『「超」入門 失敗の本質』鈴木博毅著《READING LIFE》
『永遠のゼロ』を読んだ人は、ぜひ、この本を読んでください。
この本を読むのなら、どうしても読んでいただきたい本があります。
『永遠のゼロ』(講談社文庫)百田尚樹著
逆に、『永遠のゼロ』を読んでいる多くの人は、この本をぜひ、ぜひ、読んでいただきたいと思います。
『永遠のゼロ』を読むとき、我々は主人公のパイロット、宮部久蔵に感情移入して、日本軍の理不尽に対して、「歯ぎしりする想い」をしたはずです。 その「歯ぎしりする想い」を科学的なアプローチから論証したものが、この『「超」入門 失敗の本質』だと考えてもらえばいい。
この本は、太平洋戦争においてターニングポイントとなる6つの戦いに焦点を当てて説いて行きます。
- ノモンハン事件
- ミッドウェー作戦
- ガダルカナル作戦
- インパール作戦
- レイテ海戦
- 沖縄戦
我々があの徹底的な「敗戦」を想うとき、思考停止へと導かれる、ある種の制御装置が自動的に働いてしまうような気がしてなりません。
「あれは日本が侵略したから、悪いことしたから負けたんだよ」
「 元々、勝てない相手と戦ったから負けたんだよ」
あるいはそうかもしれません。けれども、はたして本当にそうでしょうか?
我々は、各自改めてあの戦争のことを考え、「落とし前」をつけなければならないのではないでしょうか。 たとえ、敗戦によって焼け野原となったことが、少なからず、戦後の日本の経済発展に寄与したとしてもです。
なぜ、大本営と軍令部はあのような決断を下したのか?
軍上層部のあの決断が、間違ってたと言えるのは、単なる結果論からか?
アメリカがあの戦争に勝利したのは、本当に国力をベースとした物量だけが理由だったのか?
この本には、実に冷静な考証が込められております。 この失敗の検証なくしては、今の日本の現状打開は難しいのではないかと思います。 たしかに、失敗を振り返ることは、苦痛を伴うものです。あの敗戦をバネにして復興を遂げた物語の方に目を向けた方が、よほど精神衛生的にもいいようにも思えます。 けれども、現実を直視しないことには、何も学べないのだと思います。失敗を繰り返すことにもなりかねない。
失敗の本質を見極めることは、同時に、成功の本質を明らかにすることでもあります。
真摯に失敗を失敗として受け止め、それを考証し、反省して次に活かすことでしか、本当の意味での成功を手繰り寄せることはできないのだと思います。
それは、個々人の人生においても同様に言えることなのだと思います。
この高度に発達し、富も十分に蓄えられた現代の日本がもし幸福だと思えないのなら、もしかして、それは失敗に「落とし前」をつけていないからなのかもしれません。 もし、あなたが人生において幸福を感じられないのであれば、それも同じ理由なのかもしれません。
『永遠のゼロ』において、主人公のパイロット、宮部久蔵は、ミッドウェーやラバウル、沖縄など、まさに『失敗の本質』が説く失敗の戦場を体験し、その中で「不条理」を一身に受けつつ、それでも懸命に生きて帰ろうとします。それは潔く死ぬことを陽に暗にすすめられていた当時の軍においてはあり得ないことです。 宮部は愛する者が待つ場所へ、懸命に帰ろうとします。
その一心に生を追う姿が、多くの人の涙を誘いました。もしかして、名前の知られていない多くの人たちが、宮部と同じような思いをしていたのではないでしょうか。
繰り返すようですが、『永遠のゼロ』は、日本人なら誰もが読むべき小説だと思いますし、『永遠のゼロ』を読んだ人には、ぜひともこの本、『「超」入門 失敗の本質』を読んでいただきたいと思います。また、その逆もしかりです。
ちなみに「この本、本当にいいんだよね」 と、うちの彼女さんに言うと、彼女はこう言いました。
「男の人が好きそうだよね。女の子には無理かもね」
たしかに、男性よりも女性の方が戦争に興味がないかもしれません。しかし、売れるかどうか以前に、読まなければならない本というものが世の中にはあります。
この本がまさしくそうです。
そして、誠に残念ながら、戦争や失敗は男性のみに関係のある話ではありません。 ぜひ、女性のみなさまも、読んで考えていただければと思います。 自分の子供を、悲惨な失敗に巻き込まないために。愛する人を、ある一部の不条理のために失わないために。
改めて冷静に考えてみても、この本を買わない理由が見当たりません。
*ぜひ、お近くの書店でお買い求めください。