『リッチマン、プアウーマン』フジテレビ・ドラマ《READING LIFE EXTRA》
簡単にいってしまえば、マーク・ザッカーバーグを日本に持ってきて、ドラマにしたような話でございます。
「どうせ◯◯でしょ」
の「◯◯」に様々な言葉が入りそうな、取り立てて際立った要素もなく、「どうせザッカーバーグのパクリでしょ」と言われればその通りで、「どうせ韓流のドラマみたいなんでしょ」と言われれば返す言葉もなく苦笑。
ところが、僕はザッカーバーグも韓流ドラマも好きだから、まあ、見たわけでございます。出演者で言えば、それほど熱烈に好きなわけではなかったのですが、NHK大河ドラマ『平清盛』で熱演した井浦新が出てるのは、ちょっとチェックだな、と思った程度で、仕事の合間にご飯を食べながら観はじめたのがきっかけだったんですが、これが、ものすごく面白かったのでございます。
さっき終わったばかりの最終回の最後の方なんか、まじめに泣けて来ました。
最新のインターネット関連企業なのに、浮いたところもなく、新しいインフラを作ろうと懸命であり、また、人間が実にぎこちなくていい。
ある時代に比べて、多分に平和ボケしている我々よりも若い世代は、ある種の「ぎこちなさ」を持っているのではないかと思います。
欲望をあまりさらけ出さずに、かと言って、何もやりたいわけでもなく、賢くて、人が良くて、素直で、何より、ぎこちない。
そのぎこちなさがあったので、なんだかとてもリアルで、だから共感できたのではないでしょうか。
小栗旬演じる主役の日向は、親に捨てられたから、親を探すために「パーソナルファイル」という電子名簿を作ろうとした。
石原さとみ演じるヒロインの夏井真琴は東大に入り、頭脳明晰、記憶力抜群なのに、要領が悪くて、就活がうまく行かない。
リッチだから幸せということはなく、だからと言って、プアだから幸せだということもない。
ただ、弱いからこそ、ぎこちないからこそ、パートナーに寄りかかる術は知っているような、そんな草食世代のぎこちないストーリーでございました。
ふと、今日の総武線での光景が思い出されます。
若い奥さんは妊婦で、若い旦那さんに、「そうだ、シフトできた?」と言います。
旦那さんは、「ああ、できたよ。見やすいように、大きく印刷してきた」と、胸のポケットからシフトを手渡します。
奥さんはそれを見て、「本当に大きいね」と笑う。
特売がどうので新しいバイトがどうという話も聞こえてきたので、スーパーとか、旦那さんは、何かの小売業で働いているらしいのです。
だとすれば、おそらく、給料はそんなに多くはない。書店もそうですが、シフトに束縛される働き方というのは、なかなか給与に跳ね返ってくるものではありません。
だけれども、この弱いからこそ寄りかかっているように見える夫婦が、午後の日差しが入り込む電車の中で、なんだかとてもうらやましくなるくらいに幸せそうに見えました。
弱いからこそ、ぎこちないからこそ、自然と寄り添える。
そこに経済的な多寡は、あんまり、重要なポイントではないのかも知れません。
もしかして、若い世代を理解する鍵は、この「弱さとぎこちなさ」にあるのではないかと、ドラマを観て、またこの光景を思い出して、思ったのでございます。
いないとは思いますが、もし、万が一、このドラマを観ていない方がいらっしゃいましたら、DVDがきっと出ますので、ぜひ、ぜひ、借りて観てください。
何か感じるものがあると思います。