READING LIFE ver.20220208 読書特集号PROTOTYPE版

【特別無料公開】「面白い人」の方程式〜面白いを科学する〜《特集①なぜ、人生に読書が必要なのか?》



記事:三浦崇典
   (天狼院読書クラブ/TENRO-IN BOOK CLUB グランドマスター)


 

 皆さんに質問です。
「あの人、面白いね」
 と感じるとき、その人は、どういう条件を備えている人でしょうか?

 わかりやすいのは、「すべらない話」的に笑える話をしてくれる人、場を盛り上げて笑わせてくれる人、でしょうか。
 ただ、「面白い」には、単に「笑える」以上の意味があるだろうと思います。「あの人、面白いね」と感じるとき、自分にとってなるほどと思える、共感できる「興味深い話」をする人も当然ながら含まれるでしょう。

 では、なぜ、人は「面白い」と感じ、形容するのでしょうか?
 結論を初めに言ってしまうと、

「面白い人」とは、第三者に対して、有益なアウトプットをできる人

 のことです。

 お笑い芸人の方の鉄板のコントや「すべらない話」は、まさにテレビやLIVEを観る、不特定多数の第三者の受け手に対する“有益なアウトプット”になります。
 また、笑いがなくとも、自分にとってなるほどと思える、共感できる「興味深い話」も、まさにそれをした人は“有益なアウトプット”をしたことになります。

 つまり、簡単に言ってしまえば、“有益なアウトプット”ができれば、面白い人と思われる、ということです。

 問題は、どうすれば“有益なアウトプット”ができるか、ということでしょう。それは、イコール、どうすれば「面白い人」になれるか、ということでもあります。
 これも、実は、必要条件を考えてみれば、それほど難しい仕組みではありません。
 “有益なアウトプット”ができるということは、その前提として、有益なアウトプットができる知識がある、ということになります。つまり、非常に質が高い熟成された「脳内ストック」を有しているのでしょう。
 日常で起きる物事を「これは面白くアウトプットできるかもしれない」と活用できる形で、脳のハードディスクに収納しておく。この蓄積が質の高い「脳内ストック」を構築する上で、非常に重要な第1ステップになりそうです。

 ただし、この段階で、いわゆるその「ネタ」は、面白い種の段階でしかなく、仮説でしかありません。実際に面白いかどうかは、第三者の脳内で実走させてみなければなりません。つまり、リハーサルを経ることによって、「面白い」は確実なものとなります。
 世界の優れたコメディアンは、テレビ番組という“本番”に出る前に、まずは家族、そしてマネージャー、次に小さな小屋で、無数のネタを試し、その中で共通してウケたもの、あるいは修正を経てウケたものだけをテレビ番組で披瀝するそうです。

 つまり、ウケるかどうかわからない「面白いの種」という“仮説”を実証して、これなら間違いなくウケるだろうという“エビデンス”の蓄積を行い、仮説の真説化を促進させます。つまり、優れたコメディアンは、常に面白いわけではなく、小さな舞台で失敗を繰り返して実証実験を繰り返しているということになります。つまり、「面白い人」は至極合理的なアプローチをする人のことなのです。

 また、この“エビデンス”は、さらにテレビ番組などの大きな舞台で“エビデンス”が強化され、鉄板ネタとなると、その人の「引き出し」に収納され、いつでも相手を面白いと思わせることができるようになります。

 ここでひとつ、注意点があります。

 この「引き出し」とは、先ほどから出ている「脳内ストック」とは、イコールではありません。「脳内ストック」が「引き出し」を内包する関係にあります。

 「脳内ストック」、つまりは、人のいわばハードディスクの中には、まだネタ化が完成していない“未料理の素材”がある一方で、“エビデンス”を経て完成されたかたちの“鉄板ネタ”があります。この“鉄板ネタ”の部分が、「脳内ストック」という倉庫の中の「引き出し」に収納される、とことです。

 そして、“未料理の素材”が次々とエビデンスを得て、「引き出し」の中の質と量が豊富になると、いよいよ、その人は「面白い人」と言われるようになるでしょう。
 ただ、エビデンスを経ないで、つまりは“即興”でその場を沸かせる人、興味深い話をする人がいます。お笑いで言えば、一発芸の芸人ではなく、長くMCとして番組の顔になれる人です。明石家さんまさんやダウンタウンの松本人志などが代表でしょう。

 このメカニズムも実は極めてシンプルです。

 「脳内ストック」の中の鉄板ネタの宝庫、「引き出し」の中身が豊富になると、第三者から「面白い」とのエビデンスを得た鉄板ネタの中で、共通項を見出すことができるようになります。つまり、「面白いのゲシュタルト(構造)」が浮き出て見えるようになってきます。
 その「面白いのゲシュタルト」は、製氷器の型みたいなものなので、そこに、たとえば、オレンジジュースやグレープジュースなど、素材を変えると別のアイスが生まれるように、様々なネタをその「面白いのゲシュタルト」に流し込むと、即興で自在に様々な「面白い」を生み出せるようになります。

 つまり、「面白い人」とは、天性の才能ではなく、合理的アプローチの結果であって、「脳内ストック」の熟成と「引き出し」の充実、そこから「面白いのゲシュタルト」を引き出せるようになれば、再現性が高く、誰もが「面白い人」になることができるのです。

 そのためには、やはり、「脳内ストック」が命、ということになるでしょう。

 そして何より、第三者に“有益なアウトプット”をしようというスタンス、つまりは心構えこそが重要となります。



 


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