READING LIFE

『カンブリア宮殿』日本にシリコンバレーを創る/モビーダジャパン孫泰蔵《READING LIFE EXTRA》


今回に関しては、村上龍さんののめり込み方が違うような気がしました。

いつもは、出演者を立てるように、きっとあえて控えめに振舞っているのに、今日はときに出演者よりも核心的なことを言っていました。

 

「シリコンバレーの強さは”数”だよ。シャケもあんだけ卵を産むから育つんだよ」

 

それを聞いた瞬間から、それがシリコンバレーの本質のように思えてならなくなりました。

番組中も孫泰蔵さんはこう言います。

 

「多産多死のモデルはとても健全」

 

それに対して、村上龍さんはこう言うのです。

 

「だから絶対数が必要。当たり前のように失敗するので、絶対数を増やす必要がある」

 

これは、ちょうど『小さく賭けろ!』(日経BP社)の論旨に一致します。僕はこの本と出会って、起業というものの本質に気づきました。以降、僕も「小さく賭ける」ことを留意し、その結果として、第4期は初めて利益を計上することができるようになりました。

また、この村上さんの言葉に対する、孫泰蔵さんの言葉も興味深かったです。

 

「絶対数を増やして、彼らをネットワークしたい。50人集めると勝手に横と仲良くなって、勝手にみんなでレベルアップしていった」

 

孫さんは、こう言います。日本にシリコンバレーを作りたいのだと。シリコンバレーに匹敵する成功者を次々と誕生させる「生態系」を作りたいのだと。

なんと壮大な夢でしょう。

言うまでもなく、孫泰蔵さんは、ソフトバンク総帥、孫正義さんの実弟です。孫泰蔵さんの人生のポイント、ポイントで兄は有効なアドバイスを送っていたようです。

特に孫泰蔵さんの記憶に残っていたお兄さんからのアドバイスはこれでした。

 

「死ぬほど苦しめ」

 

そして、東大経済学部を卒業したというのに、自らの人生のビジョンを見いだせなかった頃の孫泰蔵さんにお兄さんはこう言います。

 

「お前と同じくらいの青年が世界を変えようとしている」

 

その青年こそが、ヤフーの共同設立者であるジェフリー・ヤンでした。

孫泰蔵さんはジェフリー・ヤンとは、いったい、どういう男なのか、とても興味を持ちました。

そして、居ても立ってもいられなくなり、シリコンバレーへと飛びました。

そこで、孫さんを待っていたのは、日本でいえば、オタクみたいな普通の青年だったのです。

そのとき、孫さんはこう思ったそうです。

 

「彼らにできるんなら、僕にもできるんじゃないか」

 

僕は勝手に、これを「トキワ荘現象」と読んでいるんですが、近しい人が成功するのを見ると、成功できるはずがないというメンタルブロックが簡単に外れてしまうんですね。

きっと、孫泰蔵さんは、ジェフリー・ヤンだけでなく、実兄の孫正義さんの姿も近くで見ていたので、自分が成功するのに、何の疑いも持たなくなった。

「小さく賭ける」ことと同様に、これは、成功するための重要なポイントだと僕は思っています。

すなわち、「成功に対して、物怖じしない」こと。

 

番組の終盤、村上龍さんは孫泰蔵さんにこう聞きました。

 

「(日本にシリコンバレーを作るんじゃなくて、)シリコンバレーに大量に日本人を送り込むんじゃダメなんですか?」

 

それに対する孫泰蔵さんの答えもまた夢に満ちて面白かったです。

 

「日本にシリコンバレーを作って、アメリカのシリコンバレーと行き来させたい。アジアでは経済成長をしている国々が多くあって、将来的にはアジアに拠点を置く日本のシリコンバレーが、必ず本場を凌駕すると考えている。20年は絶対に続けようと思っている」

 

本当にそうなる日が来るのではないでしょうか。

 

いつにも増して、今日の『カンブリア宮殿』は胸が踊る内容でした。

 

ちなみに、シリコンバレーがなぜできたのか、皆さんはご存知でしょうか。

この番組でもやっていましたが、二人の青年が、ここのガレージで小さな会社を興したことがそもそもの始まりでした。

その会社こそが、今は世界的な大企業となった「ヒューレット・パッカード」でした。

この会社の周りに様々な関連会社ができて、シリコンバレーという街が形成されていったのです。

そう思うと、日本版のシリコンバレーを創るにも、まずは核となる「ヒューレット・パッカード」のような大きな企業が誕生しなければならないように思えます。

「ヒューレット・パッカード」とシリコンバレーの黎明期については、海と月社さんから出ている『HPウエイ』に詳しいので、そちらを読んでいただければと思います。

 

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