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READING LIFE

「小さく賭けろ!」と「未来を語れ!」という論点は矛盾するものなのか?《READING LIFE》


アスコム編集長、黒川さんから、『僕たちはアイデアひとつで未来を変えていく。』制作チームへの参加の打診があったとき、僕はちょうど『小さく賭けろ!』(日経BP社)のCORE1000プロジェクトをやらせて頂いておりました。

『小さく賭けろ!』の論点は、「LITTLE BETS」というくらいなんで、「未来を正しく読むことなんてできない。それなので、成功するためには小さく賭けながら、失敗を繰り返し、その失敗を生かしながら成功へと近づいていく必要がある」というものです。

AmazonもGoogleも、そうやって失敗の中で暗中模索し、今の形に行き着いた。

たしかに!と、僕はこの論点に共感。
実際に僕の人生も、失敗の歴史であり、でも改めて考えてみると、その失敗の蓄積がなければ今はありえないのでございます。

これはすごい論点だな、これこそが成功の秘訣だな、と思い、フルスロットルでこの展開を支援した矢先に、『僕たちはアイデアひとつで未来を変えていく。』の著者である島田さんという人に出会いました。

島田さんは言います。

「未来は読まなければならないんです。少なくとも、読もうと努力しなければならない。たとえば、大阪に帝国ホテルが作られるとなったとき、そのプロジェクトチームは、5年先を読んで、ウェディングのトレンドを決めなければならなかった。なぜなら、ホテルなどの大型施設を作ろうと思えば、5年、10年の長期的なプロジェクトになるので、今の最新トレンドが、できたころには古くなっています。未来を読まなければそういったプロジェクトは成り立たないのです」

これもまた確かに!である。

それなので、僕はその時期、「未来は読めない」という本を懸命に仕掛けつつ、「未来は読める」という本を懸命に作っていたということになります。

はたして、僕は矛盾していたのでしょうか?

実は、『僕たちはアイデアひとつで未来を変えていく。』を制作していく中で、次第に、それが決して矛盾していないということがわかって参りました。

ちょっと、難しいですが、「アウフヘーベン」という言葉があります。日本語にすれば「止揚」ということになるでしょうけれども、日本語にしたところで、ますます意味がわからない、という人がほとんどかと思います。

大辞林を開くとこうあります。

矛盾する諸要素を、対立と闘争の過程を通じて発展的に統一すること。

そう、僕はこの一見すると矛盾する2つの要素を、制作の過程でまさに「アウフヘーベン」することができたのでした。

すなわち、未来を読むということの先には、必然的に「失敗」があらわれます。そのとおりに未来を読むことができるはずがありません。全ては確率論であって、当たるかも知れないし、当たらないかも知れない。そして、当たらなかった場合は、「小さく賭けろ!」の論点に推移して、その失敗を次に活かせばいいということです。

ただし、島田さんが言うように、「少なくとも、未来を読む努力をしなければならない」んだと思います。その上で、失敗したのなら、その失敗を活かせばいい。

考えてみると、AmazonもGoogleも、ある事業をする上で、それが失敗するだなんて、到底思っていないはずです。その時点では真剣に未来を読み、実現するだろうと考えたものを、実行に移していた。その全力の挑戦の結果として、数々の失敗があった。つまりは、失敗とは、結果論なんですね。過去のその時点では、しっかりと未来を読んでいるつもりなんです。

ところが、未来とはあまりに不確定要素が多いので、予想したとおりにはならない。

こう考えると、「小さく賭けろ!」の論点は、「未来を読む」を包含している関係になっていることに気づきます。

ちょっとだけ、「小さく賭けろ」の方が、巨視的な視座にあっただけで、両者は矛盾してるわけではないんですね。

それに、「小さく賭けろ!」の論点で注意が必要なのは、こういう誤解が生じる恐れがあるということです。

「なんだ、失敗していいのか。なら、あるがまま、なすがままに行けばいい」

大間違いです!!!!

繰り返すようですが、「小さく賭けろ!」は結果論であって、失敗を許容する考え方であります。

が、それは、間違っても、「下手な鉄砲、数撃ちゃ当たる」理論ではなくて、「狙いに狙った上で、失敗したとしてもそれを活かせばいい」という理論なのです。

まとめると、やはり、全力で未来を読む努力をしなければなりません。その上で、失敗したとしても、それを許容し、活かすというある種の精神的・物理的キャパシティーを用意して置かなければならないということです。

その先に、成功があるのだと思います。

そう、僕は矛盾していたわけではなかったのです。

ほっ。

*ぜひ、お近くの書店でお買い求めください。

▼『僕たちはアイデアひとつで未来を変えていく。』(アスコム)

特に、Chapter5には「未来の読み方」が書いてあります!


2012-09-05 | Posted in READING LIFE

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