チーム天狼院

思考の点と点をつなぐ温泉の効能


*この記事は、「ライティング・ゼミ プロフェッショナル」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:田中望美(チーム天狼院)

福岡天狼院書店では、店主三浦が来福すると、毎月スタッフで集まって映画会をやるようになった。
店閉店後の23時手前になると、机を並べてパーティみたいにセッティングして、
時にはピザを。時にはたこ焼き。時にはお鍋。Netflixや映画が大好きなことで有名な社長が私たちスタッフの観たい映画をネットで購入してくれて、電気を消して、福岡天狼院にしかない、大画面、大音量で映画を観るのだ。もう本格的な映画館。むしろ、音や映像、食事の整い方大好きなスタッフたちと観れるというところから言うと、映画館なんかよりこっちの方が特段いいと思う。

映画を観終わると、その映画について語り合う。天狼院書店と共通しているところを探して共感しあったり、マーケティング的観点で分析したり。人間の心理的な視点など、かなり深いところまで話し、意見しあうあの時間が私はとても好きだ。

先日はそこからまた話が膨らんで、温泉の話になった。
店主三浦は、温泉で無意識に瞑想的なことをしていたことに気がついた。無駄なことから何から何まで、思考を駄々流しにするのだ。する、というか垂れ流しのように自然と流れていくのだ。
人間、ボーッとしていても何かしら考えている。どんなことを考えているのか覚えていなくても、脳みそは考えずにはいられないのだ。温泉という最高に癒される環境では、複雑に絡み合っている思考が整理されていく。おそらく、人間が眠っている間に脳の情報を整理するというのと似ている。

それなので、私は温泉に行ってみた。
思えば先月くらいに温泉に行った時、なぜか分からないけれど、目まぐるしく色んなことを考えて、あれはどうしよう、これはどうしたら良いんだ、なんでこんな風にうまくいかないんだろうとか考えていても、
結局最後は前向きな解答になるというなんとも不思議なことを体験した。

まあそれは、温泉の効能的に、心も体も安定するからかもしれないけれど、とにかく私は温泉で身体も頭の中も整えたかったのだ。

家から数十分ほどの温泉に私は向かった。
朝の時間帯だったけれど、祝日だからか、結構な数の人がいた。

私は初めてこの温泉センターに来たため、施設の使い方が分からず戸惑いながら店内へ入った。若いお姉さんが優しく案内してくれた。
早く気持ちのいい温泉に浸かりたかったので、マッハで服を脱ぎ、私は温泉に入った。
まず最初に体を洗うことで、あとはずっと、色んなお風呂に入れるようにした。

露天風呂はもちろん、電気風呂やサウナ、バブルのお風呂、足湯、座湯など、たくさんの種類のお風呂があった。
私は順番にそのお風呂に入っていった。

丁度いい熱さのお風呂にチャプンと足を入れる。

頭にタオルを巻き、肩まで湯船に浸かった。

「はあ〜」

と体の奥深くからため息が溢れる。
湯船に入ると何もすることがない。
確か福岡の川代店長は、温泉が苦手だと言っていた。何もすることがないことが耐えられないそうだ。だからすぐに飽きて風呂から上がってしまうという。

全く、もったいないと思ってしまうけれど、分からなくもない。推測してみるとこうだ。
毎日目まぐるしく、何かに必死に食らいつくような生活で、いかに時間を有効に使うかを考えながら過ごしている人にとっては、この何もしていない時間に、何かできることがあるのではないかと、もったいなく感じてしまうのだろう。

そんなことを考えていた。だから次は
何も考えずただぼーっとしてみた。
大半は、おばちゃんやおばあちゃんの観察をしていた。
その時何を考えていたのか、今ハッキリと思い出すことはできない。

多分店主三浦が言っていた思考の垂れ流し状態だったのだろう。
店主三浦は「耳かきしなきゃな〜」とか、どうでもいいことも考えてるはず。そんなことも考えては垂れ流し、忘れていい。
ただ、そうやって考えを巡らせることで、いつのまにか凝り固まってしまった思考回路の枠を飛び出すことができるんだよ。

そう考えると、温泉と同じである。
源泉掛け流しというだけあって、古いお湯はどんどん流れていき、新たなお湯が入ってくる。その仕組みがあるからこそ、あたたかくて気持ちのいい状態を保つことができる。

温泉に浸かっている間、目をつぶってみたり、遠くを眺めたり、おばちゃんとお話ししたり、テレビを眺めたりあらゆる事をしてみた。
すると、それはもう突然こんな考えが思い浮かんできた。
全くそんな真面目な事を考えていたわけでもない。深く考えていたわけでもない。

なのに、突然フッと浮き出てきたかのように私の思考が回りはじめた。

私は、なぜだか分からないけれど、突然に

「一生懸命な姿で人に夢や感動を届けたい」
「やっぱり私は何事も一生懸命な人になりたいし、そういう人が好きだ」

そう思ったのだ。
とてもびっくりした。
だけど、なぜかとても確信のある自分の想いだった。なぜそう思うのか説明がつかないはずなのに、私の本当の心の中が言語化して出てきたような感覚に陥ったのだ。

けれど、今冷静になって考えてみると、なぜこんな考えが出てきたのか、堂々と説明できる。

私は元々少女漫画で、しかもその中でも特に好きなのが青春マンガだ。百人一首に人生をかけてしまうくらいカルタが大好きな主人公と仲間の物語である『ちはやふる』や高校野球とブラスバンドで自分の夢を叶えようとする主人公の物語である『青空エール』さらに、モテる為にバカ正直にがんばる女の子の物語である『高校デビュー』にはいつも勇気をもらっていた。
そんな私はつい先日、過保護に育った娘が、色んな困難に立ち向かいながら成長してゆく『過保護のカホコ』のスペシャルドラマを観た。
全然ダメダメ人間だけれど、諦めず真っ直ぐに一生懸命な姿に私はいつも心打たれてしまう。例えばミュージカルを観に行っても、一際目立って見えるのは、汗と涙が混じり顔がぐちゃぐちゃになっても御構い無しで大きな口を開けて歌ってたりする人だ。魂込めているのが一目瞭然だからだ。そんな姿を見ると、心打たれて、自分も頑張らなきゃと心から思える。その姿に突き動かされてしまうのだ。

こんな事もあった。
ある飲み会の席で私は猛烈に疎外感に襲われたのだ。あんなに楽しくて仲の良かった人たちなのに、話に共感を持てなかった。良い悪いとかではなく、生活環境が違う為に、価値観も変わってしまったのだ。
そこでも私は、かすかに、「こういうところでも、ネガティブなことばかりにならず、ポジティブな会話をしてたいな〜」と思っていた。
その時読んでいた本も、周りに流されず、今の自分を大切にしていこうというような内容の本だった。

これらの最近の出来事に通じて言えるのが、私が一生懸命な人になりたい、好きだと思う理由だったのだと思う。

思考を整理したい時は、温泉に行こうと思った。体も心も疲れがとれるし、何より最近の自分のことがよく分かる。無意識に、思考を点と点で繋げていく作業をしてくれるのだ。
そのおかげで頭の中が整理されスッキリするし、前向きな気持ちになれる。

それにしても、福岡天狼院のスタッフでの映画会は突然にはじまった。楽しいからいつも参加していたが、どうしてはじまったのだろう。これも何か店主三浦の策略なのだろうか。それとも単に社員やスタッフ同士の仲を深める為だろうか。
もしかしたら、こんな風に自分なりに何か考えるきっかけを作る為なのかもしれない。天狼院書店をもっとよりよくする為に行われているのかもしれない。

ああいけない、またもや点と点をつなげてしまっている。温泉効果は抜群だ。

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