『週刊ダイヤモンド特大号 日本を呑み込むAppleの正体』《READING LIFE》
今回の『週刊ダイヤモンド特大号 日本を呑み込むAppleの正体』、一言でいえば、ヤバいです。
買わないとまずいです。
中を開くまでは、表紙の様子から、「全貌を暴いて、Appleはもうピークを過ぎて下り坂に入るよ」的な内容かと思ったら、大間違いでした。
なぜ、今、Appleは世界で一番価値の高い会社なのか。どういうビジネスモデルなのか、本当にわかりやすく書いております。
衝撃なのは、日本の大手メーカーは、シャープにせよ、SONYにせよ、東芝にせよ、ある側面で、Appleの下請け会社のようになってしまっているという事実。
なるほど、こういうふうに、日本のメーカーはApple依存になっているのか、とちょっと怖くなってきますよね。
それに、悔しくもなります。高度な技術を提供していながら、その製品は「AppleのiPhone」として売り出される。
Appleには絶大な権限があって、下請け企業に対して、ゴリゴリにコストカットを迫り、かつ、超絶に高い品質を求める。
Appleには、日本にも銀座などにあるように、直営店があって、そこの1フィート平方メートルの単価(イメージとしては坪単価)が、なんと、ティファニーよりも高いというんだから驚きです。
他のメーカーは、たとえば大手家電量販店に販売応援を自社の負担で出させられる(前に問題になりましたよね)などの屈辱的な取引内容になっていて、叩き買いされているというのに、Appleは一切の値引きをせずに納品しているという。値崩れが起きないんですね、値引きしなくとも、ちゃんとファンが買ってくれますから。
つくづく、思います。お客様を味方につければ、ビジネスは勝ちなんですよね、本当に当たり前のことですけど。
何らかの、つまらない「大人の事情」によって、それが無視され始めると、お客様は確実に離れていく。だって、当然ですよね、そんな「大人の事情」なんて、お客様にとってはどうでもいい話ですからね。
そして、製品の開発にあたっては、インダストリアルデザイン(ID)の部署が大きな権限を持つというのが、実に面白い。Appleらしい。
まず、デザインありきなんですね。お客様が欲しくなるかどうかというのはとても重要なことで、スペックの競争というのは、往々にしてお客様ではなくライバル企業が想定されてしまうので、あまりお客様には響かない。いや、昔なら、響いていたんですけれども、スペックはもはや、極限近くまで来ていて、たとえば、画素が1000万を超えてしまえば、1200万画素になろうが、人の目にはほとんど違いがわかりませんからね。
それよりも、第一感で、「これだ!!!」とお客様が思うような商品に仕上げることに注力した方がいい。
これって、本づくりでも、きっとそうですよね。中身のいいのは当たり前のことで、どうパッケージでお客様に訴求するかということが、これからはもっと重要になってくる。何せ、出版点数が多過ぎますからね、そうしなければすぐに埋もれて、一ヶ月後には大量に返品されることになる。
売上高というのは、まあ、なんとかしようと思えば、なんとかできないこともない話のことで、それよりもはるかに難しいのは、確実に利益を取ることですが、Appleが恐ろしいのは、この利益率が途方もなく高いということなんですね。
アップルは2002年から、実に11年連続で過去最高の純利益を記録している(今期も含む)。直近1年間(11年7月〜12年6月)なら、純利益は3兆1553億円と驚異的な数字を達成している。(本文p42より)
売上高ではありません、利益だけで3兆円を超えているんです。それはGoogleの約4倍であり、「2位のマイクロソフトと3位のIBMを足してもまだ足りない」という規模。
徹底して人が欲しいと思うものを作るメーカーとしてのイメージが強いですが、Appleはビジネスモデルがすさまじく優れているということなんですね。
しかも、そのモデルというのは、どうも普通のメーカーとは違って、何やら出版社に近い形のようにも見えます。
すなわち、日本のメーカーなどは、たとえばシャープの亀山工場など自社の工場で、製品を作るのですが、Appleは多くの部分を台湾などにあるEMS工場(生産委託)に委託しています。カメラの部品はSONYで、液晶はシャープでなどと、部品も外注でまかなっている部分が多いので、リスクが少ない。
出版社も、印刷は印刷会社で、デザインはデザイナーさんに、と外注で賄う部分が多いので、結構売れている出版社でも、40人くらいいればなんとかなります。
いいモノを作るのは、もはや、当たり前となった時代。
これから、他と差をつけて勝者となるのは、やはり、新しいビジネスモデルを構築した会社なのだろうと思います。
つまり、新しいルールを作った会社が勝つ。勝つだけでなく、おそらく、圧倒的に一人勝ちをする。
これは、他の業種に関しても当てはまることだろうと思います。
そういった意味においても、今回の『週刊ダイヤモンド特大号』、買わない理由が見当たらないのでございます。
*ぜひ、お近くの書店でお買い求めください。