『起業家』藤田晋著《READING LIFE》
僕はたいてい、実家に帰っていても、仕事をしております。
朝でも、夜でも、茶の間でノートパソコンを開いてカタカタやっております。
夜になると、茶の間のテーブルには、もう一台、ノートパソコンが開かれます。
母でございます。
何だか、ゆるーいBGMが流れていて、気になり「ん? 何やっているの?」
と、聞いて覗いてみると、なんと、やっているのはアメーバピグでございました。
自分の家の周りに、お花畑などを作っていて、それの世話を毎晩しているのでした。
母は慌ててこう言い訳します。
「いや、無料でできる分でやっているの」
それというのも、課金のシステムもあるからです。
母はアメーバブログもやっているんですが、まあ、そこで、全国の同年代の人たちと繋がって、季節ごとに果物のやりとりまでやっておりました。
なるほど、アメーバブログとは、別に若い人たちだけでなく、僕の母の年代の人にとってもいいのか、と驚いたのを覚えております。
この本は、そのアメーバブログを開発したサイバーエージェント社長、藤田晋さんの独白本でございます。
どうやってアメーバというサービスを中心に据えたのか。起業からこれまで、どういう流れがあったのか、大変、興味深く読ませていただきました。
村上ファンドや他の先輩企業による買収騒動や、ライブドアの堀江さんとのことまで、「あれ?ここまで言っても大丈夫?」とこちらが心配してしまうくらい、あけっぴろげてくれています。
僕は一人の「起業家」として、藤田さんの経営スタイルは正直真似できないなと思っているのですが、それでもなるほどな、そういう変遷があったのか、ととても勉強になりました。
ちょっと天狼院的にはイレギュラーなご紹介になってしまいますが、読み物としてとてもおもしろいです。ただし、起業独立を目指す方が藤田さんの真似をしようするのはいささか危険かと思います。
あの時代背景があって、様々な魅力を兼ね備えた藤田晋さんだったからこそできたことだろうと思うからです。