりあえず録音をしてそこから書き起こしをしてまとめる。それはわかっていたけど実際対象者のところに赴くと大変緊張しているのがわかる。自分だったら何をこの人に聞きたいか? 事前に懸命に考えてきた質問をぶつけてみる。こちらの拙い質問にも関わらず、対象者さんはとても丁寧に答えてくださったし、お話にもドラマがあってまとまりがよかった。
 
この体験をきっかけに、連載のために私は取材を重ねることとなった。そこから1年後には『WEB READING LIFE』でもう1つの連載「『横浜中華街の中の人』がこっそり通う、とっておきの店めぐり!」が始まった。こちらは知り合いの華僑の人が紹介してくれる店を巡るものだ。この仲介の人の都合や、コロナ禍でお店の対応なども変わったこともあって回数こそ少ないけど、毎回とても内容の濃い話が聞けている。
 
『魂の……』の生産者さんも『中華街……』の店舗の人も皆、とても話の内容が熱い。ご自身のなさってきたこと、今後なすべきことについて、本当に熱く語ってくださる。こんな、ふらっと訪ねてきたような私みたいな人にまで。ひたすらありがたい。
 
ゼロから何かを生み出すことについて、作物を作るのか店を作るのかの違いだけど、この両者は共通している気がしている。そして彼らの話を聞いた後にそれを形にする自分にとっても、無から文章を生み出すことにおいては似ている。
 
少しでも多く、少しでも熱く、自分が聞いた話の熱量を誰かに伝えたい。そのためにはどうしたらいいのか。文章に起こす過程においては、そのことを考えている。ただ単に聞いたことをそっくり文字にしただけでは伝わらない。その人が本当に伝えたいことはなんなのか、そこを早くつかむこと。そして組み立てること。組み立てたあとも、より読みやすく、効果的な言葉を使えないだろうか。そこを考えるようになった。
 
こうして2本の取材が進んで行き、1年半くらいしたところで1つの転機が訪れた。取材にはカメラマンさんが同行してくださっていたのだけど、その方が地方に移住することとなり、どうやらご一緒に取材に同行していただけなくなることがわかった。さあ大変である。Web記事にとって写真はある意味「命」でもある。写真の良し悪しで記事のアクセスが左右されることもあるからだ。
 
誰かに頼んでもいいけど、その人が毎回来れるかどうかはわからない。そこで考えた。自分で取材の写真を撮ったらいいんじゃないだろうかと。
 
ここでまた天狼院さんにお世話になることとなった。フォト講座を受けたら、写真が撮れるんじゃないだろうか? いかにもな発想で、私は講座に参加することにした。
フィルムの時代から一眼レフは持っていたけど、スマートフォンで写真を撮ることが圧倒的に多くなってきて、ずっと使わず眠っていた古いカメラをひっぱり出してきて講座を受けた。
 
カメラは持ってはいたけど、オートモードだけにしてただシャッターを押すだけだった自分にとって、目の前の世界を最高の形で切り取る作業は難しかった。露出、焦点距離、シャッタースピード、全てその時の状況に合わせて自分で設定することこそ大事なんですよと教わってもなかなかできない。フォト講座の先生をはじめ、講座のメンバーには写真が上手い人たちがたくさんいて、いろいろ教えていただいた。
 
少しだけ写真のなんたるかがわかってくると、俄然撮ることが楽しくなってきた。
そして連載の取材で、自分で写真を撮る時がとうとうやってきた。撮るものはピザのお店の写真とピザの写真と人の写真、そしてピザに使うトマトを作っている畑の写真だ。
 

 
ちゃんと撮らなくちゃ、そして取材もあるのでこっちもちゃんとやらなくちゃと緊張していたけど、8月の真夏の炎天下にビニールハウスのなかで数分いただけでも死にそうになる。こんなに苦労をしながら栽培しているのかと、頭が下がる思いである。
 

 
工夫や苦労をしながら自分で撮った写真が、自分で書いた記事と一緒に掲載されるというのは、なんとも言えない喜びがある。この角度からの撮影が一番よかった、だったらこれをこの文章のところで使ったらどうだろうか。そんなことを考えながら記事を書くことがたまらなく楽しいのだ。
 
連載を始めてしばらく経った頃から「記事を書いてくれませんか」「取材をしてくれませんか」という依頼がぽつぽつ入るようになった。講座以外のところから評価されてこそ講座を受けた真価があると考えていたので、こちらも本当に嬉しいことだった。取材した人の動画を見て記事を起こす、シンポジウムをまとめる、屋外の親子のイベントを取材して写真を撮って記事も書くなどを行ってきた。
 

 
中でもとても光栄だったこと、それは指名で受けた2つの案件である。1つは雑誌『READING LIFE』Vol.3にて「語彙力の鍛え方」「最高に読みたくなる「出だし」リスト30」の2本の記事の依頼を受けたことだ。この2つを自分に、と言っていただいたことは本当に誇りに思っている。小さい頃から本が好きで、いろいろなジャンルの本を読んできたことが報われた。
 
そしてもう1つの案件は、2022年11月2日に天狼院カフェSHIBUYAにて行われた『Dewar’s Curious Book Bar supported by 天狼院書店』天狼院カフェSHIBUYA キックオフイベントレポートである。店をあげてのイベントレポートを「河瀬さんに書いてほしい」と言われた時には本当に驚いたが、又吉直樹さんに生でお目にかかり、作家としての原点を伺えた体験は本当に貴重だった。
 
記事を書くうえで依頼に応えることはもちろんだけど、それ以上に「ここにいる人たち、目にしている動画の中の人は、何を伝えたいのか?」「何を書いたら、依頼者や取材対象者にとって最良なのだろうか?」を考えながら書くことを意識している。この2件は、コツコツと書いてきたことが日の目を見ることができたような体験であった。
 
今後、どんなふうに書いていきたいか。それを考えた時に、記事と写真の2つを組み合わせたい願望がある。多くは取材案件になるだろうが、その試金石として自分が企画した取材記事がある。2022年の12月に茨城県結城市を訪れた際のものだ。
 
結城紬の町と、新たなチャレンジとの共存が生み出すもの。茨城県結城市が目指す町おこしの未来とは《週刊READING LIFE Vol.202》
 

 
本来はイベントの取材だったのに、主催者の方から大変な熱量を感じて取材を申し込み実現したものだ。この記事では写真も載せることができ、自分の考えが1つ成功した例と言える。取材を通してきちんと取材対象者の意図を伝えること、そしてその内容が社会的に有益なこと。そのようなことに貢献していければ幸いである。
 
さらには取材だけではなく、自分の熱量だけを込めた文章も書いていきたいと思っている。
 
赤く赤く頬を染める灯に導かれて《週刊READING LIFE Vol.193 夜の街並み》
 

 
これはノンフィクションではあるけど、自分のありったけの熱量を注いでみたものだ。1つのことを描くために自分の感情を表現する、その描写なども少し工夫をしてみた。ただ感情を投げつけるだけがいいとは限らない、時には引いてみることも必要なのではないか。そこに着目して書いてみたものだ。ノンフィクションもだが、フィクションでもこういった取り組みをしていきたい。
 
今まで書いてきたどの記事も、自分にとってはとても愛おしく心に残っている。
記事が何本か重なった時などは「自分は何のために書くのだろう?」と、時々思う。そんな時は「今、この記事に必要とされているのは自分自身である」と考えることにしている。求められて書くことも、自分から進んで書くこともあるけど、共通していることは想いのボルテージをいかにして高いままに届けるか、である。
 
今、ここで自分が書かなかったら、誰にも知られないことがある。そして自分が撮らなかったら、誰も見ない景色がある。文章と写真を学んで得たのはそのことだ。自分しかこの感覚は伝えられないはず、その矜持を胸に、これからも書いて撮れるライターを目指していきたいと思っている。
 
 
 
 

□ライターズプロフィール
河瀬佳代子(かわせ かよこ)

2019年8月天狼院書店ライティング・ゼミに参加、2020年3月同ライターズ倶楽部参加。同年9月天狼院書店ライターズ倶楽部「READING LIFE編集部」公認ライター。「Web READING LIFE」にて、湘南地域を中心に神奈川県内の生産者を取材した「魂の生産者に訊く!」http://tenro-in.com/manufacturer_soul 、「『横浜中華街の中の人』がこっそり通う、とっておきの店めぐり!」 https://tenro-in.com/category/yokohana-chuka/  連載中。

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2023-04-05 | Posted in 週刊READING LIFE vol.212

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